2009年度 森泰吉郎記念研究振興基金

 

「地域ブロック別孤立的高齢世帯の推計に関する研究」

政策・メディア研究科 修士課程

80726052 toshi@sfc.keio.ac.jp

長江 俊明

 

  近年、日本は、少子高齢化の道を歩んでいる。日本の人口はピークを迎え、自然減に転じた。しかし、高齢者に着目してみると、65歳以上の単独世帯は、1980年の88万世帯に対して2005年では386万世帯、高齢夫婦世帯は、1980年の103万世帯に対して2005年では449万世帯と双方ともに4.4倍に増加した。これは、高齢人口よりも増加率が高く、小規模世帯の増加が顕著となっていることを表している。今後は、この小規模な高齢世帯が増加する可能性が高まってきていると予測でき、どうなっていくかが重要であると考えられる。

 本研究は、高齢者が世帯主の世帯の中でも、子どもがいない世帯、もしくは、子どもはいるが、その時間が1時間以上と遠く、現在高齢者のみで形成されている単独・夫婦のみ世帯を「孤立的高齢世帯」と定義し、国勢調査データと住宅・土地統計調査データを用いて、2025年までの「孤立的高齢世帯」の推計を行った。

研究の目的は、「孤立的高齢世帯」が将来どの地域にどれだけ存在するのかを明らかにすることである。

研究の方法として、第1に、国勢調査データを用い、地域ブロック別家族類型別世帯推計を行い、第2に、地域ブロック別家族類型別住宅所有関係マトリクスの推計と第1の結果を用いて、住宅所有関係別世帯推計を行い、第3に住宅・土地統計調査データを用い、地域ブロック別の家族類型別住宅所有関係別子との距離別マトリクスの推計を行い、第4に第2と第3の結果を用いて、孤立的高齢世帯の推計を行った。

 

分析の結果、以下のことが明らかになった。

1)    家族類型別世帯推計の結果として、単独世帯は、若いコーホートほど世帯主率が上昇した。夫婦のみ世帯と親と子どもから成る世帯は、人口転換期世代がピークであった。その他の一般世帯は、若いコーホートほど低下した。その中でも、北海道ブロックと東北・新潟ブロックでは、上昇又は低下幅が大きかった。

2)    孤立的高齢世帯の推計結果として、2005年比で単独世帯では1.52倍、夫婦のみ世帯では1.11.6倍増加した。その中でも、北関東・山梨ブロックでは、その増加率が大きかった。また、人口転換期世代の世帯数がピークとなっていることがわかった。(図1

 

1 地域ブロック別孤立的高齢世帯の増加率(2005年比)

 

 森基金により、東北・新潟ブロックや中部ブロック、そして、南関東ブロックの特に千葉県の郊外において、データだけではなく、実際に、孤立的高齢世帯の現在の状況を見ることもできた。

本研究結果は、今後の高齢者介護の担い手がどのように変化し、それに対応する将来の介護サービス・労働力など、新たな政策の必要性に対し、基礎的知見を提供できることが期待される。