2005年度 森泰吉郎記念研究振興基金

 

研究助成金報告書

 

「研究者育成費 修士課程・博士課程」

 

 

「情報相互依存」と米中関係の新たな構図

 

 

2006228

 

 

慶應義塾大学大学院

政策・メディア研究科

修士課程1

雨宮 浩之

E-mail: ame@sfc.keio.ac.jp

 

 

研究報告

本研究助成金を得て、達成された項目は以下の通りである。第一に、相互依存論の発展系である「情報相互依存(information interdependence)」の理論的構築が、ある程度達成できたことが挙げられる。第二に、「情報相互依存」を、冷戦期及び冷戦後の米中関係に適用して、ある程度の新たな問題提起をすることができたことが挙げられる。

 

しかし、調査・研究を進めていくうちに、本研究は、1年では到底達成しきれない規模の研究であることが判明し、私自身の修士論文の研究に合わせて、2年間かけて行う研究にすることとした。したがって、当初の目的であった、「情報相互依存」の理論構築、及び「情報相互依存」を米中関係に適用させることは、本調査・研究では、必ずしもすべて達成できているわけではない。概念的な議論に終始せず、一次資料に基づいた、もっと踏み込んだ研究を、今後は続けたいと思っている。

ただ、当初の目的は達せずとも、資料の収集及び読み込みによって、今後の研究の基礎となる研究ができたことは確かである。今後も修士論文の執筆と合わせて、基金の活用をさせていただけたらと思っている。

 

 資料の収集という面では、今回の調査・研究では、大量の文献を入手し、読み込むことが達成できた。書籍は合計50冊程度を購入、論文は100本程度を入手(コピー)した。

 書籍・論文を入手する段階において、絞った分野は以下の3つである。

@「相互依存論(interdependence)」に関する文献

 これは、相互依存論の議論の発端となったInternational Organization誌及びWorld Politics誌の論文、また、相互依存論に関する他の雑誌の論文を収集した。

A情報と政治学の関係性についての研究文献

 情報と政治学について論じたものは、数少なかった。鶴木眞の『情報政治学』[1]が私の問題意識に最も近かったものである。また、メディアと政治の関係について論じたものがあった。これらは、国際モデルにおける、政府−政府間、政府−国民間、国民−国民間の関係性を論ずる際に重要となる文献である。他には、インテリジェンス(諜報活動)に関する文献が多い。

B1990年代以降の米中関係を論じた文献

 これについては、学部卒業時の卒業論文[2]を執筆する際にも大量に集めたが、さらに追加で大量の資料を収集した。卒業論文は、1995年を中心に論じたものであったため、それ以降の資料はあまり収集できていなかったが、今回の調査・研究では、1995年以降の資料も収集することができた。

 

 以下は、今年度の研究助成金によって達成された研究成果をまとめたレポートである。

 

 

1章 問題の所在

 

<研究の概要と目的

本研究の目的は、「情報相互依存(information interdependence)」という新たな相互依存関係の構築をし[3]、抑止理論や複合的相互依存の新たな理論的展開を示し、それを米中関係に適用させることで、情報化時代における米中関係の新たな構図を分析することである。特に、1997年、1998年時における「ジャパン・パッシング(Japan passing)」[4]に焦点を当て、なぜ「ジャパン・パッシング」という言葉が生まれてきたのかを、当時の米中関係及び、日米中関係について分析を行うことによって明らかにする。

 

<研究の背景

通信技術の発展による情報通信革命が国際政治に与える影響については、さまざまな議論がある。中央集権国家を強化する機能があるという説[5]と、国家の退場を促すという説[6]が対立しており、意見の集約が成されていないのが現状である。しかし、情報通信革命が国際政治にポジティブなものであれ、ネガティブなものであれ、何らかの影響を与えるという点では、意見は一致している。

近年、情報通信技術の発展によって、国家間の交渉チャンネルは飛躍的に増大したということができよう。従来の電話、FAX、電報といった既存のツールから、インターネットを使用したさまざまなメディアを通して、情報を入手することができるようになったからである。また、人工衛星を使用して、世界中のあらゆる地点を12日以内には宇宙から撮影し、それを瞬時に地上に送り、分析をすることが可能となっている。つまり、情報化時代の国際政治は、インテリジェンス機能の向上によって、新たな展開に入っているといえるのである。

