PS ネットワークコミュニティ 所属
政策・メディア研究科修士課程2年 本間 裕二
学籍番号:80926105
ログイン名:yhonma
【申請時テーマ】
コミュニティ・ファンドによる地域資産マネジメント
※申請時は、コミュニティファンドに焦点を当てて地域資産マネジメントについての
研究計画書を提出した。しかし、その後地域社会において、「大前提であるコミュニティの
役割についてを調査する必要性を認識したこと」及び「私が深く調査が可能な事例があること」
の二点から以下のテーマへと変更し調査を進めることとなった。
【変更後テーマ】
地域社会における伝統的祝祭[1]コミュニティ[2]の役割
〜千葉県館山市北条地区 六軒町を事例に〜
【要旨】
本研究の目的は、六軒町祭コミュニティを通して、当コミュニティの構造をみることにより、
地域における「伝統的祝祭コミュニティの埋め込まれた役割」を明らかにすることである。
上記の目的を果たすために、中世より1000年以上続く千葉県館山市の伝統的祝祭「やわたんまち[3]」に付け祭として参加する六軒町自体の詳細な記述も行うものとする。
また、本研究は、地域における伝統的祝祭コミュニティの役割に関する探索的な研究である。以下、六軒町の祭コミュニティとは何なのか。
また、他の伝統的祭コミュニティとの違いは何であるのか、をみていくことにする。
【期待される結論】
地域における祭コミュニティの埋め込まれた役割を明らかにすること
【本研究の意義】
・
狭義:六軒町祭コミュニティの実態解明とその役割
・
広義: 伝統的祝祭コミュニティの一事例
【先行研究】
祭は大きく構造論的アプローチ(祭り=儀礼的なもの自身の構成やそれを一部として含む社会の構造をみる)と記号論・象徴論的アプローチ
(祭り=儀礼的事実の中に見られる象徴や法則と適用される文脈との関係を検討する)の二つに分かれ、この二つの組み合わせの研究も多く行われている。
参加者に焦点を絞った研究としては、祭参加者の集団について神事の変化とともに観察した研究(原田,1976)がある。また、機能面では地域統合機能の研究
(鈴木榮太郎,1940)があり、一部の住民に詳細なライフストーリーを行った研究(渋谷2000)がある。また、祇園祭の成り立ちから現在まで詳細な記述をした研究がある(米山,1974)。
また、伝統的祝祭の疑似ヒエラルキーとシンボル効果についての研究(松平,1983)や関東における伝統的祝祭の組織構造における研究(松平,1990)がある。
【分析手法】
1 六軒町の祭コミュニティの組織構造を明らかにする
2 一般的な伝統的祭コミュニティと比較しユニークなポイントを洗い出す。
3 ユニークなポイントの原因や背景を調査する
【調査手法】
1 インタビュー調査と調査項目
・各町内会長(8人):町内会組織について、町内会と奉賛会、祭との関係について
・鶴ヶ谷八幡宮宮司 酒井氏:安房国司祭の歴史について
・奉賛会役員
・六軒町祭礼委員会会員 :参加者として想う祭の役割について
2
資料調査
・データ集め
館山市役所、鶴ヶ谷八幡宮、各町内会
3
一般的な伝統的祭の組織構造の分析
・府中例大祭の祭コミュニティ
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<調査報告>
【実施内容】
・町内会長インタビュー ※( )内は連合町内会での役職
第1町内会 会長 (監査)2010/12/3,12/4
第2町内会 会長 (庶務)2010/12/16
第3町内会 会長 �i会計)2010/12/20
第4町内会 会長 (会長) 現在、北条地区町内会連絡協議会会長 2010/12/11
第5町内会 会長 (前副会長)2010/12/18
第6町内会 会長 (新)2010/12/19
第7町内会 会長 (副会長) 社協六軒町支部 支部長 2010/12/11
北条海岸町内会 会長 2010/12/16
・館山市役所インタビュー
館山市経済観光部商工観光課 副課長・商工係事務取扱 2010/12/13
館山市市長公室 社会安全課 2010/12/13
・FW
年末神社餅つき(諏訪神社奉賛会主催)、元日太鼓、若衆集まり2010/12/31
【総括】
六軒町祝祭コミュニティの核をなす、奉賛会役員に携わっている町内会長8人へのインタビュー調査と町内会資料収集及び、
館山市役所社会安全課へのインタビュー調査を実施した。特に、六軒町諏訪神社を管理し、祭礼の実質的な実行本部となりう
る六軒町諏訪神社奉賛会(以下、奉賛会)について、そこに参加する町内会長の視点から組織構造を調査した。
組織構造として明らかになった点は
1町内会長=奉賛会役員
2各町内会は独立性をもつこと
3町内会費の一部が奉賛会費として徴収されていること
4また、徴収されている事実を住民は知らないこと、である。
また、本事例において特徴的であると考えられた奉賛会は、調査結果Bで見られるとおり、伝統的な祝祭における一事例にすぎず、
1の特徴と掲げる町内会長と奉賛会との関係性はユニークではないことがわかった。代わりに、地域経済が昇り調子であり、商店も賑
わっていた時代と同じ構造を引きずっていることに対して不満を抱く町内会長が散見され、今正に、奉賛会の構造転換が求められて
いる状況であることがわかった。
【参考文献・WEB】
・鶴谷八幡宮(2001) 「第二部やわたんまち」
・菊池昭典(2004)「ヒトを呼ぶ市民の祭運営術」
・森田三郎(1990)「祭の文化人類学」
・金子・松岡・下河(1998)「ボランタリー経済の誕生」
・滋賀県大溝祭HP http://www.nextftp.com/oomizo-0504/1.donna.html
・府中例大祭 HP
http://www.city.fuchu.tokyo.jp/tanoshimu/kanko/kankoibento/ookunitama/index.html
[1] 「伝統」とは、古くは古代からはじまり、主として近世以降の都市社会においてつくりあげられた制度・信仰・習俗などのしきたりを意味しており、「伝統的祝祭」を 松原(1990)の言う“祝祭の基盤に伝統を据え、核となる伝統保持の社会集団を持って運用されている祝祭”と定義する。尚、祝祭そのものの性格が、基本的に伝統の基盤の上にたち、核になる組織が明確なものをこの定義に含めるものとする。また、祭には一定の定義が無いが、本研究においては森田(1990)より祭の一般的な基礎として「・周期性(periodicity)」、「・共同体関与(community involvement)」、「・聖性/日常からの離脱(holiness/divergence from normality)」を挙げる。
[2] コミュニティを「一定の地域に�緒Zし、共属感情を持つ人々の集団」(広辞苑)と定義し、「祭コミュニティ」を“地区の祭参加者で構成される集団”をさすものとする。
[3]名称:安房国司祭、鶴谷八幡宮例大祭(通称:やわたんまち)
鶴谷八幡宮で毎年9月(敬老の日前の土・日)に行われる。 国司祭の伝統を引き継ぎ1000年以上行われている祭で、千葉県の無形民俗文化財に指定されている。南房総を代表する祭である。 初日には安房国南部10社の神輿が入り、翌日に市内5町から山車・お船が出る。夕刻には10社の神輿の還御、及び八幡宮神輿の御浜出が催行される。