森基金成果報告書「難民の自助努力による難民問題解決の可能性」

政策・メディア研究科

上里理奈

 

 

目的

難民自身による難民問題解決という点に着目し、そのアプローチ方法を考察することで難民の自助努力による難民問題解決の可能性を明らかにする

 

事例の選定

ザンビア・イニシアティブ(以下、ZI)というプロジェクトを具体例として挙げ考察する。ZIとは、難民の経済的自立と庇護国社会への統合を促進し、同時に難民を受け入れている地域の負担を軽減させることをめざす「肥後国社会へ統合するための開発:DLI」プロジェクトの一環である。ザンビアで庇護を受けている難民(主にアンゴラ難民)が農業を中心として、難民受け入れ地域の労働力となり、その地域の発展を目指すというものである。

 ZIはザンビア政府とUNHCRが中心となり、行われているプロジェクトの一つで、デンマーク、日本、アメリカ、スウェーデン、EU人道支援局、JICAがドナーとなっている。日本は人間の安全保障基金を通じZIに拠出している。

 対象地域であるザンビアの西部州は、厳しい地理的・気候的要件を特徴とする地域で、天然資源が十分活用されておらず、農村部のインフラも貧弱であることから、他の州に比べ低い開発レベルにある。そのような状況下で、少ない資源の利用を巡る問題や、アンゴラ難民によってもたらされたといわれているポリオや牛肺疫病、小火器の密輸入の問題に関して、難民と地元住民との間で摩擦が生じている。この摩擦を解消する手段としてもZIは有効であると考えられている。ZIは難民の現地定住を目指すプロジェクトの好例と捉えられており、アフリカのみならず、難民問題を抱えている国家にとって、難民問題の新たな解決策として同様のプロジェクトを行っていけると考えている。

 

成果

 今回、森基金による助成を受け、中国のODA案件視察を行った。視察を行った中で、HIV/AIDS予防プロジェクトは現地に根差したものであり、これをZIに応用し、人間の安全保障基金のみならず、ODAによる支援に関する政策提言を行っていきたいと考えている。