2009年度森泰吉郎記念研究振興基金「研究育成費」研究成果報告書

 

慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科

修士課程1年 代田七瀬

学籍番号80924777 ログイン名:shahd

 

 

■研究科題名■

「人間の絆」を引き出すための調査者変化に関する研究

 

 

■研究概要■

 50年後、世界の人口は100億人になると言われている。100億人の人が共に生きるために必要な「人間としての絆」とは何か。それを明らかにする方法はあるのだろうか。

 本研究では、「人間としての絆」とは何かを、イスラームの教えに求め、そこから導き出される内面的なつながりを根拠とする。全人類的な共同体を眼に見える形で構築する方法ではなく、つながりや絆の根拠を個人の生き方・倫理・努力に求める。そのような場合に、繋がりの内面的な根拠を育むことができるかどうかは個人に任されるが、その存在を明らかにする研究者としては、個人からどのように引き出すことができるのだろうか。特に、“日本人”は「人間としての絆」を持ち得ているのかを明らかにするための研究者の在り方、持っている枠組み、方法論はどのようなものだろうか。従来日本人を明らかにしようとしてきた学問の中で、特に普通の人たち(常民)にこだわった民俗学の枠組みを検討しながら、「人間の絆」を引き出す道を明らかにしたい。

 

 

■活動報告・成果■

1.文献講読

・民俗学に関する著作、研究論文の講読

 

・ライフヒストリー、聞き書き、インタビューとその方法論に関する著作、研究論文の講読

 

・外部の読書会及び勉強会への参加

 主に民俗学の専門的研究や民俗学者柳田國男の著作の講読を行ういくつかの会に、秋学期から定期手に参加させていただいた。ここでは、民俗学や著作内容に関する学びはもちろん、調査者や研究者に対する地域の人々の反応や意識を、多くの具体的事例(長野県飯田市遠山などをはじめとして)を通じで聞くことができた。

 

 

2.フィールドワーク

・奈良県川上村高原集落(112124日)

 フォーラムへの参加、フィールドワーク、聞き取り

 

・鳥取県鳥取市鹿野町(257日)

 フォーラムへの参加、フィールドワーク、聞き取り

 

・神奈川県相模原市小原(2月〜)

 フィールドワーク、聞き取り、参与観察として地域のイベントづくりへの参加

 

 

■今後の課題■

全体としてフィールドワークの日程がだいぶずれ込んでしまい、遅れている。今後、岩手県生出集落へのフィールドワークを4月から始める予定で、奈良県川上村高原集落、神奈川県小原へのフィールドワークは引き続き行っていく。その中で、もう少し個人の生き方、ライフヒストリーに着目していきたい。そこから、村や地域という一見“小さい”と思われているコミュニティで育まれてきた繋がりや人間性の中に、“日本人的”といわれるものを超えて行く部分の存在があるとすればそれは何なのかを明らかにしたい。言いかえれば、民俗学で言われてきた常民性を、現代的な文脈で解釈し直す作業と、日本人的常民性を超えるものを探す作業である。そのヒントとして(普遍的な部分が何かを照らし出す鏡として)、経典の宗教、特に個人のミクロなレベルでの生き方が文字化されているイスラームを軸に読み取っていく。また、もし可能であれば、海外に出た日本人を事例に、発展的な考察を行いたい。