Title

高齢者の遊び空間の実態調査とそのデザイン手法の提案

松本智之 政策・メディア研究科修士課程2年

Subject

高齢社会を迎えた21世紀初頭の日本において、各々の地域に残された環境資源を再発掘し、継承しながら新たな余暇空間を作り出すことが、豊かな少子高齢社会の都市空間をデザインする上で重要になってくる。

こうした都市や社会の質的豊かさを現す「遊び」とそれが発生する場はどのような条件のもとに生まれるのか。そして、個人の「遊び場」をどのようにして地域社会へと開放することができるか、その上で個人と公共との空間的両立をどのように実現できるかを提案し、それにより次世代へと「創造性のある場」としての遊び空間を継承することが本研究の研究課題である。

本研究では、「遊び」を趣味、余暇に加え、広く人々がそれぞれの創造性を発揮する行為と捉え、その行為を可能とする場を「遊び空間」ないし「創造性のある場」と定義し、これまでは子供の側から捉えられてきた「遊び」と建築、「遊び」と都市というテーマを高齢者の側から捉え直すことが本研究の主題である。

Project Summary

以上の課題を持ち、藤沢市西北部地域において、フィールドワークを行なった中で、特に、高齢者が所有する持家や借家などの空き家が地域に多く存在することがわかってきた。こうした個人の所有物である空き家の実態を調査し、公共的な遊び空間=<創造性のある場>として再生することを、本研究で試みた。

その成果は、「藤沢市西北部における空き家の実態に関する研究―実踏調査と空き家再生の実践を通じて―」として修士論文にまとめている。


Outline

本研究では、藤沢市西北部における空き家の実態を、実踏調査で収集した計140件の空き家の地理、時間、形態的分析から明らかにした。また、空き家所有者へのインタビューなどから空き家の建設から現在までの具体的な流れを年表にまとめ、空き家の発生と長期的な放棄の要因を考察した。

以上から、同地域において、空き家継続期間が5年以上のものが4割を超えるなど空き家の放棄化が見られ、その要因として土地税制や都市計画法上の制約、設備更新に係る高負担などから合理的選択としての空き家の放置が行われていることが明らかとなった。

(政策・メディア研究科修士論文 2009年1月13日提出)


[修士論文の梗概]