研究課題名:地域資源ブランド化のプロセスと成功方策の解明

氏名:櫻井 美穂子

所属:政策・メディア研究科修士課程1年

 

 国内の人・モノ・金の経営資源は、東京や大阪などの大都市に集中している。戦後、公共事業により経済を循環させてきた地方では、近年の国の財政状況の影響を受け、疲弊の色が強くなってきている。中央―地方の従属関係から脱却し、地域の自立的な発展を可能にするための方策は何か。その一つのアプローチとして、「地域資源のブランド化」に着目した。

 

 国内の各地には、その地域にしかない資源が存在する。歴史・文化遺産や風景、その土地での人々の生活なども資源ととらえることができる。その中で、農産物に代表されるような、その土地で作り出す「商品」に焦点をあて、どのような資源展開の方策が有効であるか調査・検証しようと試みた。

 

 長崎県の五島列島にある新上五島町では、島に自生する椿からとれる椿油を、町の特産品として売り出そうとしている。しかし現状、生産・販売にかける人手が不足していることと、「五島産椿油」の知名度が低いことなどから、在庫余剰の状態が続いている。

 20098月末~9月初めにかけて、また同10月末~11月初めの計2回、新上五島町を訪ね、椿油精製所の見学や町役場のご担当者、関連団体(新上五島町振興公社、つばきネット)の方々からお話を伺った。

 椿油の売り出しには町役場が熱心であるが、地元住民、地元の旅館・ホテルなどでは五島産椿油の存在は浸透していない。町を挙げて売り出すのであれば、外からの観光客の目に触れるような旅館・ホテルなどのアメニティで活用するべきであるし、住民の方々と一体になって展開していくのが効果的だと感じた。商品のパッケージについても、「ほしい」とそそられるようなデザインではないため、改良の余地があるのではないかと思った。

 次年度以降は、具体的な展開方策について検討したい。おなじ椿油を使った商品として全国的知名度が高く成功しているといえるのは「大島椿」で、この事例との比較も行いたいと考えている。