主権国家にとって、軍事力や経済力といった「ハード・パワー(hard power)」は依然として必要である。なぜならば、主権国家の国力を示すのは、「ハード・パワー」だからであり、一般国民も軍事支出や貿易額等によって国力を測ることに慣れている。しかし、情報化時代の国力というのは「ハード・パワー」だけで測れるものではない。文化や思想といった「ソフト・パワー(soft power)」で国力を測ることも必要なのである[7]。米国に各国から留学生が集まり、国際的な競争の中で新たな知を生み出しているのは、米国の「ソフト・パワー」が強いからである。イラク戦争によって、米国に留学する学生が減少したというのは、米国がイラク戦争によって「ソフト・パワー」を弱体化させてしまったからである。

しかし、本研究では、「ソフト・パワー」とは若干異なるフレームワークを用いる。それは「情報」という切り口を持って、国際政治を概観するフレームワークである。軍事力にしても、経済力にしても、我々が目にするのは軍事支出の「情報」であり、貿易額等の「情報」である。無論、「情報」は「ハード・パワー」によって裏打ちされたものであるが、我々は、戦車や空母、戦闘機を実際に見て軍事力を測っているわけではない。また、貿易港に立ち寄り、海外からの輸入品を見て、貿易額を測っているわけではない。つまり、「ハード・パワー」に裏打ちされた「情報」を見ているのである。

そして本研究では、「情報」を主権国家が相互に共有することによって、「情報相互依存」という新たな相互依存関係が生まれているのではないか、という理論展開を行うこととする。具体的には、リアリズムの抑止理論とリベラリズムの相互依存論に「情報」という観点から新たな理論展開を示す。

最後に本研究では、米中関係に「情報相互依存」を適用させる。東アジアにおいて、今後最も注目される二国間関係は米中関係だといっても過言ではない。なぜならば、台頭する中国は、既存の国際システムを変質させるものであり、現在東アジアにおいて軍事的覇権を保持している米国に対抗する勢力となるからである。しかし、米中関係には経済的相互依存関係が存在し、19世紀のドイツの台頭、20世紀の日本の台頭とは異なる国際環境の中での台頭となっている。また、米国のポップカルチャーは中国でも受け入れられており、米中間には「情報相互依存」が存在するといってよい。新たな相互依存論である「情報相互依存」を考察する上で、米中関係は適当なケーススタディであると考えられる。

 

<研究手法

まず、本研究では、国際政治上のリアリストによって提唱されている抑止理論と、リベラリストによって提唱されている複合的相互依存(complex interdependence[8]に、情報通信革命が影響を及ぼしていると考え、国際政治の理論的考察を行う。

抑止理論の最たるものとして、相互確証破壊(Mutual Assured Destruction: MAD)を挙げることができる。MADの中核を担っているのが、「相手を思いとどませる」という行為を示すことによって、自らの安全を図り、翻っては相手の安全をも図ってしまうというものである。この際に重要となるのは、「相手が何を考えているのか」という情報を相互に共有できるか否かである。MAD理論は軍事的な「ハード・パワー」に裏打ちされたものであるが、単なる情報に過ぎない。情報が相互に共有され、それに情報通信革命がいかなる影響を及ぼしているかを考察することは、抑止理論の骨子となる部分に新たなインプリケーションを与えることができるのである。

 複合的相互依存の核となっているのが「脆弱性(vulnerability)」と「敏感性(sensitivity)」である[9]。相互依存を深めることによって、相手に対して脆弱となる関係が構築される。また、相互依存関係が構築されることによって、相手の状況に対して、こちら側が反応する状況(敏捷性)が生じる。情報が共有されることによって、複合的相互依存がいかなる理論展開を示すのかを考察することは、情報通信革命によって国家間の相互依存関係がいかなる展開を示すのかを分析する際のツールとなるのである。

 次に、上述の理論展開を示した後に、これらを米中関係に適用させる。米中間には「情報相互依存」が存在するといってよい。新たな相互依存論である「情報相互依存」を考察する上で、米中関係は適当なケーススタディであると考えられる。米中関係の新たな展開を示すことができると同時に、「情報相互依存」の理論を裏付ける理論的根拠を示すこともできるのである。

