森基金 研究成果報告書
「連携型」中高一貫教育の効果と課題に関する研究
※「アーティスト支援ファンドの研究−個人投資家の実態−」から改題
慶應義塾大学大学院
政策・メディア研究科2年
出口真希子
研究内容:
本研究の目的は「連携型」中高一貫教育制度が過疎地域の高校教育改革にもたらす影響を明らかにすることである。1999年から導入された公立中高一貫教育は2009年までに166校設立されている。このうち半数は首都圏や地方都市に設置がなされ、これまで私立で既に導入されてきた「中等教育学校」や「併設型」という新校舎を設立しての導入がなされた。しかし一方であとの半分は過疎地域に設置がなされており、ほとんどは「連携型」という、既設の校舎のままで中高一貫を行うというものであった。
これまでの調査ではこの「連携型」が「中等教育学校」や「併設型」と同一の枠組みで評価されてきたが、そもそもこれら導入自治体の地域性を考慮する必要がある。その為、本研究ではこれまで私立型と同一の評価しかなされてこなかった「連携型」に焦点をあて、地域性(過疎、離島等)によって分類し、内部進学率(連携中学から連携高等学校へ進学者割合)を指標として効果検証を行った。
その結果、中でも「中山間型」(過疎地域、非離島)の地域では効果が低いことが明らかになった。本研究ではこの「中山間型」が効果(内部進学率上昇)を得る為の方法として@PTAの事業関与A中高教員の人的交流B自治体の支援が影響をもたらしていることを実証した。
活動内容:
(1)全国アンケート調査
@全国連携型中高一貫教育校高等学校向けアンケート
実施期間:11月11日送付・11月22日締切り
回収状況:75通中47通回収(回収率約62.7%)
A全国連携型中高一貫教育校中学校向けアンケート
実施期間:2010年12月11日送付・12月22日締切り
回収状況:165通中87通回収(回収率約52.7%)
(2)ヒアリング調査
@東京都芝商業高等学校へのヒアリング
実施日:2010年11月2日
ヒアリング対象:芝商業高等学校校長
A埼玉県小鹿野中学校・高等学校へのヒアリング
実施日:2010年11月16日
ヒアリング対象:小鹿野中学校校長・小鹿野中学校進路主任・小鹿野高等学校校長
B北海道上川中学・高等学校へのヒアリング
実施日:2010年9月8日〜9月10日
ヒアリング対象:上川中学校教頭・上川中学校教務主任・上川高等学校校長・
上川高等学校教務主任・上川町教育委員
(3)ケーススタディ
広島県芸北中学校・加計高等学校芸北分校へのインタビュー・アンケート調査
実施期間:2010年12月15日・12月16日
インタビュー対象:芸北中学校校長・芸北中学校教務主任・
芸北分校校長・芸北分校教務主任・芸北分校高校3年生徒16名
芸北町前教育長
アンケート対象:芸北中学校3年生徒・加計高等学校芸北分校1年生徒
(4)論文執筆
12月〜1月を中心に論文執筆を行い、提出した。
今後の活動予定:
現在文部科学省中央教育審議会では中高一貫教育に関する審議がなされている最中であり、本論文の加筆・修正を終えた時点で本論文を文部科学省中高一貫教育担当者へ提出を行う予定である。また、アンケート調査にご協力いただいた全国の連携型中高一貫教育校に対してもアンケート調査結果(論文の簡易版)を郵送予定である。