2006年度(平成18年度)森泰吉郎記念研究振興基金 報告書

「ITを利用した新しい教員環境のデザインに関する基礎研究」

キーワード 

1.教員      2.支援       3. IT        4.評価       5. コミュニティ

 

本研究はITを効果的に利用した新たな教員支援環境により、既存の教員支援システムをより意義深いものにする可能性を、東京都三鷹市、富山県を対象とした調査から実証的に検討する目的で進めてきた。

昨今教育改革の一環として教員の資質の確保等、中でも教員の閉鎖性等が大きな課題となっている。これらの課題を克服する一案として、ITを利用した教員支援の取組みがある。ITの利用により、これまで成し得なかった支援形態、例えば情報の蓄積および共有等、新たな教員支援環境を実現する可能性が期待される。

そこで本研究では、既存の教員支援と統合したITによる新たな教員支援として教員が自発的に鍛錬・研鑽を行う環境をデザインすることを目指してきた。具体的には東京都三鷹市第七中学校、大沢台小学校、羽沢小学校においてonline上のコミュニティを利用し、三校の教員が協働する「コミュニケーション研修」を実施した。

当初は富山県の公立小学校および教育センターにおいても同様の研修を行う予定であったがご協力が得られなかったため、まず三鷹市をモデルケースとして取り組むこととなった。この研修では参加者が主体的にコミュニケーションを図るヴァーチャルチャンネルを構築した上で授業研究やカリキュラム作成等様々な研修プログラムの基礎となる、いわゆるコミュニケーションについて実践的に学ぶことが期待されると仮定した。 

 

東京都三鷹市では自治体全域で「義務教育学校」を設立する流れの中で、学区内での小・中連携を強固にしていく動きがある。「義務教育学校」とは、1) 中学校区を単位とした地域連携による小・中一貫学校で、2) 学校統廃合を行わず、既存の学校を実質的に一体化させたもので、3) コミュニティ・スクール指定をし、学校ごとの教員採用を促進するなどの自律的な学校運営を基盤とするものである。今回研修を実施した第七学区(第七中学校、大沢台小学校、羽沢小学校)でも将来的に3校間での小・中一貫校を作り上げることを標榜している。

そのような状況下で、現場教員の抱えるニーズとして、所属以外の連携校との交流を図る機会を作ることがあることが理解された。また事前ヒアリングおよびアンケートからは、ネット環境については「比較的操作に慣れている」という回答・感触を得ていたが、実際に研修を実施してみるとメールアドレスを保有していない教員や自宅からネットにアクセスできない教員も存在した。また当初行う予定だった三鷹市内の他学区での研修が行えなくなったことや、フィールドの現状把握調査や研修のカリキュラムおよび評価方法の策定のため、当初の予定よりも少し遅れ、200715日から223日までの日程で実施し現在は評価期間を設けている。

現時点まで得たデータを基盤として、また追加調査を行い修士研究に繋げる予定である。

 

*参考1 事前アンケート用紙 PDF

*参考2 ヒアリング調査時に使用したアンケート用紙 [PDF]

2007228

慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科

外山 理沙子