 

<研究の意義

 本研究の意義は、以下の3点にある。

1)情報という切り口から国際政治を概観した場合、近年の情報通信革命が国際政治にいかなる影響を与えているかについて、新たなインプリケーションを得られるということ。

2)抑止理論や複合的相互依存の新たな理論展開を示すことが可能であるということ。

3)米中関係を、「情報相互依存」というフレームワークを用いて考察することによって、情報化時代の新たな米中関係を分析することが可能であるということ。

 

 

2章 「情報相互依存」の理論的考察

 

 「情報相互依存」とは、その名の通り、情報が相互に依存している状態のことを指す。情報を保持する主体は、個人、組織、国家等、数多くの定義が可能であるが、本研究では、主体を国家に限定して考察を進める。国際関係を分析する際には、個人、国家、国際システムの3つのレベルが存在し、その議論のうえに立って、考察を進めることも可能であるが[10]、依然として国際関係の強力な主体である国家に限定することによって、主体の限定化を図るとともに、議論の簡素化を目指すのが本稿の趣旨に合致するからである。

 

1節 情報の定義

 「情報相互依存」を考察する前に、情報とは何かということを定義しておかなければならない。以下では、情報を、広い定義、やや広い定義、狭い定義の3つに分類して議論を進める。

 情報の広い定義とは、村上泰亮の言葉を借りると、「情報という概念は非常に曖昧だが、改めて定義すれば、人間の知識knowledgeのうち、一定の認識体系の下で整理され手段化されたもの、つまり一定の体系に下属する知識、それが情報である」と定義できる[11]。また、ロジャーズの言葉を借りると、「『情報』とは、なんらかの決断による意思決定の場面で重要な役割を果たすもの。すなわち、個人の意思決定の際、確率的に利用されるパターン化された物質・エネルギーの融合体」と定義できる[12]。つまり、人間が日常生活において判断を下す際によって立つものすべてを情報と定義することができるのである。

 次に、やや広い定義であるが、これは、主体を政府に限定し、政府が使用する情報について定義したものである。土屋大洋の言葉を借りると、「政府が意思決定を行う上で重要な役割を果たす情報にはおそらく三つの種類がある。つまり、(1)時程(スケジュールリング)に関する情報、(2)構図(マッピング)に関する情報、(3)出来事(イベント、ファクト)に関する情報である」と定義できる[13]

 最後に、狭い定義であるが、これは、主体を政府に限定し、分野を安全保障に限定した際に定義できるものである。山内康英の言葉を借りると、

「情報技術のより高度な利用が安全保障に与える影響については、(中略)それはおおむね以下のような項目を含んでいる。

・情報戦争(IW: Information Warfare

・情報セキュリティーからみた重要な社会的インフラストラクチュアの保護

・経済領域での情報活動(economic espionage

・公開資料(open source)を利用した情報

・インターネットを利用した政治活動や情報公開

・電子外交」

と定義できる[14]

 本稿では、情報を保持する主体を政府に限定するため、上述した情報の定義は、3つのうち、やや狭い定義と狭い定義を使用する。

 

2節 情報のフローとストック

 情報の流れや蓄積を考える際には、フローとストックという概念を使用すると分かりやすい。フローとストックという概念は、元来は、経済学でお金の流れと蓄積を論ずる際に使用される言葉であるが、ここでは、経済学からその使用法を借り、議論を進めていくこととする。

 そもそも、経済学におけるフローとストックとは、どのように定義されるのだろうか。マクロ経済学の入門書では、フローは「ある一定の期間(中略)に行われた経済活動の成果を示したもの」と定義される[15]。次にストックは、「過去からのフローの蓄積をある一時点で測ったもの」と定義される[16]。これを情報に当てはめてみると、情報のフローとは、ある一定期間に行われた情報の流れ・交換、つまり、通信等であると定義できる。また、情報のストックとは、過去からのフローの蓄積であるから、情報の蓄積、つまり、データベース等であると考えられる。

 

3節 情報相互依存の構図

 前節で経済学におけるフローとストック、及び、情報のフローとストックを考察した上で、本節では、経済的相互依存の構図と、情報相互依存の構造の基本的な図式化を図りたい。

