高齢者雇用に関する日韓比較政策研究
慶応義塾大学政策∙メディア研究科
李崙碩
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目次
Ⅰ. はじめに
Ⅱ．分析の対象と方法
Ⅲ．両国企業高齢者雇用の分析
Ⅳ．日韓高齢者雇用の特性および示唆点
Ⅴ． 終わりに
要旨
2008年5月日本経済新聞と韓国の中央日報は、日韓企業211社(日本は125社、韓国は86社)を対象に、高齢者雇用に関する共同調査を行った。本稿では、その調査データを分析し、日韓両国間の高齢者雇用に係わる類似点と相違点を考察する。両国は、定年制度など法的な制度面における類似性があるが、インフォーマルな制度のパートナーシップと構成員間の信頼関係が異なるため、制度の運用に関する政府の方式と企業の対応が違う。ここに、敬老思想など、社会文化的な背景が異なることで、他の政策効果が導き出された。
終身雇用と年金は、柔軟性を持ってうまく設計すれば、肯定的な効果を導き出すことができる。生半可に、このような制度を軽視すると、いわゆる不安コストがより大きくなって、企業側としても費用がよりかかることになる。ただし、長期的には定年を延長させ続けることはできないため、定年廃止などの工夫がされなければならない。
Ⅰ. はじめに
韓国では、2010年から本格的にベビーブーム(Babyboom)世代の引退が始まる。ベビーブーム世代は、朝鮮戦争直後の1955年から1963年に生まれた韓国で最も人口密集度がコンパクトな集団である。職場を離れるベビーブーム世代は、生存の問題を悩むことになり、企業は今後10年近く続く大規模引退にともなう社会的衝撃を最小化するための対策準備をしている。現代経済研究院などによれば、朝鮮戦争以後55年～63年に生まれたベビーブーム世代は、2010年に推計で全712万人に達する。これは総人口の14.6%にあたる数である。そして、日本のベビーブーム世代である'団塊世代'(1947年生まれから1949年生まれまで)よりも30万人も多い。
日本と違う点として、日本は定年が60才であり、近年、65才まで雇用努力義務が付加されたが、韓国は日本よりベビーブーム世代が長期間にわたっており、平均寿命は80才に達するが、引退年齢は平均53才である。引退以後、30年近くも生きるわけである。しかしながら、引退以後に対する社会システムはまだ整っていない。66才以上の高齢人口の中で、低所得層比率が51%もなるほど、高齢者問題は深刻である。
韓国統計庁が 2009年7月10日、国連と韓国の統計資料を用いた推定を発表した。'世界および韓国の人口動態'によれば、韓国の人口が少子化の影響で、2050年には今より641万人ほど減る。また、65才以上の人口の構成比は、2010年には30の経済協力開発機構(OECD)会員国のうちで27位だが、2050年には1位になると報告されている。これに伴い、2010年の韓国の高齢者扶養費[1]は15で、先進国(24)より低いが順次高まって、2030年には38で、先進国(36)を追い抜くと予測されている。また、2050年には72となり、先進国平均の45よりはるかに高いものになると予想されている。
特に、2008年現在、健康保険の高齢者医療費(10兆5000億ウォン)の比重が全体医療費(35兆ウォン)の29.9%に達しており、高齢者医療費の平均増加率も全体医療費の増加率の二倍に迫るなど、問題が深刻化していることが分かった。しかしながら、このような高齢者人口の増加傾向にもかかわらず、昨年現在、高齢者の経済活動参加率と雇用率は各々30.6%、30.3%にとどまっており、対策作りが急がれるところである。
