森基金研究報告書

 

 

北京市におけるコミュニティ・ケアの展開と課題

 

 

政策・メディア研究科 修士2年 PS

 

金 玉

 

 

1.研究背景

1.1 中国の高齢化と高齢者福祉

中国では、高齢者福祉制度の改革には、経済的な扶養を最も重要な課題として位置づけられている(韓、2004)。現実の中国では、子供が家族内で両親を扶養するという仕組みが社会全体にまで拡大されており、さらに中心的な役割を担っている。ところが、近年、少子高齢化の進展による家族形態の変化は、家族機能の縮小を引き起こし、高齢者に対する家族の生活保障は危機的状態に陥っている。特に、要介護高齢者に対する家族の介護能力が低下し、高齢者の在宅生活での問題は大きい。高齢者の生活の質を向上させていくためには、経済的保障を高めていくと同時に、福祉コミュニティサービスも重要視すべきである。

中国は1980年以降、政治、経済体制の改革により、社会の発展と共に科学の進歩、医療衛生、保険事業などが改善され、国民生活水準の向上に伴う平均寿命が伸長してきた。特に、一人っ子政策の「成功」により、少子高齢化社会が進んできている。2000年の第5回人口センサスによれば、中国の65才以上の人口は8,811万人を超え、全人口の6.96%を占めている。この割合は、日本やヨーロッパなどに比べて決して高くない比率であるが、今後この比率は急速に高まることが予想されている。『人口統計資料集』(2008年版) によると、中国の65才以上人口の比率が10%から20%まで増加していく年数は、世界最速と言われる日本と同じ、20年と予想されている。このような状況の中で、中国、特に都市部において、高齢化率の急激的な増加と同時に、後期高齢者人口の増加、そして急速な都市化、核家族化の進展に伴う高齢者の扶養機能の低下などにより、今日の高齢者扶養は家族を中心とする方式はやがて崩壊し、高齢者の在宅養老問題が新しい社会問題として顕在化してくると考えられる。

 

表1 65才以上人口割合別の到達年次とその倍化年数

 

65才以上人口割合(到達年次)

倍化年数(年間)

 

7

10

14

15

20

21

25

30

7%→14

10%→20

中国

2001

2016

2026

2028

2036

2038

25

20

日本

1970

1985

1994

1996

2005

2007

2013

2024

24

20

資料:『人口統計資料集』2008年 国立社会保障•人口問題研究所編集

 

1.2「単位福祉」から「社区福祉」へ

家族扶養は昔から伝わってきた主な高齢者扶養のモデルであった。計画経済時代の80年代前まで、家族扶養が「単位福祉」からの有力な支持を受けていた。当時の企業が国営の性質を持っていたため、福祉政策がすべての「単位」(あらゆる職場)で統一して実施された。「単位」は従業員本人に対して生涯の生活保障を責任とするのみならず、従業員の家族(親と子供)の生活も経済的に時間的に支援する施策が実施されてきた。従業員の親に職場がない場合、医療費の3割を「単位」が負担した。また従業員は親の看病の理由で休みを申請すれば、「単位」から同情と支持をしてもらえた。

 

 

 

 

 

2 計画経済時代の単位福祉

タイプ

内容

提供の方式

ハード

幼稚園、小中学校

衛生室、病院

大衆風呂場、床屋

映画館、クラブ

住宅、食堂

無料

無料、低料金

無料、低料金

無料、低料金

低料金

ソフト

帰郷手当

交通手当

暖房手当

一時困難補助金

現金提供

現金提供

現金提供

現金提供

    資料:筆者の作成により。

 

しかし近年、市場経済の導入に伴って政府が国営企業を解体、整理し、従業員やその家族への生活保障を担当する国営企業の負担を減らす方向に動き始めた。また「労働保険条例」(1953年)の代わりに制定された「労働法」(1994年)では、「労働保険条例」の「養老待遇」と「直系親族の待遇」が撤去された。従って、従業員とその家族が恵んだ「単位福祉」の基盤が崩れてしまった。同時に、1977年から育児制限政策が実施されてから、都市部の50才以下の家庭は、夫婦と一人っ子の三人家族のような生活を送っている(王、2006)。そして一人っ子を育てた夫婦二人が4人の親を扶養すること、つまり「421」のような家庭がすでに70%に達した。その一方、親が夫婦2人か一人暮らしの家庭を作って、老後生活を送っている家庭の比率が30%に迫ってきた。都市部における世代の構成を第5回人口センサスで見ると、中国社会では普通であった4世代や5世代という多世代世帯はほとんど無くなり、3世代も約1割にすぎない。逆に2世代は60%を超えた。

