森基金報告書
氏名:高橋 健
所属:政策形成とソーシャルイノベーション(PS)  修士課程1年

研究テーマタイトル

トマト栽培作業におけるデータ計測の種類と精度の多面的な検討(農作業手順における暗黙知の形式知化を目指して)


研究背景


引用元[農林水産省]2007食生活の変化・食料自給率

自給率 ・・・    1970年代は60%の自給率があったが、年々下がり続け、2006年現在は38%になった。
引用元 農業経営統計調査2006年産品目別経営統計
労働者の高齢化・・・ 1975年は農業従事者の内、20%が高齢者(65歳以上)であったが、
           2006年は60%弱の農業従事者が高齢者となった。
所得格差・・・    2005年時点での日本の農業経営農家のうち、98,6%(1,971,007軒)は
家族経営であり、家族経営農家の79,1%(1,559,612軒)の年間の
売り上げは300万未満に満たない。
つまり農業を営んでいるうちの約4軒に3軒は売上が300万円未満にしかない。

-------本研究の概要-------


イスラエルで開発されたイスラエル農法を日本向けに応用し、日本適化を計る。イスラエル農法とは環境の集約された熟練農業従事者の経験知をDBとして蓄積し、環境や土壌センシング技術とを融合させる事により、農業初心者にでも簡単に高品質の野菜を作れるようにしたシステムである。それは現在、植物と植物を取り巻く自然環境に相関関係が有ることがわかっている事から成り立っている。そのデータの検証も含め、理想的な成長曲線を作り上げ実験を繰り返すことにより、日本でも同じように初心者でも簡単に農業に従事できるデータを採取してから今後の意思決定の判断基準を示すシステムの構築を目指す。また日本の多様な地域で作物の生育を可能とするために、環境を計測・解析する事は基より、作物へも計測・解析する事も行う。作物自体の解析を行う事により、農法や環境地域といった垣根を越え、幅広い地域への活用が可能となっていく。また今まで現状を計測・解析したデータを結果へと反映させていた事に対し、今後は計測・解析に加え、予測を行い、イスラエルよりも更に円滑に農家を助ける一連のシステムの構築を目指す。

今期成果


神奈川県・新潟県・滋賀県の計3か所の農地でトマトを栽培しデータの収集を行っている。
そこでは大きく分けて2つのデータの採取を主に行っている。1つ目はそれぞれの農地に該当する事であるが、
土表面の温度データ、空気中の湿度・温度・光量を自動で測定し、研究室へと自動転送するようした。
これに必要な計測機器・システムなどは研究室で開発した。
採取しているデータは、熟練農業従事者の感覚的な価値基準に対する調査である。
現在1500万円の売り上げを上げている熟練農業従事者の方にご協力して頂き、
1か月毎・1週間毎・1日毎に計3種類のアンケートを行っている。
このアンケート内容は今のトマトの出来は何点ですかといった内容のものから、
本日行う予定の農作業はどのような事なのか、なぜその作業をやるかといったとても簡単で短い内容のものではある。
しかしながらこのアンケートが担う役割は本研究ではとても大きい。
このアンケートの目的は熟練農業従事者が日頃の農業の判断基準に何をおいているのかを知るためのものである。
日頃どんな情報を得て・その中からどのような要素を抜き出し、重み付けを行い、判断を下していくのか、
そして結果としてどのような農作業へとつながっていくのか。
一連のデータから判断基準まで包括的なデータを丁寧に洗い出している。
そしてここから抽出されたデータは1つ目に取り出した定量データと組み合わせる事で、
植物のアルゴリズムの解明に非常に役立つものと考えている。