このような状況で、 2007年6月11日に国会で開かれた‘高齢社会に備えた定年延長保障のための討論会’では、現行の高齢者雇用促進法は実効性がなく、再整備しなければならないという指摘と共に、定年年齢が年金需給年齢に接近するように、現行の高齢者雇用促進法の定年制を改善するための方策が必要であるとされた。その対策として、定年の上方修正と保障装置があげられ、定年延長により勤労権が保障される方策が検討されなければならないという指摘が出たが、これに対して、経営者側は高齢勤労者のより良い生活と雇用安全のためには、単純に一企業で長く勤めるようにする定年延長は臨時的な方便に過ぎず、労働市場において長く残っていけるようにする総合的な対策が用意されなければならない、そして、企業は高齢者を雇用できる条件を創ることに全力をあげるべきであり、定年延長、廃止のような規制よりも、高齢者に対する需要基盤を広げる努力が優先されなければならないと批判した。
それにもかかわらず、すでに国務総理調整室と労働部など、政府部署次元では、定年義務制を望ましい方向として設定し、これを推進している。しかし、政府側の定年義務制に対して、経営者側は反発している。この時点で、韓国はこれから現在の任意定年制度を義務定年制度に切り替えるだろうか? また、切り替えるならば、基準年齢はどのように設定するべきか? もし、定年制度が望ましくないならば、定年制度自体を撤廃することが望ましいのか? この場合、いかなる先行課題があるかを検討しなければならない。
しかしながら、高齢者の雇用が、どのように成り立っているかを見るのは決して簡単な問題でない。なぜなら、高齢者雇用はその国の雇用慣行や雇用制だけでなく、年金制度など企業と労働者に影響を及ぼす私要素に影響されているからである。そして、まだ韓国は、本格的な高齢社会に突入する直前であるため、どんな政策がいかなる効果を発揮するかを明らかにするのは難しい。このような状況において、韓国と雇用慣行および制度、文化面において共通点を持ち、韓国のような急速さですでに超高齢社会に入った日本の事例を調査し、比較分析するのは学問的にも、また政策的にも大きな意義があると考える。
Ⅱ．分析の対象と方法
1．既存の理論
一般的に、年功賃金プロファイルを説明する理論は大きく二種類ある。ひとつは、Beckerによる古典的な人的資本理論である。すなわち、教育訓練等を通して、人的資本が蓄積され、それにより勤労者の生産性が向上し、その反映として賃金率が一致していれば、高齢者が高賃金といっても、継続雇用は企業にとってそれほど問題にならないというものである。したがって、教育訓練等を通して、人的資本が蓄積され、それにより勤労者の生産性が向上し、その生産性上昇の反映として、賃金率が一致していれば、高齢者が高賃金であっても、継続雇用は企業にとってそれほど問題にならない。先行研究では、企業特殊的人的資本の代理変数として、同一職種の有無が採用され、人的資本の価値評価、すなわち生産性に関しては、賃金変化が代理変数として用いられている。例えば、山田(2000)は、再就業後の賃金低下には職種変化による人的資本の減価が影響を及ぼしていると指摘した。
また、高齢者の継続雇用が問題になるのを説明する理論として、Lazearによる賃金後払い契約理論がある。彼は生産性が一定だといっても、年金賃金プロファイルは右上向きになるというモデルを提示した。この理論によれば、青年期に生産性以下の賃金を支払って、高齢期に生産性以上の賃金を支払うことで、勤労者によるトリックおよび不正行為を防止するインセンティブ効果を期待するという。すなわち、企業は青年期の生産性以下の賃金支払いにより一種の預金を得る。勤労者はトリックおよび不正行為が発覚した場合、解雇されて、その預金を喪失するため、企業はそういった行為を防止することができるという。高齢期には、預金を取り崩していくかたちで生産性以上の賃金を支給するものの、そのまま生産性以上の賃金を支払うならば、企業は赤字になってしまうことから、預金がなくなる時点で強制退職という制度が設定されるという。しかし、この理論の定年制度に対する説得的な説明は高く評価すべきであるが、典型的な製造業勤労者の、特に男性ブルーカラーに対する理論であるという非難を免れることはできない。つまり、それ以外のホワイトカラー労働者、特に女性まで包括できていないという短所がある。
2.分析の対象と方法
