2009年度森基金 研究成果報告書


研究課題名:『 核磁気共鳴装置を用いた脳機能評価と計測手法の検討 』

政策・メディア研究科 川崎 顕史


要旨

 脳という臓器は心とともに古くから様々なとらえ方をされてきたが,19 世紀の戦争による犠 牲者の研究がより理解を進めたと言われている.近年では計測技術の発展により,低侵襲な脳機 能計測が可能となり,医学だけにとどまらず分野を問わずに研究され,それらがもたらす知見は 様々な分野で大いに期待されている.中でも磁気共鳴を用いた計測は非侵襲でかつ空間分解能が 高く,磁気共鳴画像法は現在の臨床医学では欠かすことのできない画像診断方法の一つとなって いる.しかし,一方で時間分解能が低いという欠点を持ち,脳機能研究においてもそのことが研 究内容の幅を狭めているのが現状である.
 そこで我々は,磁気共鳴計測における撮像のタイミングを外部からの信号で制御することで, 正確な時間で計測を実現する外部トリガー法という独自の手法を用い,一般的な磁気共鳴計測に 比べ,より詳細な脳機能計測を試みた.磁気共鳴計測における実験内容・条件の検討を行った上 で,機能的磁気共鳴画像法と核磁気共鳴スペクトロスコピーそれぞれにおいて外部トリガー法の 適用し神経活動を血流動態と代謝物質の観点からとらえ,磁気共鳴計測における外部トリガー法 の有効性を示すとともに,神経活動の新たな知見が示唆された.また,それらの結果を踏まえ, 今後の研究・臨床における磁気共鳴計測を用いた実験方法やデータ解析方法についての考察を行 った.

キーワード: ヒト;脳;機能的磁気共鳴画像法;核磁気共鳴スペクトロスコピー;外部トリガー法

本研究の概要

 MR 計測装置は元来画像診断を行うMRI の使用を前提に作成されているため,一定時間で等間 隔の撮像しか行うことができない.そのため,一般的な計測手法ではデータに誤差やアーチファ クトを含むことが多く,時間のずれが生じてしまうことによってそれらを考慮した実験内容を考 えなければならず,遂行できる実験に制限が課せられている.
 そこで我々は,MR 計測における撮像のタイミングを外部からの信号で制御することで,正確 な時間で計測を実現する外部トリガー法という独自の手法を用い,一般的なMR 計測に比べより 詳細な脳機能計測を試みた.
 MR 計測における実験内容・条件の検討を行った上で,外部トリガー法を用いたfMRI とMRS の 計測を行い,MR 計測における外部トリガー法の有効性を示すとともに,神経活動の新たな知見 を見いだすことを目的とし,また,それらの結果を踏まえ今後の研究・臨床におけるMR 計測を 用いた実験方法やデータ解析方法についての考察を行った.

 本研究は埼玉県所沢市にある国立障害者リハビリテーションセンター病院において,医師・放 射線技師の指導のもとに行い,被験者には説明と同意のもと計測を行った.

外部トリガー法

 MR 計測装置は元来画像診断を行うMRI の使用を前提に作成されているため,初期に設定した 撮像間隔(repetition time,TR)に従った計測しか行うことができない.従って,一般のfMRI 計測では,図1に示すようなブロックパラダイムが用いられている.例えば視覚刺激を与える実 験でこの撮像法を行う場合では,刺激画像を常に提示し続け,被験者が目の開閉を行うことで刺 激提示(Task)と安静(Rest)が作られ,それぞれの有意差によって賦活部位を特定する.つま り,被験者は正確に開眼,閉眼をコントロールする必要がある.しかし,そのコントロール方法 は「撮像回数を被験者が数えて目の開閉を行う方法」や「外部の実験者の指示により被験者が目 の開閉を行う方法」といった人為的な方法しか用いられていない.そのため,両者共に時間的誤 差が生じ,このズレが検査結果に大きな影響を与えてしまう.さらに前者は,被験者の注意を必 要とし,疲れ等の要因が影響しアーチファクトが生じる原因とも成り得る.したがって,従来の ブロックパラダイムにおいてこれらの時間的なズレにより時間分解能の向上は非常に難しい.
 そこで本研究機関ではこれらの時間的なズレを解消するために,MR 計測の撮像を制御する外 部トリガーを用いた新たなシステムを提案した(以後,外部トリガー法).このシステムは,MRI の撮像,刺激提示,目の開閉の合図といった検査に重要な要素を外部から制御することによりそ れらの同期を取り,時間的なズレを最小限に抑えることができる.



