2007/02/28
2006年度森基金報告書
はじめに
研究内容の修正
「物体の向きに応じた仮想空間内での情報提示に関する研究」の内容で研究を開始したが、研究の主眼を情報提示から、家電などの電子機器の操作に変更した。
概要
本研究では、現状のリモコン操作における問題を解決するため、ボタン数が少なく、傾きを検知することでより感覚的な操作が可能であり、本体を裏返すことにより通常のチャンネル・音量操作と、そのほかのインターネットサービス、ビデオ録画などの操作とを明示的に切り替えることができるリモコンである、「くるコン」の提案と、その試作をおこなった。
研究の背景
リモコン操作における問題
デジタル放送の開始、DVD,HDDレコーダーの普及などによって、テレビの多チャンネル化、多機能化が進んでいる。しかし、機能が増えたことによって、
- ボタンの増加によりボタンが見つけづらい、押しづらい
- 操作が複雑になり分かりづらい(ファンクションキーなど)
- どの操作に対応しているのかわからないボタンがある
提案
くるコン
これらの問題を解決するため、加速度センサーを用いて、傾きによる入力を行なう「くるコン」を提案する。(図1)
図1 くるコンイメージ
両面での操作
くるコンには、本体の表裏両面にボタンがあり、それぞれが、テレビ視聴(チャンネル、音量調整)用、STBメニュー(インターネット、録画予約、地域メニューなど)用の操作面に分かれている。
傾きによる操作
くるコン内部の加速度センサーによって、くるコンの傾きを検知することができる。
これによって、テレビ視聴と、STBメニュー操作の切り替えを、対応する操作面を上向きにするだけでおこなうことができる。
チャンネル、音量の調整は、変更したいほうのボタンを押しながら、くるコンを傾けることによっておこなうことができる。
また、傾ける角度の大きさによって、チャンネル切り替えの早さ、音量の増減の早さを、直感的に調節することができる。
少ないボタンによる操作
表面には2個(チャンネル、音量調整)裏面には6個(方向ボタン、決定・取り消しボタン)しかないため、ボタンの配置を覚えやすく、操作も簡潔である。
操作面をできる限り簡潔にしたため、操作面を見ずに、テレビが面のほうだけを見て操作をすることが可能である。
試作
モックアップ1(デバイス)
くるコンの機能の提案のうち、ボタンと傾きによる入力機能を実装したデバイスの試作を行った(図2)。加速度センサーによる傾きの検出と、ボタン入力の検知には、phidget*1を用いた。
図2 モックアップ1(表・裏)
モックアップ1(アプリケーション)
上記のモックアップを用いて操作するためのアプリケーションを試作した(図4)。チャンネル、音量の調整と、STBメニューへの切り替え、方向ボタンによるメニューの選択を実際におこなうことができる。テレビ視聴画面と、STB操作画面のレイアウトは、「STB用メニューの検討」の章での提案を参考とした。
テレビ視聴―STBメニューの切り替えと、メニュー選択時のハイライトの移動を連続的に描画することによって、操作に対するフィードバックをより実感できるように工夫した。
図3 STBメニューレイアウト
モックアップ2
本体の外装部分のモックアップを、機能の試作とは別に製作した(図4)
図4 モックアップ2
考察
問題点に対する効果
研究の背景で述べた問題について、ボタンが見つけづらいという問題は、ボタンを少なくすることによって解決できたといえる。
ファンクションキーなどを用いた複雑な操作に替えて、くるコンでは、リモコンを傾ける、裏返すという特有の動作を用いた、どちらの方式が理解しやすく、覚えやすいかは、今後実験を行なって比較する必要があるが、テレビ画面上の動きと組み合わせることで、より自然な操作として組み込むことができるだろう。
機能とボタンの対応については、ごく一般的な機能以外は、テレビ画面(STBメニュー)上で選択する方式としたため、メニューの階層構造を工夫することで改善が可能である。
くるコンの欠点
現時点で、くるコンの欠点としてあげられるのは以下の点である。
ごく一部の基本的な機能以外は、機能―ボタンの一対一の対応がなされていないため、それほど複雑な機能でなくても、一回の操作(ボタン押下)でおこなうことが不可能である。
まとめ
テレビの多チャンネル、多機能化によるリモコン操作における問題に対して、これまでとは違った方式で操作するリモコンの提案をおこなった。リモコン側の操作をシンプルにして、使用者の負担を軽減する方法は、ボタンと機能の一対一の対応をなくす代わりに、テレビ画面からの情報提示に集中できるという利点によって、わかりやすさ、使いやすさの向上が期待できる。
今後の課題
今後、モックアップを用いたアンケート調査や、実証実験によって、従来の方法との違いを、定量的に示すことが必要である。
共同研究
本研究は株式会社NECマグナスコミュニケーションとの共同研究として行われたものである。