本研究で高齢者というのは、定年制と年金制度が適用になる65才以上の高齢者、および60才以上の準高齢者を含んで議論する。本研究は、現在の高齢者雇用に対する企業の対応に関しては、日韓両国のデータを基礎として分析する。質的資料は、執行主体である厚生労働省と韓国の労働部の担当者に対するインタビュー調査を実施し、高齢者および雇い主を面接調査することとともに、法令と制度に関する資料及び各機関のアンケート資料を収集して、定性的分析を行う。量的資料は高年齢者就業実態調査の近年分を参照し、2008年5月日本経済新聞と韓国の中央日報が共同で日韓企業211社(日本は125社、韓国は86社)を対象に高齢者雇用に関する調査（“日韓企業の高齢者雇用に関する調査”）の一次データを入手して、分析を実施する。
Ⅲ．企業高齢者雇用の需要側面の分析
1.日本と韓国の類似点と差異点
(1)日本と韓国の類似点
日本と韓国の高齢者雇用に関する制度は、西欧諸国に比べて、次のような共通点がある。
①類似の制度的環境:西欧と比較すると、社会保障制度が不充分であり、東アジア文化圏の下で伝統的な家族保障がその役割をしてきた。
②相異なる雇用制度:終身雇用を前提とした企業文化の下で、西欧とは違った定年制度によってこれを規律してきた。そして、定年後の高齢者にむしろ仕事をさせること(就労事業)を通じて福祉増進を追求するというところが西欧と異なる点であり、また実際に経済的な便益面でも日本と韓国の収入は類似している。
③急速な高齢化:西欧が長期間にかけて、高齢化したことに比較すれば、比較的速い速度である。
(2)日本と韓国の差異
しかし、日本と韓国の高齢者雇用制度の実際的な運用は次のような点で異なっている。
①相異なる価値観と国際的環境:
韓国にはまだ儒教思想が残っており、高齢者を優遇し、高齢者雇用に相異なった影響を及ぼしている。日本が高齢化社会(高齢化率7%)に突入した時期(1970年)は高度経済成長期であり、世界的にも高齢者福祉に抵抗感が少なかった時期であったが、韓国が高齢化社会に入った時期(2000年)は、IMF危機下であり、世界的にも新自由主義が流行し、グローバル化の下で、企業環境は大きく変化した。
②雇用制度の相異なる運用:
日本は、高齢社会(高齢化率14%)に入った1994年に義務雇用制度を法制化した。しかし、韓国は急速に変わった制度的環境下で、高齢社会に入る(2018年予想)前に、日本式の義務定年制度を選択するのか、それとも、米国式の定年制度を撤廃するのかの岐路に立っている。そして、日本と韓国は類似の就労事業を実施している一方で、運営システムと社会保障制度の差に起因して、異なる政策結果を導き出している。
③急速な高齢化:
日本も西欧に比べて、急速な方ではあるが、韓国は高齢化社会から超高齢社会に至るまで、わずか26年しかかからないと予想されおり、それ以後、日本とほとんど同じ水準の世界最高の高齢社会になるであろう。このような労働力の急速な高齢化は、両国に異なる政策結果を招来するであろう。
④制度定着の時差:
韓国は制度導入と定着が短期間である反面、日本は利害関係者の合意を土台に、長い時間をかけており、制度が導入されてからも、その施行後に長い猶予期間をあたえるという特徴がある。このような両国の制度定着の時差が、両国に異なる結果をもたらしている。
2.高齢者雇用環境に関する日韓比較
高齢者雇用に影響を及ぼす政策的環境として、時間的環境と空間的環境がある。まず、空間的環境について、歴史的初期条件または工業化の条件に基づく生産レジームの類型化の研究は、Soskice(1999)以後、日本と韓国を集団別調整市場経済体制として別に分類して注目している。ところで、韓国は人口比高齢者の比率が7%になった高齢化時期に高齢者雇用政策および積極的労働市場政策を活性化させているが、日本は高齢化社会が始まった70年代初期にむしろ高齢者医療費無償政策を推進していた。
