2010年度森泰吉郎記念研究振興基金「研究育成費」研究成果報告書
政策・メディア研究科 修士課程2年
加藤佑理
学籍番号:80824272
■研究題名
『中国の情報提供に関する研究
―スポークスマン制度の機能の考察―』
■研究概要
本論文の目的は、中国における新聞発言人制度の「初期段階」の次の段階を考察することにある。特に、外交における機能を規定する制度的要因として重視したのは、両岸三地の政府の新聞発言人制度の役割である。
第一章では、西欧諸国に1950年代から登場した「スポークスマン制度」と中国1980年代にから登場した「新聞発言人」の背景と概念を整理し、新聞発言人の定義を行う。第二章では、大陸中国における新聞発言人制度の「初期段階」としての役割、機能、成果を確認するため、国務院新聞弁公室、外交部新聞司および共産党内の新聞発言人制度を取り上げた。第三章では、台湾、香港、上海という事例を取り上げ、3つの地域の政府および党における同制度の在り方を比較検討した。また、大陸中央政府はそれぞれの地域政府に対口する国務院内の組織および新聞発言人を制度として有している。そこで両者の関係を考察した。そして、大陸中央政府が目標とする同制度の在り方と機能、つまり最終的な制度的目標を考察した。
■修士論文構成
序章
第一節 問題の所在
第二節 目的
第三節 論文構成
第一章 スポークスマンと新聞発言人
第一節 スポークスマンの登場
第二節 中国における新聞発言人の歴史
(1)記者会見の登場:中華民国初期
(2)制度の確立:中ソ対立から宥和
(3)国務院新聞弁公室の設置と3レベル構想:90年代以降
第三節 スポークスマンと新聞発言人の定義
第二章 行政機関と党における新聞発言人
第一節 国務院新聞弁公室
(1)背景
(2)組織・体制・新聞発布会
第二節 外交部新聞司
(1)背景
(2)組織・体制・新聞発布会
(3)在外公館のスポークスマン
第三節 中国共産党
(1)対外宣伝弁公室/国務院新聞弁公室
(2)外交部核心小組、党組、党委員会
(3)党と行政機関の政治行政改革
第三章 大陸中央政府の新聞発言人制度の外交機能:制度の比較をつうじて
第一節 比較対象と比較方法
第二節 外部環境と背景
(1)中華民国・台湾:1950年政府発言人弁公室の設置〜
(2)上海:地方政府レベルでは全国初の試み
第三節 政府および党における組織・新聞発布会
(1)中華民国・台湾政府
(2)上海市政府
第四節 外交における大陸中央政府との関係
(1)中華民国・台湾:国務院台湾事務弁公室との関係
(2)上海:地方政府
第五節 中国の新聞発言人制度の外交機能と最終的な制度的目標
終章 結論
主要参考文献
※2010年度の研究活動及び研究成果は、基金創設者である森泰吉郎様と基金を運用して頂いた慶應義塾大学湘南キャンパス研究支援センター様のおかげです。誠にありがとうございました。
2011年2月28日