 まず、経済的相互依存であるが、これは、「先進国間の経済が相互に結びつき、それゆえ、各国がその主要な経済目標を達成するにあたっては、他の国のとる政策の自国へのインパクトを無視することができない」状態を指す[17]。図式化すると、以下のようになる。

 

1 経済的相互依存の構図

 

 

 


矢印はお金の流れを指す。(筆者作成)

 

 次に、情報相互依存であるが、経済的相互依存と同様、以下のような図式化をすることができる。

2 情報相互依存の構図

 

 

 


矢印は情報の流れを指す。(筆者作成)

 

 これは、A国にとっては、B国が持っている情報が貴重であり、常にB国から入手していることを指しており、逆に、B国はA国の情報を入手していることを指している。つまり、A国とB国においては、お互いの情報を相互に交換することによって、情報相互依存の構図が成立しているといえる。

 

 次に、政府を取り巻く環境を広げて考えてみたい。政府が政策決定を行う際は、政府単独で物事を進めるのではなく、国内で政府を選出している国民の意見を代表するものでなければならない。国内の圧力によって政府は行動を起こし、相手国政府と交渉するのである。パットナム(Robert D. Putnam)は、これを「ツー・レベル・ゲーム(Two-Level Games)」と称し、国際システムにおける政府間交渉の構造を考察した[18]。パットナムの議論によれば、以下のような図式化ができる。

 

3 パットナムの「ツー・レベル・ゲーム」

 

 

 

 

 

 

 

 


(筆者作成)

 

 情報相互依存はこうした「ツー・レベル・ゲーム」の中でも生ずるものである。つまり、B国政府にとって、A国民の情報を入手したいのであれば、A国政府と交渉しなければならないし、A国政府にとって、B国民の情報を入手したいのであれば、B国政府と取引しなければならない。

 また、さらに考察を深めると、パットナムの「ツー・レベル・ゲーム」はさらに発展系を示すことができる。近年の情報通信革命によって、A国民が直接B国政府に訴えかけることや(その逆も考えられる)、A国民−B国民間の情報の交換も考えられるからである。コヘインとナイは、「情報化時代における力と相互依存(Power and Interdependence in the Information Age)」の中で、「情報革命は、世界政治におけるコミュニケーションの数を劇的に増加させたこと――官僚機構における個人間のみならず、ネットワークにおける個人間で――によって、複合的相互依存のパターンを変えている」と指摘している[19]。それを図式化すると、図3を発展させて、以下のようになる。

 

4 情報化時代における情報相互依存

 

 

 

 

 

 

 

 


(筆者作成)

 

 以上のように、情報相互依存は図式化することが可能である。本稿では、情報保持のアクターを政府に限定しており、政府−政府間の情報交換を考察するが、実際には、図4のように、個人−個人間、個人−政府間でも情報の交換はされている。また、政府−政府間以外の情報交換は、情報通信革命による通信手段の多様化や通信コストの劇的な低下によって、拡大しつつある。

 

4節 脆弱性と敏感性

 本節では、コヘインとナイが提唱した、脆弱性と敏感性についての考察を行う。情報相互依存における脆弱性と敏感性は、コヘインとナイが提唱した脆弱性と敏感性と同様である。

コヘインとナイによれば、脆弱性とは「政策変更によって外部の出来事が起こった際に被るコストのこと」である[20]。つまり、相互依存が切断されたときに被る損害の大きさである[21]。敏感性とは、「一国における変化がどれほどの速さで、他国に変化を及ぼすか、また、それがどれほどの影響を持つコストとなるか」である[22]

これらは概して、経済的な活動について考察されたものだが、情報を当てはめた際にも同様のことがいえる。情報相互依存における脆弱性とは、情報相互依存が切断された際に被るコストのことである。図2でいえば、A国−B国間で相互依存が切断された際に、A国及びB国が被るコストのことである。情報相互依存における敏感性とは、ある国における情報伝達の変化が、いかに速く、いかに大きなコストをもたらすかということである。日米関係を例にとってみれば、日本に対して、米国が軍事情報の提供(北朝鮮のミサイル発射の兆候等)の程度を変更した際、日本にとってどれほど速く、どれほどの損害を被るかといったものである。

