<研究成果報告書>
研究課題名: 「協働する場への参加促進要因の研究」
氏名: 竹本 健太郎
所属: 政策形成とソーシャル・イノベーション(PS)
■要約
どのような性質が協働する場にあれば、参加が促進するのかを明らかにする。事例研究より、協働する場の類型ごとに参加を促進させる要因、阻害させる要因を明らかにし(目的1)、特に阻害させる要因を乗り越える方法を明らかにする(目的2)。 最終的には、協働する場の類型(ビジネス型、NPO型、ボランティア型)ごとに、個人の参加をより効果的に促進させるモデルを示唆したい(目的3)。
事例として、セミナー企画会社と企業技術者が協働して企画・開催している技術教育セミナーを選定し、理論的枠組みとして普及理論(Rogers等)を援用する。
■研究背景
企業間で競合関係のある状況であるために、協働する場に参加すればよいにも関わらず、協働する場に参加しないがために、無駄や問題がおきる事例がある。一方、企業間で競合関係のある状況においても、企業同士が協働する場に参加している事例がある。
そこで、本研究では後者として選定した事例の研究を通して、協働する場への参加を促進させる要因としての、金銭獲得要因+αの要因を探る。
■先行研究
イノベーションの普及研究にはイノベーションの普及過程と採用過程の2つの研究系譜がある(青池2007)。
【普及過程】:「知覚されたイノベーションの属性」→「社会システムにおけるイノベーションの採用速度」(Rogers)
【採用過程】:「知覚されたイノベーションの属性」→「個人によるイノベーションの採用傾向」(Ostlund1974)
■舞台設定
■最初に研究する事例、A社について
A社について:1987 年設立。化学・メディカル・エレクトロニクスを中心に、毎月約170テーマのセミナーを開催。企業で働く技術者・研究者をサポートするため、経験豊富な企業内技術者を講師として招き、実務ノウハウの提供を主としたセミナーを開催。
この事例でいう協働する場とは、A社と複数の企業技術者が協働して開催しているセミナーのこと。
下図の前提①~⑤はインタビューより
●協働する場の普及に成功しているが、他の事例より困難な状況(インタビュー調査により)
講演することで講演料が支払われているが、講演するために必要な労力(社内申請、講演資料の作成など)・時間的拘束を比較すると、妥当と思われていない=金銭が参加要因として小さい。
企業レベルでは競合する他社にとって有利となる実務ノウハウを提供している。
■RQ1:セミナーのもつどのような属性が、技術者の講演への意思決定に影響しているのか?
【普及過程】:「知覚されたイノベーションの属性」→「社会システムにおけるイノベーションの採用速度」(Rogers)
【採用過程】:「知覚されたイノベーションの属性」→「個人によるイノベーションの採用傾向」(Ostlund1974)
・仮説と対抗仮説群
・仮設として考えている有意な参加促進要因群
金銭獲得度合い
社会的地位獲得度合い
ネットワークの獲得度合い
整理性(自分の今までの経験をまとめる機会である)
紹介性(知人から参加を促された協働する場である)
コミュニティへの貢献(同じ分野の技術者のモチベーションを上げる機会になる、他社の技術者の悩みに相談してあげられる、他社を含めた業界にとっての成果になる等、自分以外への貢献)
■RQ2: 教育セミナーへの協力を阻害する要因を乗り越える方法は何か?
→RQ1を明らかにした後に取り組む。
■RQ3: 事例研究から協働する場の類型ごとに、どのような提案ができるか
→RQ1、RQ2を明らかにした後に取り組む。
■研究方法
A社で講演している企業内技術者に対し、アンケートとインタビュー実施
■今後の予定
3月中に、A社で講演した講師を対象にパイロット調査(アンケート)実施
普及理論の先行研究探し
以 上