イエメンの孤児教育 〜革命を生んだ教育とイスラームの倫理〜

政策・メディア研究科 修士課程一年 菊池創太 2009年度森基金活動報告書 


この報告書は、森基金の助成により2009年9月9日から10月4日にかけて行なった、イエメン共和国・サナアにおける現地調査の報告が主な内容である。



活動内容

現地調査の内容は主に下記の3つに分けられる。

インタビュー

文献調査

研究受け入れ先の発掘


インタビュー内容

インタビュー対象は主に以下の4組に分けられる。また詳細のあるものは別紙を添付する。

JICAオフィス職員

 本研究の課題からすると一件的外れのようにも思えるが、そもそも日本から入手できる現地の情報が乏しく、そのため研究課題自体が暫定的なものであった。したがって、まずは現地の状況を知る上で、サナアのJICAオフィスを訪問し、二名の職員とインタビューをする機会を得た。JICAは情勢の悪化によりイエメンでの活動を一時休止していたが、2003年から活動を再開し、現在まで教育、保健医療、水資源・防災、資源・エネルギー、農業/農村開発と多岐に渡る援助活動を継続的に行なっている。対象者のうち一名は去年まで教育を担当をしており、主に幼児教育に詳しい。イエメン人と共に仕事をすることの難しさについての話は、これまであまり想像していないイエメンの側面であった。具体的には、援助慣れしているイエメン人と仕事をやる難しさである。イエメンの要請を受けて援助を引き受けているのにも関わらず、横柄な対応をされることが多々あると言う。「個人的にはみんなすごく親切なんですけどね」と苦笑いをうかべていた。

革命指導者

1962年の革命は、民主化のきっかけとなったものであり、その革命を成功に導いたとされるのが、本研究の直接的な対象でもある孤児院での教育である。本調査では革命指導者のトップであり初代大統領でもあるアブドゥッラー・アッサラールの第一子であるアリー・アブドゥッラー氏及び、同志であるアブドゥッラー・アルダッビ氏にインタビューを行なうことができた。調査にはアブドゥッラー・アッサラール氏の孫のアブドゥッラー・ジャマール・アッサラール氏に多大なる協力を得た。革命の概要、及び二人のとのインタビューの詳細は別紙を参照されたい。
別紙:「「革命」と「教育」」(日本語A43枚程度)
別紙:インタビュー(アリー・アブドゥッラー)  (英語A43枚程度) 
別紙:インタビュー(アブドゥッラー・アルダッビ)  (英語A43枚程度)

JICA隊員

現地で活動をするJICA隊員(青年海外協力隊)と面会し、開発援助の現状を知ることができた。JICAがやらんとしていることと現地の人々が求めることがしばしば食い違い、それの板挟みになる隊員の生の話は興味深いものであった。JICA隊員は単に上から指示されたことを行っているわけではなく、それぞれが思考をこらしてよりより活動を行おうとしている。数字ばかりに目を取られる援助の成果であるが、このような個人の努力はあまり表立って方向されない。しかし、それがなければ援助は成立しない。
別紙:JICA隊員

文部科学省関係者

私費旅行でイエメンを訪問している文部科学省関係者(外国調査専門職)の方と面会を行なうことができた。イエメンの教育状況や、日本の教育が抱える問題などについて話あい、日本において現在増加しているムスリムに対応する体制(例えば小学校教師がイスラーム教徒の生徒に対する接し方など)が現在未整備であり文部科学省としても手の出しにくい研究ということで、研究者にその対策方法の検討がゆだねられている現状を聞くことができた。
別紙:文部科学省


文献調査

入手文献


研究受け入れ先発掘

2010年度に計画している長期フィールドワークの際に必要となる受け入れ先の発掘を行なった。本研究を通して関係を深めることにより、将来的に慶應義塾大学とのアカデミックな交流活動を行なう拠点の構築を目指すことも視野に入れている。