 また、主体(政府)が合理的な行動をとると仮定すると、主体は、脆弱性及び敏感性を低下させるような政策をとると考えられる。脆弱性及び敏感性は、必ずしもよい影響を自国に与えるわけではなく、どちらも低いに越したことはないからである。相手国の情報に依存しないよう、別のチャンネルを構築する主体も存在するだろう。また逆に、合理的な行動をとる場合、相手国の自国に対する脆弱性及び敏感性を増加させる方策をとることも確かである。次節で述べる非対称の相互依存では、脆弱性及び敏感性の非対称性が、政治的な力の源泉となるからである。

 

5節 対象性と非対称性

「力は、非対称的な相互依存から生ずる」[23]。完璧に対称な相互依存というものは存在せず、相互依存を構成している2国間の脆弱性及び敏感性は異なる値を持つ。A国がB国に対して脆弱性が低く、逆に、B国がA国に対して脆弱性が高ければ、A国はB国に対して有利な立場にある。A国のB国に対する敏感性が低く、逆に、B国のA国に対する敏感性が高ければ、B国は相対的に、相互依存からの影響を受けやすいと考えられる。

情報相互依存も同様の構図である。A国がB国に対して脆弱性が低く、B国がA国に対して脆弱性が高い場合(つまり、A国はB国の持つ情報にそれほど依存していないのに、B国はA国の持つ情報に多分に依存している場合)、A国はB国に対して力を持つことができる。敏感性も同様、A国の敏感性が低く、B刻の敏感性が高い場合、A国はB国より有利な立場にあるといえるだろう。

 さて、非対称な情報相互依存を形成するのは、第2節で述べた、フローとストックの概念で考えることもできる。まずストックであるが、データベースに蓄積された情報(ストック)が多ければ多いほど、その国は情報を保持していることになり、情報交換の際に有利な立場に立つことが可能である。ストックは、非対称な情報相互依存を形成する際の重要なファクターとなるのである。また、フローについてであるが、情報伝達の手段(通信のチャンネル)が少ない場合は、脆弱性及び敏感性が変化する要因ともなる。非対称な情報相互依存も、既存の相互依存の概念と同様、力の源泉となるのである。

 

 

3章 米中関係の新たな展開

 

 本章では、「情報相互依存」の理論枠組みを、今日の米中関係に当てはめ、米中関係の新たな展開を考察する。

 

1節 冷戦期における米中間の情報相互依存

 冷戦期の米中間における情報相互依存は、政府間の「ハイ・ポリティクス」で行われた情報交換であった。米国にとって中国は、ソ連の情報を得るための存在であったし、中国にとって米国は、西側諸国の情報を得るための存在であった。その構図を図式化すると、以下のようになる。

 

5 冷戦期における米中間の情報相互依存

 

 

 

 

 

 

 

 


(筆者作成)

 

 この情報相互依存の形態は、対象の相互依存に比較的近く、両国がお互いに両国からの情報を入手するために、お互いを必要としていたと考えられる。

 

2節 冷戦後における米中間の情報相互依存

 冷戦後における米中間の情報相互依存は、第2章第3節で提示した図4に改良を加えた図で示すことができる。それが、以下の図6である。

 

 

 

6 冷戦後における米中間の情報相互依存

 

中国政府

 
 

 

 

 

 

 

 


(筆者作成)

 

中国国内では、中国共産党政権によってメディア統制が敷かれており、中国国民は直接米国政府・米国国民に訴える手段を持っていない。また、中国国民が、中国政府に直接働きかける手段も少ない。デモを起こそうとしても、事前に阻止されるし、インターネットのサイトも、政府の統制によって閉鎖されることがある。

 この構図では、米国政府は中国政府に対して、脆弱性を持っているといえる。なぜなら、米国政府は中国国民に直接働きかける手段を持っていないため、中国政府との「情報相互依存」が切断されてしまうと、中国に対して何の行動も起こせなくなってしまうからである。中国政府は、米国政府との「情報相互依存」が切断されても、米国国民の直接働きかける手段を持っているため、脆弱性は比較的低い。

