森基金:研究成果報告書
表象システムに基く感性評価モデル
政策・メディア研究科 修士二年
(Cyber informatics : Norvel Computing)
平塚史人
研究の概要:
本研究は人の感性評価のモデルをチャネル理論を用いて作ることを目標としたものである。チャネル理論は情報の流れを定式化する「å定性的情報理論」の最新の結果であり、日常の様々な現象をモデル化する可能性に期待が寄せられている。本研究はチャネル理論の応用研究に位置づけられる。
我々はデータマイニングに応用される「ラフ集合理論」という数学理論について、チャネル理論との間に次のような見解を見いだした。
(i)チャネル理論とラフ集合理論には、類似した概念や考え方が存在する
(ii)ラフ集合理論は、近年感性工学への応用が盛んである。
本研究では、これらの見解をもとに「チャネル理論の上で感性研究の土台を作る」事を目標と定めた.
すなわち,ラフ集合理論を参考にチャネル理論による感性のモデルを提案する事が,本研究の目的である.
ラフ集合理論とチャネル理論の比較:
本研究では、ラフ集合理論の枠組みがチャネル理論に埋め込まれることを示すことができた。ラフ集合理論の分析対象である「表形式データ」をチャネル理論の「分類」や「表象システム」に書き換えることによって両理論の概念を対応づけた。本研究では特に、ラフ集合理論の特徴的概念である「近似による決定ルール」をチャネル理論の概念に対応づけた。情報表 I における「下近似ルール Γ⇒Δ 」はチャネル理論における分類 Ci 上の「健全で完全な制約 Γ|-Δ 」と対応し、上近似ルール「下近似ルール Γ⇒Δ 」は分類 Ci 上の「少なくとも一つのトークンにサポートされる制約 Γ|-Δ 」と対応することが示せた。また本研究では、決定表 I に対してある特殊な表象システムR*を提案した。この時、決定表上の近似ルールはR*上の「表示関係」と対応していることが示せた。また近似ルールに基づく推論は、R*上の表象関係と対応している事を示せた。これらによって「表形式データに対しラフ集合理論を用いて」行われてきた事が、「分類(あるいは表象システム)上でチャネル理論を用いて」行える事が示す事ができた。
表象システムによる感性評価モデル:
ラフ集合理論を用いた感性研究の枠組みをチャネル理論に拡張し、
表象システムR*を感性評価モデルとして提案した。
これにより「認知-感性表$I$にラフ集合理論を用いて」行われてきた操作や考察が
「表象システムR*にチャネル理論を用いて」行う事ができる様になった.
新たなモデルRI*の優位性は,主に次の様に考察することができた.
・ ラフ集合理論にはない概念を用いる事ができる.
・ 認知分類,感性分類をそれぞれ独立した論理構造として扱える.
・ [認知⇒感性],[感性⇒感性]の 因果関係をそれぞれ区別して扱える.
学会活動:
研究内容について論文を次の論文誌に投稿し、査読の後採録が決定した.
情報処理学会論文誌:数理モデル化と応用
感性評価の表象システムによるモデル化
同時に,同題目の研究発表を次の学会で行った.
第80回 情報処理学会 数理モデル化と問題解決 研究会
北海道大学 2010年9月29日
また,技術研究報告書を次の雑誌に投稿している.
電子情報通信学会技術研究報告. MI, 医用画像
チャネル理論から見たラフ集合理論
同時に,同題目の研究発表を次の学会で行った.
情報処理学会 -数理モデル化と問題解決 研究会-
中部大学 2010年5月14日