国際学術交流活動報告書

研究課題名:グローバルガバナンスの研究

研究代表者:渡邊頼純

 

活動趣旨

本学術交流は復旦及び延世大学大学院との学術交流を通じて、「東アジア共同体」の実現可能性とその障害を探るものである。FTA/EPAの数が急増する中において、東アジア主要三カ国である日中韓の間には未だFTAは締結されていない。東アジアはEUや北米と比べ、政治的文化的な多様性が存在している。一方で、EUNAFTAと比肩する規模を持ち、その内部に先進工業国である日韓、成長著しい中国、工業化を果たしつつあるASEANを持つ当該地域における地域共同体のインパクトは大きく、日中韓の次世代のリーダー達が実際の交流を通じ、その実現を探ることが本学術交流の目的である。

 

学術交流開催概要

 復旦、延世及び本塾大学大学院修士課程の学生を参加者とし、1.政治的協力、2.経済的協力、3.環境問題に対する協力、4.社会文化的側面のグループに各大学から振り分け、3大学による4つの混成グループを作成し、ディスカッションを経た後に、プレゼンテーションを行った。中間報告においては実際に直接の会合を持ち、ワークショップ(20086/7中華人民共和国上海市、復旦大学にて)にて発表を行い、それを各グループの履修者同士において後日メールなどによる議論を通じ、さらに精緻化した最終発表をインターネットによる遠隔発表において実施した。

 また、ワークショップに至る事前の準備として、各大学の教授によるレクチャーによって日中韓それぞれの視点から、視点の提供を受けつつ知識の共有化を図り、最終発表後は、『解説FTAEPA交渉』(渡邊頼純 監修、日本経済評論社、2007年)、『GATTWTO体制と日本―国際貿易の政治的構造』(渡邊頼純著、北樹出版、2007)を用い、主に経済的視点から日本にとってのFTA/EPAに関する立場を整理した。

 

 活動成果

学生によるプレゼンテーションは、全てのグループが東アジア各国、特に日中韓の立場の相違を認めつつも実際に協力を行い得る部分を提示しそのメリットを整理した発表となった。特に、各グループとも、日中韓の学生や東南アジア地域からの留学生などを含めた形であったことなどから、現実の東アジア各国の状況に照らし合わせた提案を行い、論拠も英語データのみならず、日中韓や、さらには東南アジア各国の言語の論文や政府報告書などを用い、現実に即しつつも、オリジナリティの高い発表が行われた。

また、実際に多様なバックグラウンドを持つ学生同士で同じ場を共有し、議論を重ねた経験は、各国の次世代のリーダーを担うであろう3大学の修士課程の学生にとって得がたい経験となった。