図1.一般的なブロックパラダイム


 図2A のように,通常刺激提示システムとMR 装置は独立しているが,我々の提案する外部ト リガー法は,MR 装置の撮像のタイミングを外部の刺激提示システムが制御し,研究者がMR 装置 の撮像や音・画像などの刺激のタイミングを自由にデザインすることができる.通常の内部トリ ガーはTR に従って撮像を繰り返すことしかできないが,外部トリガーは刺激装置からのシグナ ルを受けると同時にMR 装置の撮像が行われるため,従来法に比べてより詳細に情報を取得する ことが可能であり,MR 計測による実験範囲を大幅に拡大することが可能となる.
 本研究機関では,この外部トリガー法を用いたMR 計測の研究が行われ,その有効性が示され てきたが,ごくシンプルな計測においてもその有効性を明瞭に判断できるのが図3である.この 試行は同一被験者における計測で,TR3000ms のブロックデザインからなり,視覚刺激が始めの 5スキャンに含まれている場合のBOLD 曲線の比較であるが,外部トリガーを用いた計測が正確 な計測を可能にしていることが一目で把握することができる.
 また,fMRI における神経活動領域を推定するためのZ-Score 検定ではZ スコア1.96 を設定し た場合,Z-Score が1.96 以上の領野が賦活したと判断されるが,これは信頼度95%以上で賦活時 と安静時に有意な差が生じていると判断されることを意味する.通常用いられるZ スコアは1.96 (信頼度95%)かそれ以上であるが,外部トリガー法を用いた計測では,アーチファクトの少な い正確な計測から,Z スコア1.00(信頼度68.3%)程度で評価することが可能である.



図2.一般的な計測手法(A)と外部トリガー法を用いた計測手法(B)の比較




図3.一般的な計測手法(左)と外部トリガー法を用いた計測(右)において計測される視覚野のBOLD 曲線の比較


外部トリガー法のMRS への適用

視覚刺激による視覚野の代謝物質変化

 MRS を計測するにあたって,視覚野は両半球を含めて計測できるため,聴覚野や体性感覚野の ように左右半球を考慮する必要がなく,解剖学的に位置の特定が容易である.また,視覚野は古 くから様々な手法を用いて研究されているため,これまでの知識の集積が利用可能である.よっ て本研究は,それらの理由から対象を視覚野として計測を行った.また,複雑な要因が重なるの を防ぐため,単純な画像刺激としてコントラストに注目した.

背景と目的

 霧の中での運転や細かく色の薄い文章を見るときなど,コントラストが悪いと見づらいという 経験をすることがある.しかし,ヒトは“もの”を見分けるために,明度・模様・形状・色差な どの情報を元に,物体を背景から区別して認識することができる.
 ヒトの脳視覚野とコントラストの関係については,fMRI を用いた研究が多く行われており, コントラストを下げるに従って視覚野における賦活も低下することが知られているが,2006 年 に発表されたGardner らのfMRI を用いたコントラスト順応に関する研究によると,従来得られ ていた結果と同様に,コントラストが悪くなるにつれて1次・2次・3次視覚野の賦活は低下す るが,4次視覚野はコントラストが下がるにつれて賦活が見られ,ヒトが物体と背景の境界を検 出する能力は4次視覚野が担っているのではないかと報告している.また,このコントラストに 対する視覚野の研究において,近年,生体内における物質を測定する装置として注目されている MRS を用いた研究の報告はまだされていない.
 そこで本研究は,外部トリガー法を適用したMRS 計測により,健常者のコントラストに対する 視覚野の応答を物質という観点からとらえることに試みた.さらに,血流量という観点から捉え る既存のfMRI を用いた研究結果と比較することにより,ヒトの“もの”を見分ける機構の解明 に向けた考察を行った.