こうした現状を背景に、政府は「社会全体が力を合わせて社会福祉事業を運営する」という新しい社会福祉政策の理念を打ち出した。この理念の下で、1)社会福祉制度に対する政府の介入を弱める、2)市場または「社区」 による社会福祉事業の運営を強化し、これまで政府が独占的に管理、運営してきた社会福祉施設を民間部門に開放して、民間部門の力を活用する、3)一部の人に限定されていた社会福祉制度の対象を拡大する、4)政府部門の関与を弱めると同時に家族、個人又は「社区」、ボランティア団体の力を強化する、という方向で社会福祉制度の改革が行われている(薛、2006)。

 

2. 研究目的

本研究では、上述のような背景を問題認識とし、中国の今後の高齢者問題に対して、高齢者福祉の面から、日本の今までの知見を基に中国の国情に合せた、よりよい提言を行うことを目的としている。特に本論文では研究の取り掛かりとして、①中国における高齢者問題を顕在化させる要因②高齢者問題に対する「社区」の役割③北京市における「社区」の実態の三点を明らかにすることが目的である。

 

3. 研究方法

研究方法は以下に示すとおりである。

①文献より高齢者問題を顕在化させる要因、即ち高齢者を支える社会の歴史的変容を整理する。

②公表されたデータ等から中国の高齢化と「社区」の現状を明らかにする。

③北京市を事例にして現地調査を行い、「社区」における高齢者ケアの実態を把握する。具体的には、7月末から8月中旬まで約三週間北京の郊外にある「社区」でインタビューを行う予定である。郊外を選んだ理由は、日本との比較をするためである。日本の場合、コミュニティケアは、大体郊外で進んできている。調査の内容は、「社区」における高齢者ケアの実態、「単位福祉」から「社区福祉」の展開によって残された課題、日本の事例の応用可能性などである。

 

4. 北京市に着目した理由

北京は直轄市であるために、高齢化問題について行政は特に力を入れており、国内・外からも非常に注目されている他地域とは異なる地域である。また、北京市は一人っ子政策を比較的早く実施したために、高齢化の厳しい実態に直面している。先ず、北京の人口高齢化進展は速い。高齢者人口の増加率は同期総人口の増加率を上回っている。次は、北京市高齢化水準は高い。中国が2000年に高齢化社会になったことに対して、北京は10年先の1990年に高齢化社会に進入した。最後に、後期高齢者と一人暮らしの高齢者が増えている。これは要介護高齢者も増えていることを示している。

 

3 北京市未来50年の人口予測

 

年次

1995

2000

2005

2010

2015

2020

2025

2030

2035

2040

2045

2050

60

65

12.6

7.8

14.5

10.0

15.4

11.6

16.9

12.0

20.4

13.1

24.5

16.2

28.7

20.0

31.3

23.7

32.5

25.6

32.2

26.1

33.3

25.3

34.6

26.2

資料:姜向群『人口学刊』2001

 

  5.北京市社区サービスの現状―現地調査を通じて

調査は、北京市望京南湖西里社区における社区サービス、特に高齢者向けサービスについて行った。

 

調査期間:2009810日―2009817

調査方法:ヒアリング調査、参与観察調査

調査目的:社区に関する基礎情報と管理状況

     社区内の高齢者サービス状況

調査結果:

(1)調査対象の基礎データ

南湖西里社区は、北京市朝陽区の東北部に位置し、望京街道に所属している。望京街道事務所は20006月に成立し、望京街道は朝陽区で最も若い街道の一つである。2006年の統計によると、望京街道の管轄区総面積は10.36平方キロメートルであり、人口は約22万人である。そのうち常住人口は6.5万世帯、流動人口は6万人で、53ヶ国から来た外国人が大半を占めている。年齢層を見ると、若者が最も多く、27歳から35歳の人口が56.3%を占めている。望京街道には、高学歴、高収入人口が多く、短大以上は67.8%、月収3千元以上は51%も占めている。[1]

