2006年度 森基金 報告書 |
採択研究 ""相互的な"インテリアによる次世代生活空間の研究" |
政策・メディア研究科 後期博士課程 植木淳朗 |
□Surroundings CREATUREs Project http://surroundings.sfc.keio.ac.jp/ 稲蔭研究室Surroundings Groupとして、次世代の生活環境におけるより人に近い情報生活環境の構築のために、親密さという要素に着目し、私たちの生活に即した情報デザインのあり方を研究している。今後、ユビコンプ環境が生活に完全に浸透する中、従来のタスクオリエンテッドなコンピューターの利用とは異なり、そこでの情報デザインを従来のコンピューター指向型の手法によってデザインすることはできない。なぜなら、そこで生活するのは人であり、人の情報処理能力は本来コンピューターのような逐次照合型の厳格なアルゴリズムではなく、より情動的で直観としての状況把握や行動選択を行うからである。このような人の情動性に根ざした情報デザインを行うに当たり、エンターテイメントコンピューティングの必要性は従来の娯楽としての価値のみならず、さまざまな私たちの日常行動を快適に支援し、生活そのものを楽しく向上的なものにするための必須技術となる。 この新たな情報デザインのパラダイムとして、私たちが行ったのは、生活共存型のエンターテイメントメディアコンテンツの実装である。 本研究では、モノに生命感を埋め込むエンベデッドプレゼンスのデザインテクノロジーを用いて、照明器具でありながら、まるで生き物のように私たちの生活に彩を与え、安らぎを与えてくれるコンテンツCREATUREsの実装を行った。CREATUREsはインタラクションという要素によって従来の照明器具をモノから生き物のようなプレゼンスへと転換させたコンテンツである。インタラクションデザインの特徴としては、直接インタラクションと定義されるハプティックな体験と、その後の間接的な関係性を維持するためのプレゼンス体験をシームレスに組み合わせることにより、インタラクションの持続性を私たちの生活スケールまで引き伸ばしたことである。 根気の私たちの活動は、このCREATUREsの代表作であるTabbyという毛皮にくるまれた床置きの照明器具をベースに、これが人にどのような印象をもたらすかについての実験を行ったほか、このような新しい情報技術をテクノロジーとしてだけでなく、デザインの分野へとアピールするために、数多くの一般展示を行ったことである。展示では現実世界に溶け込んだVirtual Realityコンテンツという位置づけでIVRCにて芸術賞を頂いたほか、文化庁メディア芸術祭ではアート部門において審査員の推薦をいただいた。同時にAXIS、100パーセントデザインなどのインテリアデザインとして認知度の高い展示に作品を出品したことで、生活空間に溶け込む新しいテクノロジーの認知度を高めることができた。 □Tabby ふわふわした毛皮で包まれた呼吸する照明器具。生活に共存するという視点から、直接的なインタラクションそのものではなく、日常的な対象認知のための呼吸という動きをデザインすることで、ノンイマーシブな楽しさを生み出すことに成功した。Tabbyはフロアーランプであり、ユーザーとの非常にプライベートで密接なかかわりを生み出すことを狙っている。 Tabby at 日本科学未来館 IVRC 2006 □Kiddy 呼吸とは異なる動きによる愛着の芽生えを実験するために制作したプロトタイプ。声に反応して声のする方へ転がる照明。非常にソリッドな外見だが、動きにあえてブレを持たせることにより、生き物の気配を生み出している。 Kiddy at AXIS Gallery □Fabby デスクトップTabbyとして制作された小型のLED照明。小さい中で表現力、および愛着心を生み出すためには、色の演出が必要になることがわかった。 Fabby at BankART □Fleur 植物のような外見をしたCREATUREsで、エントランスホールなどの比較的パブリックな空間において人との関係を生み出すことを狙い、よりオートポエティックな動きのデザインを行った。また、無線通信機能を内蔵させることで、照明器具同士の協調動作を可能にした。 Fleur at Media Design Tour 2006
□国際発表
□作品展示
□特記事項
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