ヒトの視覚野

 ヒトの後頭葉は1次視覚野(V1)や2次視覚野(V2)など視覚に関わる領域を含み,視覚野 はブロードマンの脳地図における17 野と解剖学的に同等である.図3-1はヒトの脳における視 覚野へ至る視覚情報の経路と視覚野の機能局在の模式図であるが,視覚情報は網膜から視交叉を 通り,後頭葉に明瞭に見られる深い脳溝である鳥距溝の周囲に存在する1次視覚野に投射されて いる.それを囲むようにして2次視覚野,3次視覚野,下側に4次視覚野と高次行くに従って外 側に存在する.
 ヒトの成人における1次視覚野の平均ニューロン数は,それぞれの大脳半球につき、約1 億 4000 万個ほどであると見積もられる(Leuba & Kraftsik, Anatomy and Embryology, 1994). ま た,視野の中心が1次視覚野の外側に,視野の周辺は内側に投射されている.視覚野は後大脳動 脈の鳥距溝枝から血液の供給を最も受け,fMRI 測定においても容易に計測が可能である部位と されている.



図4.ヒトの脳における視覚野へ至る視覚情報の経路と視覚野の機能局在(Logothetis NK: A window on consciousness より引用)

予備実験

実験内容の選定
 まず予備実験として,同一被験者における開眼時と閉眼時の2種類の安静時において視覚野の 代謝物質に変化がないことを確認し,さらに,まばたきによる影響がないかを確かめた.そして, これらの結果を踏まえ以下のような3つの試行を考えた.

  コントロールとして閉眼安静時(Rest)
  一般的な計測手法として連続刺激時(Endless)
  外部トリガー法を用いた計測としての短時間刺激時(T125)

 これらの3試行において,鳥距溝を中心とした視覚野,ボクセルサイズ(20×20×20mm3)の 代謝物質を測定した.用いた視覚刺激は視覚野の機能測定で一般的に使用される白黒チェッカー ボードで,サイズは2 度(120 minutes of arc),4Hz(8 reversal / sec)の反転を行ったもの である.
 測定における一連の流れ(以下シーケンス)については,刺激に対する撮像のタイミングを同 期させた手法を用い,時間依存のあるMRS の計測を行った.一般的な測定では,画像刺激を常に 提示し撮像を繰り返していく計測方法を用いて脳機能を評価している.このような計測方法は腫 瘍判定など計測時に時間依存を考慮する必要がない場合は有効であるが,本研究のように健常者 の脳における時間依存を考慮した計測においては適していない.このような計測に基づく試行と して,試行△力続刺激を行う.これはチェッカーボードが終始連続して提示されるもので,そ の間TR に従って撮像が行われるというものである(例:図5上段).
 また,刺激に対する撮像のタイミングを同期させた外部トリガー法を用いた計測方法として試 行を考えた.このシーケンスは500 ミリ秒の視覚刺激後暗い状態が続き,はじまりから125 ミリ秒のところに撮像が入るというものである(例:図5下段).この125 ミリ秒の撮像は,視 覚誘発脳波のピークがP100 として知られ視覚刺激後100 ミリ秒にピークがくることと,チェッ カーボードの4Hz の反転を考慮して設定した.
 さらに,MRS による測定では,得られる信号の強さが水分による信号に比べて弱く,安定した 測定を行うために,1回の試行におけるデータの収集回数が重要となってくるため,予備実験と して25,50,75,100,150 回を比較検証し,誤差の小ささと被験者への負担を考慮して100 回 とし,TR は1500 ミリ秒で行った.



