政策・メディア研究科 修士課程2年
認知・意味編成モデルと身体スキル(CB)
氏名:別府史朗
学籍番号:80725359
rr007037@sfc.keio.ac.jp
■研究課題名
生体信号分析に基づく被介護者の特性評価研究
■研究の目的
本研究は介護移乗動作における被介護者(高齢者)の心理・生理反応を定性的・定量的に分析することにより快適性・安全性の評価を行う。研究結果の解析を行い、高齢者の特性解明を目的とする。さらに、快適な移乗を実現させる移乗福祉機器への応用も予定しており、当該研究分野の発展に貢献することができると考える。
■研究の背景
高齢社会の進行に伴って福祉機器の需要が高まっている。特に、介護の現場においては介護者・被介護者双方の負担を軽減させる機器の開発が望まれている。しかし、福祉機器開発では高齢者の身体・生理・心理特性を踏まえた上での開発がなされていないことが多い。
介護の現場では介護者の都合によって介護方法が決定されることが多く、被介護者側のニーズが明らかにされていない。また、それに関する先行研究もほとんどない
介護動作を例にとってみると、介護者・被介護者にとって大きな負担となっているベッドからの移乗動作に焦点を当てる。現状は介護者の手によるものが最も一般的であるが、これは腰部に大きな負担がかかるため、介護者の腰痛を引き起こすことが多い。一方、移乗を補助する機器としては介護用リフトが挙げられるが、スリングシートの装着に手間、時間がかかるなどの原因により使用頻度は低い。また将来的には、パワーアシストスーツによる移乗補助も期待されているが着脱の簡素化など実用化に向けて課題は多い。
福祉機器を取り巻く環境は複雑であり政策的な問題や住宅環境の制約、金銭的な問題など考慮すべき課題は多々あるが、先に挙げた現状の移乗動作における被介護者(高齢者)の快適性・安全性を評価することでより質の高い快適な環境設計につながると考える。
快適性・安全性の評価に関してはアンケートやインタビューなど主観的評価によるものが一般的である。
■研究の概要
人の手による移乗動作(抱きかかえ法・スライド法)と床走行型介護用リフターを使用した場合の移乗動作における快適性・安全性の評価を被介護者の主観的評価と他覚的評価の両面から行う。
主観的評価手法としてアンケート(7件法・SD法)、インタビューを行う。アンケートでは、快適性の高い手法の順位付け、介護者に対する遠慮の度合いの順位付けを行う。
他覚的評価手法として生体信号計測装置による精神性発汗、脈拍数、呼吸リズムの測定を行う。主観的評価の裏づけという位置づけでデータ解析を行う。
得られたデータを定性的・定量的に分析し快適性・安全性の評価を行う。
■春学期の研究活動
○床走行式リフター調査
パラマウントベッド株式会社とコンタクトを取り、リフター調査を行った。
介助移乗機器開発の現状と実験を行う際のリフターの正しい使用法などをレクチャーしていただいた。
実験時にリフターに関するインタビューデータのフィードバックを行った。
○実験の実施
理学療法士1名、看護士1名にご協力いただきeーケアスタジオ@SFCにて実験を行った。
期間:2007年10月〜4月
被験者:大学生10名、高齢者11名
手法:主観的評価 → アンケート、インタビュー
他覚的評価 → 生体信号計測(Power Lab)
動作分析(DVカメラ)
○実験データ解析
データの解析を行っっている。
発話データの書き出し
7件法アンケート結果の集計・グラフ化
生体信号データの分析
脈拍データ・・・ノイズの除去→サイクル演算→1分間の脈拍数を算出
発汗データ・・・行動分析と組み合わせ、被介護者の身体的・精神的ストレスとなっている動作を明確化
ストレスの定量化方法について検討中(傾き、積分etc..)
呼吸データ・・・データの信憑性が疑わしく、解析を断念
○AEI'08 発表
期間:2008年7月14日〜18日
場所:ラスベガス(アメリカ)
国際応用人間工学会にてポスター発表を行った。
■秋学期の研究活動
○実地調査
特別養護老人ホーム2施設を対象に実地調査を行った。
介護者2名、被介護者5名にインタビューを行い、現場での介助移乗動作手法や留意点、福祉機器利用の方向性について伺った。
○実験データ解析
データの解析を行った。
発話データの書き出し
7件法アンケート結果の集計・グラフ化
生体信号データの分析
脈拍データ・・・ノイズの除去→サイクル演算→1分間の脈拍数を算出
スペクトラム解析を行い、LF/HFを算出
発汗データ・・・行動分析と組み合わせ、被介護者の身体的・精神的ストレスとなっている動作を明確化
発汗変位量と発汗加速度の算出
呼吸データ・・・データの信憑性が疑わしく、解析を断念
○ジェロンテクノロジーフォーラム2008発表
期間:2008年11月6日
場所:産総研臨海副都心センター
ジェロンテクノロジーフォーラム2008にてオーラル発表を行った。
○修士論文執筆
上記研究内容をまとめ、修士論文として提出した。