2008年度森泰吉郎記念研究振興基金 研究成果報告書

政策・メディア研究科 修士課程2年 西山武繁

学籍番号:80725164

tksg@sfc.keio.ac.jp


■研究課題名

記号列を用いた身体運動時の姿勢変化表現手法の提案

■研究要旨

 様々なスポーツにおいて、競技者とコーチには異なるスキルが求められることが、「名選手は名コーチならず」という言葉として知られている。筆者は中学・高校の部活動のコーチとして、競技者自身が自らのスキルを探求するような場をつくり出すことを目指している。競技者によるスキルの探求は、熟達過程における経験を自らの内に取り込み、自身の理論を構築するために重要な行為である。競技者がスキルを探求するための方法論としてメタ認知を挙げることができる。近年の研究からメタ認知の実践は、身体スキルの熟達を促進する効果があることが明らかになっている。同時に、メタ認知の継続を容易にする支援環境の必要性も示唆されている。本研究は、運動計測によって獲得したデータを用いてメタ認知の促進を試みた初めての研究である。本研究では、野球の打撃スキルを例に、パフォーマンス中のフォームを可視化して競技者に提示するソフトウェアツールの開発に取り組んだ。このフォーム可視化ツールは、まず光学式モーションキャプチャシステムを用いて獲得したデータを用いて姿勢を複数の三角形によって簡単表現する。そして、パフォーマンス中のフォームを姿勢の類似度に基づいて分節化する。さらに、分節化されたフォームを色によって可視化する。色による可視化は、競技者に自身のスキルをメタ認知的に探究するためのきっかけを与えるものである。野球の打撃スキルを対象としたケーススタディでは、フォーム可視化ツールによるフィードバックがメタ認知に取り組む競技者の新たな変数発見を促し、パフォーマンス向上の一助となることが実証された。

本研究にて開発したフォーム可視化ツール"ColorBar"


【キーワード】

身体スキル,分節化,可視化,メタ認知,コーチング



■本年度の研究活動

【国内学会・研究会】

西山武繁,古川康一,加藤貴昭:伝統派空手における間合いスキルの考察,第22回人工知能学会全国大会,6月,北海道(2008)

西山武繁:伝統派空手の組手競技における間合いスキルの抽出,第18回運動学習研究会,6月,東京(2008)

西山武繁,諏訪正樹:身体運動時の姿勢変化の分節化によるスキル熟達支援,人工知能学会第2種研究会「身体知研究会」2008年度第1回研究会,9月,東京(2008)

西山武繁,諏訪正樹,仰木裕嗣:フォーム分節化・可視化によるスキル熟達支援ツールの開発,日本スポーツ心理学会第35回大会,11月,愛知(2008)

諏訪正樹,西山武繁:アスリートが「身体を考える」ことの意味,人工知能学会第2種研究会「身体知研究会」2008年度第3回研究会,1月,東京(2009)

【その他】

修士論文執筆