2010年森泰吉郎記念研究振興基金研究成果報告書

 

慶應義塾大学 政策・メディア研究科 修士課程1年

佐藤未悠

政策形成とソーシャルイノベーション(PS

 

研究課題名

家庭的養護ニーズの変容と政策対応に関する研究

 

研究テーマ

日本における「家族」とはなにか、「家族」を成立させているものはなにか、ということを、里親家庭、養子縁組家庭を中心とする血縁関係のない家族を切り口として、先進的事例の研究、アンケートやインタビュー、文献研究を通し、明らかにいくことを目的とする。また、この研究から、現代の日本のあらゆる「家族」を支えるための社会のしくみが明らかにできるのではないかと期待している。

 

研究の意義

里親家庭や養子縁組家庭といった血縁関係のない家族は、日本では欧米諸国のように一般的ではないが故に理解が得られずに、地域社会から孤立してしまう場合が多い。これまで行ってきたフィールドワークによる里親家庭や養子縁組家庭の人々へのインタビューから、血縁関係のない家族が生活していく中で差別を受けた経験や、他人にどこまで事実を打ち明けて良いのかという迷いなどがあることがわかり、現在の日本社会が血縁関係のない家族にとって決して住みやすい社会であるとは言えないと感じてきた。本研究が日本社会の血縁関係のない家族への理解を深める一助となることで、こういった家庭がより住みやすい社会を実現できるのではないかと期待している。

 

活動内容

n  NPO法人「環の会」の西日本シンポジウム参加−724日に愛知県名古屋で開かれたNPO法人「環の会」の西日本シンポジウムに参加。シンポジウムは、およその4時間にわたり行われ、今回は『子どもの思い、子どもの声を聞こう』〜子どもから見たテリング〜』をテーマに、子どもを迎える養親の立場ではなく、迎えられる養子の立場からの意見を聞くことを目的としていた。

n  専門里親研修参加−820日から22日の間、広尾にて行われた専門里親になるための養育里親を対象とした研修に関係者として参加。

n  SOS子どもの村福岡」、こども総合相談センター「えがお館」訪問―8月25日から3日間福岡県にて、昨年4月に誕生した、『SOS子どもの村福岡』への訪問し、村内の見学、関係者の方へのインタビュー。福岡県、こども総合相談センター「えがお館」訪問。

n  第56回 全国里親大会(奈良県大会)参加―11月7日に奈良県天理市で開催された全国里親大会に参加。

n  児童相談所にてボランティア活動―平均して週一回、里親委託率(社会的養護が必要な児童のうち、里親に委託されている割合)が全国平均に比べ高い川崎市の児童相談所にてボランティアとして活動中。

 

成果のまとめ

大学学部時代には文献を中心に研究をしていたが、大学院に進学し、実際に現場に足を運ぶようになった。その結果、現場を見て、家庭的養護に携わる人々の話を直接聞くことの重要性を認識した。これからも、よりよい社会の実現に貢献できるよう、研究に励んでいきたい。

 

今後の予定

今後もボランティア活動を続けながら、これまでのフィールドワークを通して知り合った里親家庭や養子縁組家庭の方への個別のインタビューを行っていきたい。また、フィールドに通いつつ、文献の研究を進めていきたい。