森泰吉郎記念研究振興基金活動報告

 

　政策・メディア研究科2年

山�ｱ倫子

■研究課題名：

韓国における地域感情の変容 -嶺・湖南大学間交流事業を中心に-

 

■活動内容：

　元々の研究課題名は上記のとおりであったが、夏季休暇に入ってから大幅に研究内容を変更し、「韓国における伝統の産業化−全羅道の光州、全州、南原を事例として−」との主題の下、修士論文を作成した。変更にあたって、韓国での綿密なフィールド調査が必要になり、２回の訪韓を通じて資料収集に努めた。基金からの研究費による研究活動は、以下の通りである。

 

�@韓国延世大学、韓国国会図書館、韓国キョボ文庫、全州における調査・資料収集(2009年7月)

 

�A韓国国会図書館、韓国キョボ文庫における資料収集(2009年10月)

 

■修士論文の内容：

１．構成

序章

　第１節　序説

　第２節　先行研究と本研究の違い

　第３節　研究手法

　第４節　本稿の構成

 

第1章　金大中政権と伝統のコンテンツ化

　第１節　情報化政策に伴ったコンテンツ産業の発展

　第２節　伝統文化のデジタル・コンテンツ化

 

第２節　盧武鉉政権と伝統の地域ブランド化

　第１節　国家均衡発展政策に伴った文化都市づくり

　第２節　伝統文化の地域ブランド化推進

　　第１項　「韓スタイル」事業

　　第２項　「100大民族文化の発掘」事業

 

第３章　伝統の産業化の事例研究

　第１節　事例地域の特徴

　第２節　「韓スタイル」事業のモデル都市：全州

　　第１項　「韓スタイル」の空間化

　　第２項　韓国料理・韓紙の産業化推進

　第３節　歴史記憶のグローバル化都市：光州

　　第1項　歴史記憶の空間化

　　第２項　光州民主化運動のデジタル・コンテンツ化

第４節　文学と国楽のデジタル化都市：南原

　　第１項　国楽・文学の空間化

　　第２項　南原郷土文化のデジタル化

 

終章　結論

参考文献

 

２．要旨

 

本稿の目的は、金大中政権から盧武鉉政権までの文化政策による伝統の産業化戦略が地域に拡大した過程を明らかにすることである。事例として全羅道の3都市（全州市、光州市、南原市）を取り上げ、伝統の産業化戦略の観点から文化政策の成果を考察する。

　両政権の文化政策を分析した結果、金大中政権では、通貨危機の打開策として文化産業、とりわけコンテンツ産業が積極的に推進され、それに伴い、伝統のコンテンツ化が展開されていった。盧武鉉政権では、国家均衡発展政策の一環として文化政策が図られた。そして、地域の特性を活かした地域文化産業の育成が行われ、伝統は地域ブランド化されていった。

　このように伝統の産業化が地域へ広がっていったことは、事例都市の全州市、光州市、南原市において、両政権の伝統のコンテンツ化、地域ブランド化が反映された形で表れる。そして、国家均衡発展という盧武鉉が掲げた国政課題に成果を見せているものであった。

第１章では、金大中政権における伝統の産業化戦略を明らかにした。

第２章では、盧武鉉政権における伝統の産業化戦略を明らかにした。その際に、国家均衡政策が国政課題として掲げられ、伝統の産業化戦略に地域の役割が大きくなったことが立証された。

第３章では、金大中政権、盧武鉉政権の伝統の産業化戦略の流れをもとに、その実証分析を全羅道の３都市（全州市・光州市・南原市）を対象に行った。

終章では、第１章から第３章までの分析をもとに、伝統の産業化戦略という観点から文化政策の成果を論じた。

現在、韓国は国家均衡発展を目指すために、地方都市において文化という資源、それも伝統という地域固有の資源を活用した、地域活性化は欠かせない取り組みである。本稿は地域ごとにその実態を考察するものであり、韓国の文化政策の成果を見るという点で意義があるといえる。