コンゴ民主共和国キンシャサ郊外における小学校の設計・運営に関する提案事業

                       政策・メディア研究科 環境デザインガバナンス 松原弘典研究室修士1年 桑原寿記

 

 

1.研究概要                                                                   

 研究の目的

本研究はコンゴ民主共和国キンシャサ郊外に実際に小学校を設計・建設・運営することを通して、発展途上国における望ましい学校のあり方を考察し、かつ具体的に建設地周辺の初等教育水準を向上させることを目的とする。現在のコンゴ民主共和国における学校教育は、長年の国内情勢の不安定から必ずしも公教育が十分に整備されていない状況である。学校の絶対数が不足しているし、また教育内容としても知識の伝達が中心で、日本の小学校に見られるような文化活動や体験学習のようなものはない。発展途上国の教育水準を向上させ、さらには将来のコンゴを担う人材を育成するために、成熟した日本の教育を一つのモデルとした学校を実際に作り上げたい。それは地域に開かれた、知識伝達だけでない創造的なカリキュラムを伴った初等教育の場所であり、日本の建築設計の知恵とカリキュラム立案の知恵の双方を活かして作られたものとしたい。

  研究の内容

本研究は、事業出資者であり将来の学校運営責任者である慶應義塾大学非常勤講師のサイモン・ベデロ氏に加えて、建築設計を担当する松原弘典研究室、学校運営企画を担当する長谷部葉子研究室による慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス内の共同プロジェクトである。すでにベデロ氏は、コンゴ民主共和国の首都であるキンシャサ郊外に、小学校用の敷地として約2500uの土地を入手済みである。ここに2008年から6年間にわたって小学校校舎を分けて建設していく。2009年秋からの入学者に備えて、建築設計チーム(松原研究室)は2008年より1学年ずつの教室を徐々に設計、施工監理してゆき、あわせて付随する図書館、グラウンド、遊具等も整備していく。 また学校運営企画チーム(長谷部研究室)はコンゴ民主共和国、アフリカ各国の初等教育の現状、モデルとする日本のゆとり教育の調査後、本プロジェクトの学校のためのカリキュラム作成を行う。本プロジェクトは全くの新規の学校の立ち上げで1年ごとに新入生を受け入れ、それに応じて校舎を増やしていく方法をとる。そのため子供の成長や周囲の社会状況の変化等に合わせて、施設のあり方を調整しながら事業を継続してゆくことができる。長い年月をかけて、発展途上国の教育水準を向上させるためのこれからの学校のあり方の調査研究を行っていく。

 

2.2008年度研究報告-コンゴ民主共和国現地調査-                                                               

2008年度 森泰吉郎記念研究振興基金研究者育成費はコンゴ民衆共和国での現地調査の渡航費に充てました。 以下、詳細な報告です。 http://web.sfc.keio.ac.jp/~toshiki/congoFW_2008.pdf

3.本研究関連の今までの研究経過・成果                                          

○平成19年12月から平成20年7月:プロジェクトの開始と基本設計

プロジェクトが始まり、設計案を作成。サイモン・ベデロ氏を通してコンゴの現地状況の把握。

○平成20年8月:現地調査

教員3名、学生4名が渡航し、現場・現地の小学校・建材市場など視察。キンシャサの建築大学、在日本大使館訪問など。計3週間

○平成20年9月から平成21年1月:実施設計と屋根架構施工の準備1

実施設計:

教室のサイズ、家具や建具の詳細、ランドスケープの確定

 現地調査で得られた知見をもとに設計案を深化

屋根架構施工の準備1:

 屋根架構サンプル1の設計、模型の制作(1/50)

 屋根架構サンプル1の制作(1/20)

 セルフビルドのできる材料・構法の検討

屋根架構サンプル1実物の制作、フィードバック、修正と再制作

 現在1つ原寸のサンプルを制作し、問題点を洗い出している状態(平成21年1月)

現地との情報交換

 材料の質、予算の調査

4.今後の展望                                                                   

現地視察を実行し、コンゴの建築技術や建材事情を理解した。その上で現在さらに詳細な設計を進めている段階である。 平成21年夏に日本から学生がまとまって現地に渡航し、いままでの設計案をもとに、現地で地元の人と一緒に地元の材料で屋根をかける工事をする予定である。今回の資金はすべて学生の渡航費にあてたいと考えている。平成21年秋から、屋根ができあがった校舎から順次使用を開始する予定である。

本研究の予定

○平成21年2月から7月:屋根架構施工の準備2・練習

 屋根架構施工の準備2:

  構造設計者との設計案の修正、深化

  屋根架構サンプル2の設計、模型の制作(1/50)

  屋根架構サンプル2の制作(1/20)

  屋根架構サンプル2実物の制作、フィードバック、修正と再制作

   屋根架構最終案の確定

 屋根架構施工の練習:

  屋根架構最終案実物の制作

   効率のよい材料加工、日本から持っていく工具などの検討

   すばやい組み立てをするための人員配置の検討

○平成21年8月から9月:現地での屋根架構施工の実施

 平成21年8月から9月にかけて、時期をわけて教員・学生がキンシャサに渡航。

 現地で壁ができている建物から、屋根をかけていく。

 地元の人と共に施工することで技術を伝達し、秋以降現地の人達が施工を継続できるようにする。

 開校とともに竣工した校舎から利用を開始する。

○平成21年10月から平成22年7月:将来の設計方針の再検討と報告書の制作

 将来の設計方針の再検討:

  制作工程、問題点の整理、運営後の利用状況調査

  現地での屋根架構施工、調査で得られた知見をもとに設計案を深化

 報告書の制作:

  調査、設計、施工、それぞれのフェーズについての詳細なまとめ