 このように、冷戦後の米中関係を、「情報相互依存」理論の枠組みで考察すると、冷戦期と比較して、米国は中国に対して脆弱性を持っているといえる。

 

3節 まとめ

 このように、「情報相互依存」を国際関係の構図に適用すると、情報を軸に国際関係を考察することができ、経済的なファクターのみならず、情報による脆弱性・敏感性を考察することが可能である。「ハード・パワー」だけでなく、情報という目に見えない概念においても、相互依存という図式が成立することが、本稿によって証明することができた。

 

 

参考文献

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[1] 鶴木眞『情報政治学』(三嶺書房、2002年)。

[2] 拙稿「『ナイ・イニシアチブ』に見る日米中関係――米国の対中関与政策と日米同盟再定義の関連性」(慶應義塾大学総合政策学部卒業論文、20051月)available at http://web.sfc.keio.ac.jp/~ame/research/gt.pdf2006219日アクセス)。

[3] もちろん、現在までに「情報相互依存」の研究がなされていないわけではない。ロジャーソン(Kenneth S. Rogerson)は、「情報相互依存」を始めて打ち出した学者である。Kenneth S. Rogerson, “Information Interdependence: Keohane and Nye’s Complex Interdependence in the Information Age,” Information, Communication and Society, Volume 3, Number 3 (2000), pp. 415-436.

[4] 19986月にクリントン(William J. Clinton)米大統領は訪中し、9日間中国に滞在した。しかし、同盟国である日本には立ち寄らなかったため、日本が米国に軽視されているのではないかという議論が、日本国内を中心に巻き起こった。ここにおける「ジャパン・パッシング」とは、米国が日本を「素通り(パッシング)」して、中国と対面することを指す言葉である。

[5] 代表的なものとして、George Owell, 1984, Signet Classics, 1950

[6] 代表的なものとして、スーザン・ストレンジ(桜井公人訳)『国家の退場――グローバル経済の新しい主役たち』(岩波書店、1998年)。

[7] 「ソフト・パワー」については、Joseph S. Nye, Jr., Soft Power: The Means to Success in World Politics, Public Affairs, 2004(ジョセフ・S・ナイ(山岡洋一訳)『ソフト・パワー――21世紀国際政治を制する見えざる力』(日本経済新聞社、2004年))を参照のこと。

[8] コヘインとナイによって提唱された。Robert O. Keohane and Joseph S. Nye, Power and Interdependence Third Edition, Longman, 2001, chapter 2.

[9] 「脆弱性」と「敏感性」については、Ibid., pp. 10-17及び、山本吉宣『国際的相互依存』(東京大学出版会、1989年)110-112頁参照。

[10] Kenneth N. Waltz, Theory of International Politics, McGraw-Hill, 1979.

[11] 村上泰亮『反古典の政治経済学 上――進歩史観の黄昏』(中央公論新社、1992年)52頁。

[12] エベレット・M・ロジャーズ(安田寿明訳)『コミュニケーションの科学――マルチメディアの社会の基礎理論』(共立出版、1992年)12頁。

[13] 土屋大洋『情報とグローバル・ガバナンス――インターネットから見た国家』(慶應義塾大学出版会、2002年)29頁。

[14] 山内康英「情報化と安全保障――インターネット時代の『戦争と平和』」『国際問題』(No. 475199910月号)19-20頁。

[15] 中谷巌『入門マクロ経済学 第4版』(日本評論社、2000年)23頁。

[16] 同上。

[17] 山本、前掲、20-21頁。

[18] Robert D. Putnam, “Diplomacy and domestic politics: the logic of two-level games,” International Organization, Volume 42, Number 3, Summer 1988, pp. 427-460.

[19] Robert O. Keohane and Joseph S. Nye, Jr., “Power and Interdependence in the Information Age,” Foreign Affairs, Volume 77, Number 5, September/October 1998, pp. 81-94, at 85.

[20] Keohane and Nye, Power and Interdependence, p. 11.

[21] 山本、前掲、110頁。

[22] Keohane and Nye, Power and Interdependence, p. 10.

[23] Klaus Knorr, “International Economic Leverage and Its Uses,” in Klaus Knorr and Frank Trager, eds., Economic Issues and National Security, University Press of Kansas, 1997, p. 102.