研究課題名住民ニーズにマッチした自治体の情報発信モデル構築

氏名:櫻井 美穂子

所属:政策・メディア研究科(修士課程)

 

 

この研究は、地方自治体が対外情報発信をする際の情報統合のあり方について、組織内コミュニケーションの違いに着目して分析したものである。情報統合とは、自治体組織内に散らばる関連情報が一つの場所(物理的でもネットワーク上でも)に集約されている状態を指す。

 自治体の情報発信は、受け手である市民からすると供給者論理で不親切であるとの問題意識から、奈良県橿原市と埼玉県鶴ヶ島市の広報課を対象とした予備調査を行った。

 予備調査から、自治体組織内の担当課間のコミュニケーションが行われていないために、情報が組織構造に沿った形で発信されてしまうのではないか――との示唆を得た。

 その解決策として、文献調査と予備調査から、「外部組織と連携して情報発信を行うことが、組織内コミュニケーションを円滑にするのではないか」とのリサーチ・クエスチョンを設定した。自治体の広報体制を@広報課、A個別(政策:本研究では子育て)担当課、B個別担当課と外部との連携の3点に整理し、自治体の広報体制と組織内コミュニケーションの因果関係を明らかにするため、神奈川県藤沢市、兵庫県西宮市、広島県広島市、東京都葛飾区、東京都台東区の5つの自治体の広報課および子育て支援業務を行う課など、計10の課を対象とした事例調査を行った。

 調査の結果、情報発信をどの課が行うかが組織内コミュニケーションの円滑化に大きな影響を持っていることが明らかになった。組織内コミュニケーションの主体と質の違いから、広報課による情報発信時は、組織内情報統合の形態はヒエラルキー型に、個別担当課による情報発信時には、ネットワーク型となる傾向があることが分かった。この形態の違いが、市民ニーズの対応への柔軟度に影響を及ぼすと推測できる。

外部組織との連携は予想に反して、必ずしも組織内コミュニケーション円滑化に寄与するわけではないが、組織内のルールに縛られず情報を市民の目線で編集できる点と、発信情報の幅を広げる点で意義があることが分かった。

 さらに、発信媒体の種類が組織内情報統合の形態に影響を与えていることが分かった。

 

 また、研究成果に関するヒアリングのため、福井市を訪問した。