対象と方法


H-invitational Database(Imanishi et.al.,2004)より得られた31932のcDNA配列から抽出した5’UTR配列を対象に5’UTR上の各位置でのGRSF-1認識配列(5′-AGGGT-3′および5′-AGGGGT-3′)の出現を観察した.5’UTR上の位置はそれぞれ(1)開始コドン,(2) mRNAの5’端からの相対的な位置((1)および(2)からの距離)で定義し,それぞれの点から45bpの範囲で解析した.また,それぞれの位置において認識配列が観察されるmRNAの個数はその位置でのデータセットの大きさに影響を受けると考えられることからデータセットの大きさによる正規化を行った.これは,対象とした5’UTR配列の長さが単一では無いことから,例えば5’端から10bp下流の点でのデータセットの大きさ(10bp以上の長さのある5’UTRの数)と5’端から100bp下流の点でのデータセットの大きさ(100bp以上の長さのある5’UTRの数)を比較すると前者のデータセットの方が大きくなるが,このデータセットの大きさの影響を取り除いて10bp下流の点に認識配列を持つmRNAの数と100bp下流の点に認識配列を持つmRNAの数の大小を比較するべきであると考えたためである.全31932のデータセットに対して割合aの大きさのデータセットが与えられる位置でのmRNAの観察された数がOであった場合,O’=O/aを観察回数として計算した. またGRSF-1認識配列の解析に先立ち,上記の手法を用いてコザックのコンセンサス配列として認識される配列のひとつである5’-GCCACC-3’ (Kozak,1987)の出現を開始コドンからの位置ごとに観察した.コザックのコンセンサス配列は開始コドンの直前に高頻度で出現することが既知であるため,手法が機能していることの確認を目的とした.


Ref:
Imanishi, T., Itoh, T., Suzuki, Y., O'Donovan, C., Fukuchi, S., Koyanagi, K.O., Barrero, R.A., Tamura, T., Yamaguchi-Kabata, Y., and Tanino, M. et al. (2004). Integrative annotation of 21,037 human genes validated by full-length cDNA clones. PLoS Biol. 2, e162.
Kozak, M. (1987). At least six nucleotides preceding the AUG initiator codon enhance translation in mammalian cells. J. Mol. Biol. 196, 947-950