本研究では、楽譜の読み及び演奏における角回機能を調査するため、 近赤外線分光法(NIRS) を用いて読譜及びピアノ演奏時の脳機能計測実験を行った。 大脳皮質のヘモグロビン濃度変化から酸素使用を観察することで、下前頭回、縁上回、 角回の活動および読譜・演奏機能の解明を目的とした。
対象者は、鍵盤楽器のレッスン経験年数が10年程度の9名(内女性5名) 全員右利きで絶対音感を持たず、初見での演奏が可能であった。 対象者は、SFC倫理委員会で承認された実験参加の同意書にサインした者とした。 NIRSを用い両側の下前頭回と縁上回、角回(計30 チャンネル、左右各15チャンネル)を 測定領域とし、ヘモグロビン濃度変化を測定した。実験課題は6条件あり、1.読譜、 2.読譜(音あり)、3.初見演奏(消音)、4.初見演奏、5.暗譜、6.楽譜を見て演奏を課した。 右側角回(ch12)において、初見演奏において楽譜を見て演奏と比較して有意に酸素使用が、 初見演奏において読譜(音あり)と比較して有意に酸素使用が、初見演奏(消音)において楽譜を 見て演奏と比較して有意に酸素使用が確認された。
本研究では、楽譜の読み及び演奏における角回機能を解明するため、近赤外線分光法(NIRS) を用いて読譜及びピアノ演奏時の脳機能計測実験を行った。大脳皮質のヘモグロビン濃度変化から酸素使用を観察することで、下前頭回、縁上回、角回の活動および読譜機能の解明を目的とした。
本研究では近赤外線分光法(NIRS)を用いて初見演奏の脳機能実験計測を行った初めての研究である。従来の音楽認知の脳機能イメージング研究では、PETやfMRIを用いた手法が主流であった。しかし、PETやfMRIは拘束性が高いため音楽の演奏を課題とした実験には不向きであると考え、拘束性の低いNIRSを用いて実験を行った。また、PETやfMRIは時間分解能が低いため少し遅れた反応をとらえていることが懸念されてきた。そこで本研究では時間分解能が比較的高いNIRSを用いて40msごとにヘモグロビンデータを取得した。
対象者は、SFC倫理委員会で承認された実験参加の同意書にサインした者とした。脳機能計測には、近赤外線分光法(near-infrared spectroscopy:NIRS)を用いた。測定領域は、両側の角回と縁上回、下前頭回、聴覚連合野とした(計30 チャンネル、左右各15チャンネル)。実験課題は6条件あり、以下の6課題を対象者に課した。
初見演奏課題、初見演奏(消音)課題、楽譜を見て演奏課題、暗譜課題について、MIDI録音とビデオ撮影をもとに演奏の正答率を算出した。その結果、演奏課題の平均正答率は各被験者93%以上であった。93%以上の正答率は、一般的に高い正答率であるため、今回は5人の被験者の演奏能力は同質であるとし、NIRSデータの解析を行った。
各課題(6種類)10曲ずつ被験者9名分のデータを得て、課題時間(メトロノーム聴取時を含めない)の総変化量をDeoxy-Hb、Oxy-Hb、Total-Hb、それぞれ算出し、すべての課題の対比較をするため一元配置分散分析後、Tukey-kramerの多重比較を行った。演奏課題で正答率が低かった試行、体動のあった試行は除外して解析を行った。 また、Deoxy-HbとOxy-Hbともに有意差がなく、Total-Hbのみに有意差が確認されたチャンネルについては、Deoxy-Hb − Oxy-Hbを算出後に一元配置分散分析後、Tukey-kramerの多重比較を行った。Total-Hbは血流増減の指標で酸素使用を示さないため、このような解析方法を採択した。 本研究の総変化量の解析結果より、右側角回と両側下前頭回で酸素使用が確認された。
東京湾岸リハビリテーション病院との共同研究のため、打ち合わせを行った。
近年脳機能計測手法の研究が進み、人の”認知”の解明への脳科学の寄与に期待が高っている。 本研究室では特に近赤外光を用いた脳機能計測を用いて、主に“言語機能”、“音楽認知”、 をテーマに研究をしている。
脳機能イメージング研究の代表として、ポスター作成と説明員を担当した。