南湖西里社区は、望京街道の17ヶ所の社区の一つであり、面積は0.1平方キロメートル、住宅27棟、住民は1451世帯で、4000人が居住している。高齢者は1031人で、戸籍人口(北京市朝陽区戸籍を持っている人口)32.5%を占めている。そのうち、80才以上の高齢者は108人、夫婦のみ高齢者は96世帯で、180人、一人暮らし高齢者は30人、生活自立のできない高齢者は38人である。

 

(2)調査対象の管理組織、及び職員体制

 南湖西里社区には社区居民委員会、社区共産党委員会、社区サービスステーション等三つの組織がある。

 

社区居民委員会:

現在、社区居民委員会には、21人の勤務者がおり、その中に主任が1人、委員が20人いる。政府から給料を貰う職員は14人、その他の7人の給料は彼らの単位が負担している。[2]職員には退職者が7人で、職員の平均年齢は40才である。居民委員会のメンバーは住民の選挙により選ぶのではなく、社会で公募している。社区居民委員会は住民の自治組織であると主任が語った。しかし、今、居民委員会は政府の代わりに60種類の行政仕事をしている。居民委員会の「行政化」を阻むため、社区にサービスステーションを設けている。

 

社区サービスステーション:

社区サービスステーションは面積400㎡の施設で、政府が200万元を出資して不動産会社から買ったものである。社区サービスステーションは、社区内の住民に対して主に行政サービスをしている。社区サービスステーションには、計画出産、民政、治安、文化教育、内勤等五つの窓口がある。五つの窓口のサービス内容が明確であるため、住民はどの業務はどこで扱っているのかすぐ分かる。職員は大学生を対象に公募している。社区サービスステーションは「専門化」を目指しており、職員は定期的にトレーニングを受け、試験に合格しなければならない。

 

社区共産党委員会

社区共産党委員会は社区組織の核心である。党委員会は、社区の党員管理と住民の精神文化活動を担当している。例えば、政府の政策を宣伝したり、住民の政治生活を監督したりしている。また、社区居民委員会の仕事を指導し、監督している。社区共産党委員会のメンバーを見ると、党書記が1名、委員が12名であり、書記は政府から派遣され、委員は住民[3]の選挙で選ばれた。党委員会の下に、四つの党支部があり、一つの支部に委員は3名ずつ総計12名が配置されている。

職員体制において、「北京市社会建設大会」(2008925)では、以下のように規定された。社区の職員は、年齢41才未満で、短大以上の学歴で、「全国助理社会工作師」の証書を所持しなければならない。「全国助理社会工作師職業水準試験」の合格率は201で公務員試験と同じレベルだと言える。

 

 (3) 調査対象の施設

名称

概要

資産所有

運営管理

利用料金

老幹部活動室

定年退職した「幹部」(役員)が娯楽や集まりなどをするための施設である。

国家

単位

無料

(幹部限定)

社区活動室

社区の住民が娯楽や集まりなどをするための施設である。

国家

社区居民委員会

無料

有料

星光老人の家

中央や各地方の民生部門による福祉宝くじの発売で調達した公益金を、地方財政投入や民間投資を合わせ、設立された地域高齢者福祉サービス施設である。

国家

社区居民委員会

無料

資料:筆者の作成により。

 

また社区では、住民の疾病予防や健康の増進を目的とし「社区衛生ステーション」を設立している。社区衛生ステーションとは、主に住民の疾病予防及び保健に関するアドバイスをし、風邪程度の病気の治療、注射を行う施設である。老幹部活動室、社区活動室、星光老人の家、社区衛生ステーションは全国の統一した施設である。

 

(4) 社区団体の活動状況

南湖西里社区には、住民が自ら作った団体がいくつかある。この社区は、単位住宅団地であったところに設定されたため、団体のメンバーは昔からの知り合いである。コアメンバーは全部退職者で、彼らは退職後自己実現とか暇潰しとか色々な理由で団体を作った。社区居民委員会は彼らの活動を支え、活動場所を無料で提供している。

 

          4 団体の活動状況

団体名

活動内容

活動日割り

老年芸術団

コーラス、ダンス、漫才等

火曜日、木曜日、土曜日

老年体操隊

体操、太極拳、社交ダンス等

月曜日~金曜日

将棋協会

将棋、囲碁

月曜日~金曜日

手工組

編み物、ペーパーカット

月曜日~金曜日

京劇団

京劇

不定

  資料:筆者の作成により。

 

