2007.2.27.
2006年度 森泰吉郎記念研究振興基金 報告書
研究課題名:tRNAオペロン内機能未知必須遺伝子ychSの機能解析
氏名:藤島皓介
所属:政策・メディア研究科 BIプログラム 修士課程2年
【研究概要】
近年,次々に新規の生物ゲノム配列が決定されている.しかしどの生物種においても約2−3割の遺伝子は属間あるいは種特異的(orphan)な遺伝子であり,多種間比較による相同性解析が適用できないことから,それらのorphan遺伝子が有する機能に関してはほとんど解明されていないのが現状である.しかしGardes, PEC, KO collectionといった必須遺伝子情報の充実とともに,これらの個性的な遺伝子の中にはごく稀だが必須遺伝子も存在することが確認された.本研究では生物種を大腸菌K12株に絞り, Orphan geneとEssential geneのデータを併せることでEssential orphan遺伝子を17個同定した.興味深いことにEssential orphan遺伝子のひとつychS(276bp)はThy-tRNAオペロンのアンチセンス鎖にコードされており,Thy-tRNAと約60%の配列の類似性を有するリピート配列を2つ内在している.特に開始コドン直後の19bpはThy−tRNAとの間で100%保存されている.また近縁のグラム陰性細菌との比較から,Thy-tRNAオペロン付近でのDNAの挿入,欠失が非常に頻繁に生じており,大腸菌O157や赤痢菌では2つのtRNAのアンチセンス鎖にまたがってコードされている遺伝子や、tRNAの配列全体を含んだORFを持つ遺伝子が生じていた.またリピート単位でのゲノムの消失が非常に顕著で,それに伴いtRNAのコピー数も増減していることが新たに確認された.さらにThy-tRNA以外のtRNAオペロンでもtRNAの3’末端の19bpがそのオペロン内のリピート配列の末端の19bpと完全の保存される傾向があることを見いだした.tRNA由来のリピート配列はSINEやレトロトランスポゾンなどが知られておりtRNA-likeなリピート配列の転写産物は複数のステムループ構造を持つことから,その転写産物は多様なRNA結合蛋白質をプロモートする可能性を秘めていると考える.
【報告書】
【研究成果等】
1. 藤島皓介, 菅原潤一, 冨田勝, 金井昭夫 (2006) ゲノム配列から読み解く古細菌におけるtRNAの起源と進化 新しいRNA/RNPを見つける会 お台場 (口頭発表)
2. K. Fujishima, Mizuki Komasa, Sayaka Kitamura, Haruo Suzuki, Masaru Tomita & Akio Kanai (2006) Proteome-wide prediction of novel DNA/RNA-binding proteins using amino acid periodicity in the hyperthermophilic archaeon Pyrococcus furiosus RNA 2006, Seattle, USA