森基金成果報告書

 

ブランドを容れるブランド

−消費者知識を基礎とした都心型商業集積施設のブランド構築における特殊性−

政策・メディア研究科修士2年

山岡史典

Fumisuke YAMAOKA

Mail: fumisuke.yamaoka@gmail.com

 

 

 本研究の目的は、2000年以降、都心の百貨店やショッピングセンター(SC)が増加したことによって引き起こされた商業集積施設市場のコモディティ化の現状を明らかにした上で、コモディティ化に陥らない手段として商業集積施設のブランド構築の特殊性を明らかにすることにある。

 

 本研究は「消費者知識を基礎としたブランド論」に立脚し、ブランド論の文献調査と消費者へのヒアリング調査により、“ブランドを容れるブランド”としての商業集積施設ブランドの特殊性・ブランド戦略の二重性、・文脈性、・特殊なブランド体系、の三点を明らかにした。本調査1では質問紙を用いた商業集積施設ブランドのコモディティ化要因、差別化要因の検証を行い、・百貨店がメタブランド化し、コモディティ化していること、・アウトレットモールは商業集積施設として特異な位置にあること、・ハイクラス向けの商業集積施設はブランド価値階層の「感覚価値」、「観念価値」が高く評価されていることがわかった。

 

本調査2では質問紙を用いた商業集積施設ブランドのテナントブランドへの影響分析を行い、・出店する商業集積施設によって大きなブランドイメージの変更は見られないが、・テナントブランドに対するいくつかのブランド・イメージ項目では商業集積施設によって違いが現れることがわかった。またそのテナントブランドが設定する価格帯と出店する商業集積施設による交互作用によって変化するブランド・イメージ項目も見られた。本調査3では商業集積施設ブランドと入居テナントブランドの関係分析を行い、・コモディティ化しているように見える百貨店においてストアブランディングは行われていること、・商業集積施設ブランドの新規参入においては「アウトソーシングのジレンマ」への対応から“強い”テナントブランドの拡張ブランドが導入される傾向にあり、それが当該商業集積施設の特徴となっていることがわかった。追加調査として解釈的アプローチを用いた商業集積施設ブランドの消費経験調査を行い、消費者の商業集積施設ブランドでの経験価値世界を調査した。

 

 これらの調査で得られた知見から、都心におけるコモディティ化に陥らない商業集積施設のブランド構築モデルを提案した。

 

ブランド戦略の二重性

 

文脈性

 

特殊なブランド体系