森基金報告書
研究課題:トレーサビリティを活用したエンターテイメント型寄付モデルの構築
クマール ラトネッシュ政策・メディア研究科 修士課程1年

■研究タイトル「寄付行動を促す交換物の探求」

本論文では、寄付行為への意欲を促進させるために、寄付行動の最適な
交換物の探求をおこなう。特に、交換物として「エンターテインメント
(遊び)」提案し、その効果の検証を行う。複数の実例を扱う中で、その
汎用性の高さを示したい。

■背景、目的

エンターテイメントとは、楽しさ、幸福感、高揚感などの、利用者にポ
ジティブな感情を起こさせることを目的としてなされる行為全体を示す
。社会生活において、エンターテイメントはリラクゼーションや気分転
換、精神の安定、意欲の維持、回復及び高揚に頻繁に利用されており、
数多くの種類のエンターテイメントが存在し、発展してきている。

本研究では、こうしたエンターテインメントの要素を、寄付行為に含ま
せることによって、日本の寄付行為にどのような影響をもたらすのかを
検証することを目的としている。
つまり、エンターテイメントの要素が寄付行為を促進するのかどうかに
ついて、その枠組みを提案し、効果を検証するものである。

■寄付行為へのエンターテインメント要素の導入の意義

寄付行為における意欲低下の要因としては、以下の2点が考えられる。
(1)貢献した成果が見えない。満足感が得られない。
(2)活動そのものが単調で変化が乏しい。
 本研究では、(1)を解決するために、対象とする寄付行為を利用者が「
どれだけ貢献しているか」を定量化し、それを視覚化するシステムを有する。
視覚化することで、寄付者の貢献の度合いを明示し、寄付者の行為に対
する満足感と達成感を誘発する。
しかし、単純に明示化するだけでは、(2)を満足できない。そこで、本研究では
(2)の問題を解決するために、「froh」という変化型成長を含む成果報告システ
ムを用いる。変化型成長では、寄付先の進捗が一定の進歩ごとに起こり、変化の
系列を複数に分岐させる。そのため、変化に対する興味が容易には失われず、(2)
における単調性を解決できる。

■NPO比較サイトの運営および成果

 財務報告ページおよび活動詳細ページのPV << 活動写真、動画ページのPV (約10倍)

 

■新たな仮説 (質高量低より質低量高)

 1.少額寄付者の寄付行動は、財務や活動詳細情報の獲得(質の高い報告)では促されない。
 2.少額寄付者の寄付行動は、活動写真や動画の獲得(質の低い報告)によって促される。

  また、先行調査から判断すると、報告回数を増やすことが寄付行動を促進する。

■今後の動き

寄付先選択の持つ効果検証(NECチャリティコンサートにおける実証実験)
NPO比較サイトの今後の活用方法の模索