なぜ、似通った文化伝統を持ち、同じ生産レジームに分類されるなど、空間的な環境が類似の日本と韓国が、高齢化の進展した初期に全く異なる政策的な試みをしたのだろうか? これに関しては、政策の時間的環境を調べる必要がある。伝統的な福祉国家においては、失業、老齢、産業災害などのold social riskに対応するために、所得保障プログラムがその中心であったが、資本主義経済社会構造の変化、労働市場の変化、家族人口学的構造の変化などにより、新しい社会的危険(new social risk)が発生した。一つは高齢化であり、もう一つは、グロバル化（Globalization）による産業構造および労働市場の再編である。このような新しい社会的な危機の中で、高齢化社会が始まった時期において、日本は国際的に福祉国家の雰囲気がまだ残っていたし、高度経済成長期で経済的に高齢者福祉に対する社会的合意が容易であった。さらに、本格的なグローバル化が進展していなかったため、相対的に企業間の競争もそれほど激しくなかった。
一方で、韓国はすでに福祉国家危機論とともに、新自由主義の隆盛と外国為替危機以後の経済的不安定の中で、高齢者支援に対する合意に対しては否定的な雰囲気が強く、また、グローバル化がすでに進展し、企業間競争が強くなり、労働市場が根本的に再編されているところであった。そして、日本では、強かった労働組合が企業の争議自制要求を受け入れる代わりに、終身雇用を保障させ、労組が産業別労組の一員としての役割よりは、企業内労組の役割にさらに忠実になって、企業文化の一部として位置づけられることになった。以後、このような社会的合意に基づき、労使間に信頼が構築され、社会的資本が蓄積されるに大きな寄与をした。だが、高齢化がさらに進展するのに伴って、日本式フォーマル制度の定年延長とインフォーマル制度の雇用慣行を中心にした内部労働市場指向の雇用政策はすでに限界を見せている。したがって、このような環境の下で、日韓政府と企業がこの問題にどのように対応しているのかを分析する必要がある。
3.両国の再雇用制度と定年延長
日本企業の95.2% (119社)が退職者の再雇用制度があるに対し、韓国企業は31.4%(27社)だけ同制度がある。再雇用制度は企業にとっては定年延長よりも負担が少なて済むという利点がある。労働者にとっては定年前よりは労働強度のプレッシャーも和らぐと共に、蓄積してきた熟練労働を引き継ぎながら所属感を味わうことができる。
同調査の結果では再雇用の期間は5～9年が51%で最も多い。日本企業の場合、団塊世代の大量退職が始まる、いわゆる2007年問題に伴い、人手不足への対応側面もあると言える。同調査によると、再雇用制度により、2007年問題を「回避できた」または「ある程度回避できた」という答えは調査対象となった日本企業の72%に上っている。しかし、韓国の場合、再雇用制度の導入の割合は日本よりも低いが、「定年延長」の割合が高い。
同調査結果によると、2005年から3年間定年を一度でも延長したことがある企業は韓国は16.3%(14社)であるのに対し、日本は2.4%(3社)に過ぎない。定年を延長していない企業の中でも定年延長の計画中の企業は韓国が22.2%であり、日本の9.2%をはるかに上回る。しかし、韓国の定年延長の場合、その計画中の企業を含めても38.5%であり、日本の半分にも満たさない。このことは60%以上の企業においては定年を迎えた労働者がそのまま退職するのを意味する。その反面、日本は再雇用制度を95.2%の企業が採択しており、退職後も企業に残ることが分かる。
4.日韓の雇用方式または雇用意識の差が生じる要因
(1)人口構造の差
日韓の団塊世代が定年後の雇用に及ぼす影響の差である。日本はこの団塊世代の退職問題に直面し、それに対応するために再雇用制度を用いていると言えるが、韓国はまだ日本のような人口構造に伴う団塊世代の大量退職の問題に直面していない。それに比べて、韓国の高齢化スピードは日本よりも速く、近いうちに被雇用者の世代交代が一気に進む可能性も高い。
(2)日韓両国の定年年齢の差
日本の場合、1998年、雇用安定に関する法律を改正し、ほとんどの企業が60歳定年となっているのに対し、韓国企業の場合、50代半が定年年齢となっている。すなわち、韓国企業の定年が早いため、日本よりも定年延長方法を取りやすいと言える。しかし、今後においても韓国企業が日本企業のように定年後の再雇用制度の採択割合はそれほど高くならないと考えられる。
(3)日韓の企業風土の差