また、この社区ではボランティア活動も行っている。メンバー数と活動時間は不定だが、社区内における環境保護と治安維持を中心に活動している。例えば、雪の掃除とか、祝日に警備の代わりに社区内のパトロールを実施している。活動参加者は、自ら居民委員会へ行って志望した「主動派」と居民委員会からの依頼を受けて参加し始めた「受動派」がある。

 

(5)社区サービス

北京市政府は、社区サービスの利用をもっと円滑にするため、「96156サービス」[4]を開始した。このサービスは北京市170ヶ所の社区を連合して、各社区内の資源を有効に調達している。住民は、電話一本で必要なサービスを利用できる。「96156サービス」には、家政サービス、総合修理、エンターテイメントなどを含めて150種類のサービスがある。南湖西里社区には、家政サービスセンターがある。居民委員会と家政サービス会社は連携関係であり、居民委員会は家政サービス会社に事務室をレンタルしている。家政サービス会社は社区内のレイオフ労働者を採用してサービスを提供している。

 

(6) 居宅養老サービスステーション

南湖西里社区には、政府が150万元を投入して作った居宅養老サービスステーションがある。2009518日に成立し、面積は400平方メートルであり、デイケア室、パソコン室、図書室、手工作業室、リハビリ室、心理相談室等が設置されている。居宅養老サービスステーションの管理は、社区が専業養老機構に委託している。居宅養老サービスの対象は、北京市朝陽区戸籍を持っている60才以上の高齢者である。サービス内容は以下の通りである。

 

          5 居宅養老サービス内容

サービス形態

サービス

内容

サービス

提供者

サービス

利用料

利用料

基準

サービス時間

サービス方式

生活ケア

デイケア

社区

30/

月曜日~日曜日

0900~2100

施設サービス

口腔清潔

社区

20/

月曜日~金曜日

0900~1700

訪問サービス

同伴外出

社区

20/

月曜日~金曜日

0900~1700

訪問サービス

弁当配達

過橋園食堂

10/昼御飯

月曜日~金曜日

1100~1300

訪問サービス

洗濯/掃除

愛依家政会社

10/時間

月曜日~日曜日

0900~2100

訪問サービス

お風呂

社区

30/

電話予約

訪問サービス

理髪

国余床屋

10/

月曜日~日曜日

0900~2100

訪問サービス

リハビリ

健康講義

社区衛生ステーション

 

木曜日午後

 

施設サービス

物理療法

社区

20/20

月曜日~金曜日

0900~1700

施設サービス

日常生活動作訓練

社区衛生ステーション

50/

電話予約

訪問サービス

鍼灸

社区衛生ステーション

50/

電話予約

訪問サービス

心理治療

社区衛生ステーション

50/

電話予約

訪問サービス

言語治療

社区衛生ステーション

50/

電話予約

訪問サービス

文化活動

手工

社区

月曜日~金曜日

0900~1700

施設サービス

書道

社区

月曜日~金曜日

0900~1700

施設サービス

囲碁

社区

月曜日~金曜日

0900~1700

施設サービス

コーラス

社区

木曜日

0900~1100

施設サービス

老年教育

パソコン

ボランティア

金曜日

0900~1700

施設サービス

英語

ボランティア

月曜日~金曜日

0900~1700

施設サービス

音楽

専門家

月曜日~金曜日

0900~1700

施設サービス

権益保障

法律相談

司法所

月曜日~金曜日

0900~1700

施設サービス

政策相談

社区

月曜日~金曜日

0900~1700

施設サービス

養老情報

社区

月曜日~金曜日

0900~1700

施設サービス

資料:筆者の作成により。

 

 

また、区政府が出資し、高齢者の家に設置した救急専用電話がある。日常サービスや万が一の時に救急ボタンを押すだけで社区が対応できるシステムである。

この20種類以上のサービスの中で、利用率が最も高いのは弁当配達サービスである。社区内にあるレストランと居民委員会が提携して、高齢者の単身世帯や夫婦世帯を対象とし、栄養バランスの取れた低価額の食事を提供している。弁当配達サービスを開始して以来、毎日40名程度の利用者がいる。次に、利用率が高いのは、パソコン教室と英語教室である。このサービスを利用している高齢者達の子女は、現在外国で生活している。高齢者達は子女とパソコンで映像通話をしたり、メールをしたりするためにパソコンの勉強を始めた。また、高齢者達は子女の招待でよく外国に行く。彼らは入国時とか外国で生活する時、不便な状態を避けるために英語の勉強もしている。