図5.視覚刺激のシーケンスデザイン 上)Endless:一般的なシーケンス 下)T125:外部トリガーを用いたシーケンス



被験者
 被験者は,本実験に影響を及ぼすような眼科・神経疾患の病歴のない12 人の健常者(平均29 歳,範囲20−52 歳)に実験の説明と同意のもと協力していただいた.視力の弱い被験者は非金 属製のレンズにより視力を矯正し,計測中における頭部の動きを避けるためにヘッドコイルとク ッションを用いて被験者に負担にならない程度で補強を行った.各人1試行に対し1〜3回の計 測を行った.
結果
 上記の3試行3物質について,Tukey-Kramer’s HSD (honestly significant difference) test を行った後,閉眼安静時を元にDunnett’s multiple comparison test を行った結果,Cr とNAA に関しては3試行すべてにおいて有意差は見られなかった.また,Cho についても閉眼安静時と 連続刺激において有意差が見られなかった.しかし,外部トリガー法を用いた刺激は他の試行に 対してCho の約20%の減少がみられた(P<0.01).また,Cho/Cr,Cho/NAA,Cr/Cho,Cr/NAA, NAA/Cho,NAA/Cr といった各々の物質比も同様の結果に従った.



図6.各試行における3物質の平均と標準偏差(ErrorBar は標準偏差を示す).




コントラスト刺激とシーケンスデザイン

 予備実験の結果は,MRS によるヒト脳視覚野におけるコリンの秒単位の変化をとらえたもので あることを示唆し,一般的な手法ではとらえることが難しい代謝物質の変化をとらえたという外 部トリガー法の有効性について示す結果となった.この結果を踏まえ、コントラスト刺激と実験 のシーケンスデザインを決定した.短時間刺激開始125 ミリ秒後にCho の減少を観測することが できたことから,このシーケンスデザインを用い,刺激画像のコントラストを変化させることに した.予備実験同様に,空間周波数(サイズ)2 度(120 minutes of arc),4Hz(8 reversal / sec)のチェッカーを使用した.そして,掲示画像は計測時間などを考慮し100・25・6.25%の 3種類の刺激を用意した.図3-4に視覚刺激としたコントラストを変化させたチェッカーを示 す.コントラストは最小輝度と最大輝度の差を意味し,コントラストを下げる程輝度の差が少な くなり,チェッカーの境界が不明瞭になっていく.全体の輝度は変化させることなくチェッカー を作成し,輝度による影響がないようにした.



図7.視覚刺激となるコントラストを変化させたチェッカー 左)100% 中央)25% 右)6.25%



計測条件

 MRS はスピンエコーシングルボクセルスペクトロスコピー(SVS)シーケンスを用い,自動・ 手動の両方でCHESS パルスとガウシアンフィルターによるシミング・水抑制の調節を行った.パ ラメータはTE=135msec,TR=2000msec,FOV240mm で計測した.1次視覚野を中心にボクセルサイ ズを20×20×20mm(= 8000 mm3)とし,100 回の撮像を加算平均したものを1試行と設定し,健 常者4人に対し,閉眼安静状態(Rest)・コントラスト6.25%・25%・100%の4つの試行を計測し た.被験者は,本実験に影響を及ぼすような眼科・神経疾患の病歴のないことを確認し,実験の 説明と同意のもと協力していただいた.視力の弱い被験者は非金属製のレンズにより視力を矯正 し,コントラストの変化に関係なくチェッカーの境が正常に見える状態で計測した.各人1試行 に対し3回ずつの計測を行い,各試行計12 サンプルを得た.
 また,すべてのシーケンスはSTIM によってコントロールされ,実験時間は1シーケンスあた り約2分30 秒であった.統計解析はJMP(version6.0 for Windows, SAS institute Inc.) を用いた.

結果

 閉眼安静時・コントラスト6.25%・25%・100%の4試行における1次視覚野周辺のCho・Cr・NAA の3物質を表にしたものが図3-5 である.結果,Cr とNAA に関してはコントラストによる変化 は見られなかったが,Cho はコントラストが下がるにつれてRest に近づくような結果となり, 既存のfMRI の結果と類似した形状を見せた.予備実験とコントラスト刺激の実験によって変化 を見せた物質はCho のみで,神経活動との相関が観察された.



