2005年度 活動報告書

研究課題:エチオピアにおけるイタリア近代建築遺産に関する研究

慶應義塾大学 政策・メディア研究科修士課程2年 三宅理一研究室 奥平 力

 

□本年度の研究課題

 東アフリカのいわゆる「アフリカの角」に位置するエチオピアには、1936-1941年間に建設されたイタリア近代建築群が存在する。当時建設された都市インフラ及び建築群は現在もその役割を十分に果たしている。近代建築は、文化財的な価値を有するともにインフラとしての社会的な価値も有する。イタリア近代建築群の実態と背景を双方の視点から調査、考察することによって、価値の掘り起こしを行い、さらにその戦略的な保存・活用方法を提案する。

 

□活動報告

20056       エチオピア東部ハラールにおける現地調査及び首都アディス・アベバにおける文献収集

20059       建築学会近畿大会にて調査報告

200510月〜     イタリア、ミラノ工科大学留学、文献収集及び既往研究調査

 

□本年度の活動成果

 エチオピア、ハラール調査の結果、従来研究対象としていたゴンダールとの比較が可能となり、エチオピアにおけるイタリア近代建築が地域毎にファサードに特徴を持つ可能性がみえてきた。またエチオピアでの建築活動にあたって、当時のイタリア人が「Centro Storico(歴史的中心部)」を温存し、それに隣接する形で新都市建設を行ったことも明らかになった。

 イタリアでの文献調査を通じては、ハラールの当時の都市計画責任者であっったグイード・フェラッツァに関する研究書を入手した。またイタリア本国においてもイタリア近代建築研究は作家論、作品論にとどまっており、スター建築家による建築以外の、エチオピアに残存するようなアノニマスな建築家による大量の近代建築群に関する研究・評価付けが依然として手つかずであることが確認され、本研究の可能性を確認できた。

 

□来年度の研究課題

本年度の調査結果を受けて、来年度は当時のハラールの調査責任者であったグイード・フェラッツァに焦点をあて、彼のバイオグラフィー作成を研究の中心に据え、イタリア近代建築群の背景にあった教育システムや社会状況を明らかにすることで、評価付けを試みたい。