2009年度 森泰吉郎記念研究振興基金研究者育成費 研究成果報告書

 

研究課題名:

木質建材の長期的循環使用を目指したデザイン手法に関する研究

-「交差木組ユニット」の実証実験を通じて-

 

政策・メディア研究科 修士2年 山口賢輔

 

研究内容

 

 近年、社会全体で環境共生の重要性が唱えられており、建築分野においても環境共生社会への貢献が望まれている。木質建材は他の建材に比べて生産エネルギーが小さく、炭素固定能力を持つため、環境にやさしい建材だといえる。しかし他の建材に比べ、そのリサイクル、リユース率は低く、循環使用があまり行われていないのが実状だ。一方で、構成部材の優れたリユース性能という観点から注目すべきなのが仮設建築である。仮設建築においては、その構成部材の循環使用が積極的に行われていることが事例調査や既往研究から読み取れる。以上の背景から、木質建材の長期的循環使用によって建築分野から環境共生へと貢献すべく、仮設的に空間を形成する「木製ユニット」を用いた実証実験を行うことは有意義だといえる。

 

 本研究は、「交差木組ユニット」の開発、利用による実証実験を通して、木質建材の長期的循環使用を目指したデザインのための指標を抽出することを目的とする。

 

 はじめに、上述の背景と、フレキシブルに更新可能な空間の必要性や、木質建材による建築と家具の中間レベルのストラクチャーの必要性という2つの知見から、仮説を設定する。

 次に、設定した仮説をふまえ「交差木組ユニット」を設計し、ユニットの製作、ユニットを用いた利用実験を行う。この開発から利用までの一連の過程を通じて実証実験とする。

 最後に、実証実験の結果の分析による仮説の検証を行い、木質建材の長期的循環使用を目指したデザインのための指標の抽出を行う。

 

 本研究で得られた知見は、木質建材の長期的循環使用を実現するデザインの一助となり、建築分野における環境共生社会への貢献に寄与するものとなる。