社区内の高齢者は、居民委員会の宣伝を受けて居宅養老サービスステーションに通っている。居民委員会は、高齢者の参加だけではなく、一般住民の高齢者サービスへの参加を促すために努力している。

 

 6.課題

 

南湖西里社区は、北京市政府の指導と支援のもとで社区サービスを行っている。また、サービスを市場から購入して、民間に運営を任せている。現行の社区サービスには以下の課題が挙げられる。

 

住民の利用率の低さ

社区居宅養老サービスステーションは、現在の高齢化社会に対応して設けられていたが、高齢者の利用率は非常に低い。サービスを利用している高齢者は社区内高齢者総数の10%にも満たない。その原因は概ね二つがある。先ず一つは、高齢者の経済条件である。大半の高齢者は豊かな生活を送っていて、サービスを直接市場から購入している。次は、高齢者の意識問題である。多数の高齢者は、外部者が自分の家に入るのを嫌い、在宅サービスを利用していない。また、自分自身も一日中家に閉じこもって他人との連絡をしていない。二つの状況を見ると、社区に対して信頼感が薄いのが分かる。

 

「社区」の存在感の薄さ

半数以上の住民は、自分がどこの社区に属するかも知らなかったりし、また、居住している社区にどのようなサービスがあるかも知らず、依然として単位との繋がりを中心として生活している。彼らは何らかの問題に直面したときは金銭的に解決する経済力を持つ人々である。そのため社区を利用する必要もなければ、社区の存在意義についても懐疑的な人々である。しかし、社区に帰属感や関心が薄いものの、社区サービス内容に対しては高い要求を持っている。近隣ネットワークでの助け合いを必要とするのは、経済的に解決できない問題を抱え、それを頼るしかない人々である。

 

社区の財政問題

社区居民委員会で経済活動を行っているものの、住民へのサービス提供を徹底して従業してもらうという目的から「営利活動」は禁止されている。南湖西里社区居民委員会は主に街道からの財政的支援によって活動を展開している。また、サービス提供から得た収入を全部街道に納めている。しかし、現在は「社区づくり」をしている最中で、政府が積極的に支援しているが、いつまで持続するかは不明である。居民委員会の主任が言うように、「財源を得るために、収入のある仕事をしようとしても、市場経済が目覚しい発展を見せている中では、社区居民委員会が低コスト低価額でサービスを提供していても市場との競争は厳しい」というのが現状である。

 

 

 

【参考文献】

陳彩玉「中国の社区の新しい展開」『生活経済学研究』20069.30

陳誼「北京市人口高齢化の現状、発展趨勢及び対策分析」2004

韓栄芝「中国の高齢化と養老保障問題に関する研究」『長崎国際大学論叢』2004.1

王国忠「中国の高齢者福祉の変遷についての一考察」『人間文化研究』20063.1

王文亮『現代中国の社会と福祉』20083.1

王莉莉「新時期北京市人口高齢化の趨勢、特徴と圧力」『西北人口』第22003 

薛迪 「中国都市部におけるボランティア活動の特徴を可能性」『人間文化論叢』2006

張忠任•内藤二郎「中国における地方行政改革と地方自治について」『北東アジア研究』 第10号 2006.1

城本るみ「中国の社会福祉改革と高齢者福祉の行方」『人文社会論叢』社会科学篇2005

姫野ほか「中国の社会構造の変化による社区の形成と高齢化社会への対応に関する研究」『日本建築学会九州支部研究報告』第47号 2008.3

                                             



[1] 中国国家統計局調査によると、2006年全国都市住民平均月収は998.53元であり、北京市住民月収は1822.26元で全国一位である。

[2]南湖西里社区は単位住宅団地を基に作った社区であるため、単位の従業員が社区管理に参加している。

[3] 住民は共産党員ではないと、選挙、被選挙権はない。

[4] サービス利用電話番号は96156である。