2007年度森基金報告書 日本と韓国の援助プロジェクト評価に関する研究 政策メディア研究科 修士2年 80624399 姜宇哲
韓国と日本の政府間開発援助の評価がどのように行われているかを分析する。具体的に評価の主体、基準、過程を文献調査とインタビューを通して整理する。そして、評価の結果がその後のプロジェクトに反映され、政府間開発援助の効率性を高めるために、どのような役割を果たすかを検討する。
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韓国と日本のプロジェクト評価の変遷と現状を分析し、比較する。 l
開発援助におけるプロジェクトの評価がどのように行われ、フィードバックされているかを明らかにする。
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韓国の開発援助のプロジェクト評価に関する先行研究は行われていない。 l
日本の開発援助は歴史を経て、現在まで進歩してきた。その内、プロジェクト評価制度の過程を検証するのは、今後の援助の効率性を高めるために有意義である。 l
日本と韓国がドナー国として直面している共通の問題である。
韓国 l
援助実施機関が統合されていない(5つの部、4つの機関)→有機的な連携の不在 l
援助に関する理念の不在(例;ODA大綱、中期戦略など)→評価基準が曖昧 l
援助総額が小さいにもかかわらず、実績を重視する→効率性の軽視 日本 l
援助実施機関が統合されていない→有機的な連携の不在 l
ODAの変革期である。→効率性の高い援助を模索している。 l
多様な評価制度があるが、実際には機能されていない→援助貢献度が低い
政府間開発援助の事例を分析する際に、以下の項目を基準として複数の事例を選び、文献調査及びインタビューを行う。 分野;緊急支援、医療、軍事的協力と非軍事的協力の連携 段階;プロジェクトの終了後、実施段階(事前に行われた評価の反映)、評価段階 主体;内部、外部(実施機関の外部の意見) 空間軸;現地のニーズに合うプロジェクトであるか 時間軸;日本(新ODA大綱以降)韓国(未定)
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DAC加盟 日本はOECDのDACに加盟しているので、援助の実績及び効果を韓国より詳しく報告する国際的な義務がある。従って、援助プロセスに関する報告(プロジェクト評価を含めて)は詳しい傾向がみられた。しかし、韓国も2010年にはDAC加盟を目指して制度整備を行いつつある。 l
PCM(Project Cycle Managementの採用) 日・韓両国は援助プロジェクトにおいてプロジェクト・サイクル・マネージメントを行っている。援助の調査→実施→評価各段階に目標を設定して、改善の努力をしていた。 PCMは国際機関等で開発援助プロジェクトに適用される管理手法である。
プロジェクトを計画立案、実施、評価のサイクルで捕らえる。 (1)問題の把握、目的の決定、プロジェクトの設定と、 (2)実行中のプロジェクトのモニタリング、評価 を 関係者の参加の下に自由に討論し、PDM(LFAともいう)フォームにまとめて行う。 問題解決を要する状況下でのプロジェクトの発見と選定、あるいは、多数のプロジェクトを運営するプロジェクトオフィスでの
プロジェクトの管理と評価に役立つ。 l
外部NGO参加 日・韓両国は外部の視点入れるプロセスはあったが、すこし異なる傾向があった。韓国は援助予算が少ないため、厳しい評価は避けているそうだ。一方、日本はプロジェクトの規模が大きく、制度上には外部の評価を受けていたが、比較的に消極的であった。
国際協力に限らずに公共政策における評価は注目されている。本研究では、いくつかのプロジェクトを選び日本と韓国のプロジェクトを検証することができた。しかし、検証したプロジェクトの数が限られている点、援助形態によって同様の評価基準を適用するには限界がある点が残された課題と言える。 |