伝統的に日本企業の特徴として年功序列、終身雇用、企業特殊的人的資本を上げられる。今はその傾向が薄れているといえるが、その企業風土は根強く残っていると言える。このような特徴は雇用の持続性、または勤続年数とも深く係わってくる。日本の労働者はどこかに長く所属し、その組織の中での一員として働いて行くことへの意識が強く現れがちである。企業側もこのような労働者の意識を重視することになると、定年後にも再雇用という雇用形態で対応したと言えよう。
(4)非経済的要因としての日韓の価値観の差
日本よりも儒教的な価値観が強い韓国では、年齢という基準が人間関係の秩序を保つ重要な要因として作用する傾向が強いと言える。このような年齢による位階秩序の意識が作用することになる。韓国の場合、日本のような再雇用制度よりは地位の逆転が起きにくい定年延長を好むことになると言えよう。
5.再雇用制度と機会費用
日本企業の雇用の特徴の一つとして、企業特殊的人的資本ということが上げられたが、定年を迎えた高齢労働者には一般にその企業特殊の人的資本が蓄積されているとも言えよう。しかし、企業特殊的人的資本は当該企業としても重要である。そのため、その労働者が完全に退職してしまう企業の損失につながる可能性も高い。
再雇用制度は企業側にとって、その企業特殊の人的資本の伝授期間という意味も合わせ持つことになる。要するに、企業特殊的人的資本という日本企業の特徴に合致することが再雇用制度と言える。高齢労働者の中でもその企業の核心に係わるベテラン社員の場合は売り手側の力が強いため、低賃金の再雇用制度のみでは限界があり、日本企業においても定年延長に踏み切ることになる。(例えば、今回の調査では（株）イオンがベテラン社員の定年延長を行っていて、調査対象企業の9.2%が定年延長を‘検討中’と答えている) しかし、このような定年延長に関する検討は韓国企業が日本企業よりもはるかに高く現れる。すでに述べたように、韓国はその割合は22.2%を見せる。
6. 企業が支援するプログラム
韓国より組織を重視する傾向の強い日本の場合、個人が主体的に退職後、第2の人生を計画し独立するよりは企業が支援するプログラムが手厚い。調査結果でも日本企業の57.6%が退職後のプログラムがあると答えているのに対し、韓国のその割合は26.7%にとどまり、日本の方が2倍以上高く現れている。日本に比べて、韓国の方が転職に対する抵抗感が少ないことと退職後は会社の第2の人生支援のためのプログラムに頼らず、独立する傾向が強いと言えよう。
Ⅳ．日韓高齢者雇用の特性および示唆点
1.日本の場合
政策の環境の側面で見れば、調整された市場経済体制の生産レジームで、世界化、高い高齢化の環境にある。そして、最近団塊世代の退職が進行中である。 ここで発生した政策問題として高齢化問題がすでに発生しており、制度的な条件で公式的制度の定年制度と年金制度があって、インフォーマル制度で雇用慣行と社会的な信頼がある。このような条件下でアクターの企業と高齢者両者から高齢者雇用問題を政策問題化することに対する認識の共感がある。 そして、生産レジームの関係で企業特殊的人的資本が生成されて、企業と高齢者両者に雇用の必要性がある。しかし、日本の高齢者は年金構造と既存資産によって、不平等の指数が高くて高齢者間の差が大きい。 したがって、企業と高齢者の求人と求職に情報費用が発生しなければならない。高齢者の雇用にも高齢化にともなう熟練断絶を避けるための機会要因と高い賃金にともなう威嚇要因があるので、企業側面では高齢者の生産性に対して労働者の側面では企業の賃金条件と労働条件に対する測定費用が発生する。このような政策環境と制度的条件下で定年延長と再雇用の政策代案中選択の必要性が存在する。 このようなアクターの選択が今後の政策にまた影響を及ぼす。
2.韓国の場合
