2008年度 森泰吉郎記念研究振興基金「研究育成費」研究成果報告書
研究科題名:「自然災害救援活動における民軍協力」
川口貴久
慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 修士課程1年
学籍番号:80824310、ログイン名:takahisa
1.研究概要
本研究は自然災害救援活動における民(civil)と軍(military)のアクター間連携の可能性と問題を探求する。2004年12月のスマトラ沖津波地震、2005年10月のパキスタン地震、2008年5月の中国・四川省地震、2008年5月のミャンマー・サイクロンといった大規模災害の救援・復興活動においては、多様なアクターの参画とアクター間の調整必要とされる。多様なアクターとは、国際機構、政府機関、非政府組織、自治体、企業、軍隊などである。
数あるアクターの中でも、軍隊は、災害に対する即応性、自己完結性、資源の投入量の点で高く評価される。一方、心情的な理由、組織文化の相違などから民と軍の協力が必ずしも上手くいっていない現実もある。本論の目的は、上述の災害救援活動の事例を通じて、民軍協力の可能性と問題点を理念・制度上だけでなく、実践・運用上の観点からも明らかにすることである。
研究の理論的背景として、「有志連合(coalition of the willing)型のグローバル・ガバナンス」が挙げられる。これは、義務的履行ではなく、能力と自由意思によって形成されるアドホックなガバナンスである。
2.活動報告
文献調査以外に下記のとおり、活動を実施した。
2008年7−8月 |
経営倫理実践研究センターにおける企業各担当者への聞き取り調査 |
2008年11月21−22日 |
日本防衛学会に参加し、陸上自衛隊の災害派遣担当者と意見交換 |
2008年7−12月 |
投稿論文執筆活動 |
2008年8−12月 |
関係省庁への情報公開請求 |
2009年1月20日 |
防衛大臣政務官 武田良太氏への聞き取り調査 |
2009年1−3月 |
中国四川省地震における救援活動の事前調査および現地調査 |
3.研究成果
(1)資料収集
「活動報告」で掲げた聞き取り調査、現地調査結果。
(2)投稿論文
修士論文の理論的側面である「有志連合」に関して下記の論文を投稿した。
米田富太郎、高橋丈雄、川口貴久「国際安全保障とコアリッション・下」『社会システム研究所紀要』第9巻、第2号(2009年3月)の「第三部 国際政治学の視点」を担当。
2008年度の研究活動及び研究成果は、基金創設者である森泰吉郎様と基金を運用して頂いた慶應義塾大学湘南キャンパス研究支援センター様のおかげである。ここに厚く御礼申し上げます。誠にありがとうございました。
2009年2月20日
川口貴久