図8.Rest(閉眼安静状態)とTask(コントラスト刺激3種類)の結果(縦軸は物質量,Error Bar は標準偏差を示す)




考察と展望

 コントラスト刺激に対して1次・2次視覚野におけるCho がfMRI とMRS の相関性を示した結 果となった.また,光のない状態での閉眼と開眼による視覚野の物質の差は有意な差が見られな いことが確認できているので,NAA とCr のRest とコントラスト刺激に対する有意差は眼の開閉 には左右されていないことがわかる.このことにより,1次・2次視覚野においては,視覚情報 が入力されるかされないかでCho に有意差がでることが示唆された.
 2006 年に発表されたGardner らの研究で報告されている,1次・2次・3次視覚野の賦活は コントラストに比例し,4次視覚野はコントラストが悪くなるにつれても賦活が見られる結果を 考慮した上で本研究結果を考察すると,1次・2次・3次視覚野におけるCho はコントラストに 比例している.4次視覚野に関しては,ボクセルの設定を正確に行う必要があるが,MRS 計測に おいてもコントラストが悪くなるにつれてCho の上昇が見られるのではないかと考えることが できる.また,エネルギーという観点から,コントラストを悪くしていくにつれて Cr の増加が 期待されたが,有意な差が見られなかったが,これについても4次視覚野においての変化が期待 される.
 本研究では1次視覚野を中心にボクセルを設定し,1次・2次視覚野の計測を行ったが,各視 覚野の境界は不明瞭で視覚的に判断できないため,各対象のみに絞った計測は難しく,また,4 次視覚野にボクセルを置くことは解剖学上難しいため,ボクセルの位置・形状を変更することで 各部位を評価することが可能かをさらに検討する必要がある.
 計測に関しては,コントラストによる脳内代謝物質の変化をみるためには,1人1回のみの計 測で有意な差が得られるほど大きな差ではないため,1人に対する計測時間を考慮すると,計測 による誤差を軽減させるため1人に対し数回計測することで,統計的に誤差を無くしていくこと が好ましいと思われた.
 また,チェッカーの空間周波数を変化させることにより,より大きな差がみられるかどうかや, コントラスト順応に関する計測も,神経活動と代謝物質との相関性を考える上で重要な実験であ ることがわかった.
 現在までMRS 計測において一貫性が見られないのは,TR,TE,収集回数,ボクセルサイズ,水 や脂肪の抑制など様々なパラメータ設定が必要で,各試行において適切なパラメータの検証が必 要であることに起因していると思われる.このことは,予備実験としてのパラメータ検証の重要 性を示しており,さらに,新たなデータの評価方法が必要とされていることを示している.そこ でわれわれは,計測後のデータの後処理において,ノイズの多いデータを除去する方法について も検討し報告した(カーネル主成分分析を用いた核磁気共鳴スペクトロスコピーデータのノイズ の評価と除去法,2008).計測条件を一定にそろえることは難しいが,データの扱い方・評価方 法に一貫性を見いだすことができれば,MRS の臨床における使用や装置の普及へと繋がっていく ことが期待できる.
 未だ国内ではMRS を使用可能な施設が少ないが,新しい診断基準としての試行と代謝物質の変 化の関係が明らかになることで,現在問題となっている詐病や高次脳機能に関する新たな評価方 法としての解決手法としての可能性を十分に秘めている.しかし,それが達成されるには,さま ざまな部位による基礎研究が必要不可欠であり,臨床的な研究だけでなく健常者の脳機能の解明 が重要となる.そこには,刺激と撮像のタイミングを同期させる概念が非常に重要であり,詳細 な時間依存の計測が必要である.
 また,fMRI やMEG,NIRS などの他の脳機能測定手法と組み合わせて計測することで,よりMRS の価値を見いだすことができる可能性もあり,価格の低下も含め,MR 機器の画像診断以外の価 値がさらなる普及へとつながっていくと考えられる.
 外部トリガー法のMR 機器への適用は,これから解明されるべきさまざまな研究にたいして大 いに貢献していくことが期待できる.

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