政策の環境の側面で見れば、世界化と高齢化社会の段階だが、急速な高齢化の環境にある。ここで発生する政策問題として高齢化問題があり、制度的な条件として公式的制度の定年制度と年金制度があって、インフォーマル制度で雇用慣行と儒教の根本思想である「孝」思想がある。このような条件下で、アクターの企業と高齢者両者から高齢者雇用問題を政策問題化することに対する認識の共感がある。 しかし、韓国の高齢者は年金制度の未成熟によって、貧困度が高い。ここに外国為替金融危機以後、企業では企業構造調整時において高齢者を高費用低生産的な労働者と認識することになり、定年制度が任意的なことであることを利用して、高齢者を早期退職させている。高齢者の側では経済的理由などで高い就業意欲という機会要因と最近外国人労働者流入にともなう威嚇要因があって、企業側では高齢者の生産性に対し、労働者の側面では企業の賃金条件と労働条件に対する測定費用がそれぞれ発生する。このような政策環境と制度的条件下で、定年延長と再雇用の政策代案中選択の必要性が存在する。 このようなアクターの選択が今後の政策にまた影響を及ぼす。
3.日韓比較
日本は企業と労働者間の信頼が強く、これが高齢者雇用に肯定的な影響を及ぼすが、、韓国の労働者は企業に対する信頼が弱く、高齢者らは家族に対する信頼と金銭的な依存度が強い。この強い敬老思想は企業側には高齢者を下位職級に受け入れるのに負担を感じさせることになり、高齢者の家族は不孝になると考えるから高齢者雇用に否定的な結果を産む。そして、よく年金は高齢者雇用にマイナス効果を持つといわれるが、社会保障政策の保障性が強いほど、そして、一貫して維持されるほど、非経済的な理由で仕事をする場合がさらに多いだろう。したがって、終身雇用と年金は企業の費用節減と高齢者雇用に必ず悪影響だけがあるのではなく、柔軟性をそろえてよく設計すれば肯定的な効果を得ることができる。 生半可にこのような制度らを軽視するならば、労働者らは賃金が同じ状況でもいわゆる不安コストがより大きくなり、金銭的にさらに補償を受けようとするから企業側でも費用がよりかかることとなる。ただし、長期的には定年を延長させ続けることはできないため、定年廃止などの工夫がされなければならない。先に新しい人的管理システムを導入する前に現在の制度を変更し補完し、適応させることを先制されなければならない。制度的変容では日本は定年制度を廃止し能力を考慮した職務と給料設計とし、高齢者雇用の障害物を除去する必要性があり、韓国はむしろ賃金の柔軟化を前提とした義務定年制を導入して、労働者の不安要因を除去する必要がある。
Ⅴ．終わりに
現在の日本は団塊世代の大量退職が最も大きい社会的争点となっている。韓国も近い将来ベビーブーム世代の大量退職に直面することになる。このため両国の最も重要な社会的関心事となっている。現段階では韓国の高齢化水準は先進国に比べて相対的に低い方であるが、高齢化の進展速度はこれまでの歴史上、前例がないほど急速な進展を示している。このような状況で、現在もっとも高齢化した社会である日本は韓国とも歴史的・制度的にも多くの類似点を持っている。なお、日本と韓国は、他の先進諸国に比べて極めて就業意欲は高いし、また西欧諸国とは異なる高齢者の環境的与件を共有している。
高齢者雇用は単に高齢者だけが関連する問題ではなく、高齢者を雇用する企業、高齢者雇用のための政策を立案して執行する政府、そして細部的な執行を担当する地方政府など、社会のすべての行為主導者が参加する過程である。さらに、高齢化社会および高齢者雇用政策は日本と韓国の政策分野で一番重要な政策課題であり、より精錬された研究が必要である。
高齢者の雇用を研究することによって、両国社会を総体的に把握できるという長所があり、具体的な個別行為グループの特性を把握し、過去研究が主に遂行してきた巨視的な研究以外にも、微視的な研究も行うことによって研究の科学性に寄与できた。なお、この分析を通じて、既存の研究と差別性を持って、政策形成者と企業・労働者が高齢者雇用にどのような影響力を及ぼしているかを明らかにした。高齢者雇用政策の全体像を描き出されて、政策代案の提示を期待することができた。
したがって、日本と韓国の高齢者雇用政策を調べ、政府や公的機関、雇用者である企業と被雇用者である労働者などが与えられた条件の中でどのように対応しているのかを分析したことは示唆を得るところが大きいといえる。
参考文献
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