2010年度森泰吉郎記念研究振興基金研究成果報告書

地域商店街のイメージ分析広尾商店街を事例として

政策メディア研究科 修士2年 竹内明子

 

【研究要項】

 日本における地域商店街は、年々と衰退の一途を辿っている。商店街の存在は、生活者の暮らしだけでなく、地域社会の発展にも重要な役割を占めている。本研究の目的は、こうした商店街の現状を明らかにし、活性化に向けて分析を行う。本調査では、広尾商店街に焦点をあて、イメージ分析を用いたアンケート調査を実施し、来街者と商業者を比較検討した。最後に、来街者と商店街の新たな関係を構築するため、街頭放送を用いた情報発信について考察する。商店街のイメージを伝える一つの地域メディアとして、活性化に結びつくのか示唆したい。本研究を通して、筆者は来街者が期待する商業空間の構築について新たな提案を行った。

 

【研究目的と意義】

  本研究の目的は、地域商店街の実態を把握するため、来街者と商業者が抱く双方の商店街におけるイメージ(評価)を分析することで、衰退要因を明らかにすることである。そして今後の活性化に向けて、来街者と商店街の新たな関係を構築するため、地域メディアとしての街頭放送について考察する。

 これまでの商店街活性化に向けた研究では、ハード・ソフト事業に焦点をあてた各商店街の事例検証が多く行われてきた。また、地域活性化としての観光地化やまちづくりの対策について、マーケティングやPRの観点からの調査がある。しかしながら、商店街を一つの商業空間として捉えた、商店街イメージに基づく検証はまだない。商店街から独自の魅力となるイメージを発信し一貫したコンセプトで運営することができれば、他地域から差別化をはかり特色のある商店街づくりに寄与できると考える。

 本調査の対象事例である渋谷区広尾商店街は、多くの大使館・聖心女子大学・高級住宅地といった恵まれた立地条件があるにも関わらず疲弊している。この実態を明らかにするため、イメージとして可視化されたその地域に持つ史的事実をはじめ社会・文化的な要素からも考察した。そして、この広尾の街に合った来街者が期待する商業空間を提供することで、顧客集客に結びつくと考える。

 このイメージ形成には、地域内のコミュニケーションや地元意識によって生まれるものだ。商店街でのイメージを発信していくには、内部である商店街が各店舗と協力しイベントや企画を実施していかなければならない。そのためには、この広尾で経営しているという誇りや生活の営みから恊働というプラットホームをどのように確立していくのか課題である。

 そこで、この地域のアイデンティティを創出するために、地域メディアという観点から街頭放送について着目したい。広尾商店街に女子学生たちの新たな視点を取り入れ、今後の活性化につながるのか実際の放送結果を基に考察する。街頭放送による商店街の情報発信が、来街者によるコミュニケーションを促進し、各店舗の恊働という誘因に結びつのか試みる。

 

【研究概要】

 本研究では、定性調査と定量調査を行い、2つの分析アプローチによって商店街の衰退要因を明らかにし、改善策を提案するための結論を導出する。

 はじめに広尾商店街の実態を把握するため、文献調査とフィールドワークを行った。広尾商店街の現状について調査された研究がないために、商店街振興組合の関係者をはじめ店主、来街者へのインタビュー調査を実施しリサーチクエスチョンを設定した。

 仮説を検証していくにあたり分析手法としては、来街者と商業者を対象にアンケート調査とSD法(Semantic Differential method)を用いて、考察を行った。商店街のイメージを可視化する方法として、計15組の形容詞対を選定し3段階評価(非常に思う、やや思う、どちらでもない)で分析をした。さらに、インタビュー調査から広尾商店街の実態を検証していく。

 最後に、商店街での活動の一環として行われている街頭放送に着目し、分析結果を基に近隣の女子大学生と放送を行った。来街者が期待している商業空間を提供することで、地域商店街の発展を目指し可能性を探求する。