2006年度森基金活動報告書

 

「リアル」「SNS型」「ネット」クチコミの戦略的活用に関する研究

―「英会話」と「ダイエット食品」を事例に―

 

慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 修士課程2年

学籍番号80525419

三木 草

 

1:研究テーマおよび研究要旨

本研究はクチコミの戦略的活用に有意義な示唆を与えることを目的とする。

 現在、対面型クチコミに加え、ネット掲示板やブログ・SNSの書き込みなど様々な形態の「クチコミ」が存在する。各種クチコミは消費行動において一定の影響を与えることが分かっている一方で、企業のクチコミ活用についての体系的手法は確立しておらず、特に【「どのような」商品において「どの」クチコミが有効であるのか】という視点が欠如しているのが現状である。

本研究は「社会的つながり」を「マーケティング戦略」に活用することで、こうした現状の打開および目的達成を試みるものである。クチコミに関して、「つながりの強さ」の観点から(1)リアル・クチコミ(2)SNS型クチコミ(3)ネット・クチコミの3分類を行い、「つながりの方向性」からクチコミ受信・発信の2つの行動体系に分類した。商品に関しては、つながりの選択・形成に関連する商品特性「不確実性(分かりにくさ)」「社会的イメージ(話しにくさ)」に着目し、「不確実性:高」「イメージ:Positive」の事例として「英会話」、「不確実性:低」「イメージ:Negative」の事例として「ダイエット食品」を分析対象として選択した。「つながりの強さ」「つながりの方向性」「商品特性」の3変数の関連性についての分析を通じ、これまで不明確であった消費者の購買行動におけるクチコミ選択の実態を明らかにしていくことが、本研究での分析手法となる。

商品購買経験者における調査からは以下の結論が得られた。「英会話」においては、受信・発信面ともリアル・クチコミが相対的に選択されていた。「ダイエット食品」においては受信時に相対的にSNS型クチコミが重視される一方、発信時にはネット・クチコミが相対的に選択される傾向にあり、SNS型クチコミの発信率は最も低い傾向にあった。両者の事例調査から(1)「不確実性:高」商品において受信時には「強い紐帯」であるリアル・クチコミが重視されること、(2)「社会的イメージ:Negative」な商品において発信時には「弱い紐帯」であるネット・クチコミが重視されること、が共通した傾向として明らかになった。本稿では「社会的つながり」を切り口とすることで、消費者の各種クチコミ選択は特定の商品特性によって決定していること、その結果、同一商品内においても受信・発信時に選択されるクチコミは必ずしも一致しないこと、を知見として示すことができた。これらの結論は、消費者のクチコミ選択の実態を商品特性の観点から明らかにするものであり、企業がクチコミ戦略を決定する上で参考となる重要な仮説と手法を提供できたと考える。

 

【キーワード】

.クチコミ 2.戦略的活用 3.つながりの強さ 

.つながりの方向性 5.商品特性

 

 

2:活動報告

 本研究では、「Research Question」および「仮説」検証のために消費者へのアンケート調査による定量的分析を用いた。特に事例の一つである「英会話(7アクト)」における現役生徒へのアンケート調査を実施した。概要は以下の通りである。

 

【アンケート調査概要】

■対象:7アクト現役生徒

■実施方法:郵送

■依頼サンプル数:350件

■有効回答数:84件

■期間:2006年10月4日〜2006年12月1日

■備考:インタビュー調査も平行して実施した

 

 

 

3:活動成果

 「1:研究テーマおよび研究要旨」でも述べたように、本稿における「英会話」および「ダイエット食品」への定量調査を通じ、これまで不明確であった各種クチコミ選択の実態を明らかにすることができた。「社会的つながり」を軸にした本研究におけるモデルは、一般化についての課題は残るものの、今後のクチコミ活用に関して有意義なヒントを示唆することができたはずである。

 今後、更なる分析を実践していきたい。