2010年度 森基金研究報告
政策・メディア研究科 修士課程 中村圭佐
現代音楽ネットワーク分析からのネット型趣向論の研究
研究課題
主要な情報源がマスメディアからインターネットへ遷移したことにより趣向の形態が従来型の定量調査では掴み取り辛くなっている。
そこで本研究では、消費者の動向をネットワーク図に落とし込むことで直感的な解釈・分析が可能となるような手法の確立を目指す。
レポートの内容
本レポートは次の2つから成る。
- ソーシャル・ネットワーク・サービス上の音楽情報の分析
- Twitterにおける情報伝播の分析
ソーシャル・ネットワーク・サービス上の音楽調査の分析
概要
インターネットから取得されるネットユーザーがどのような音楽を聴いているかというデータ(約25000人分)を「柔らかい構造化分析」(小野田哲弥2007)を用いて解析する。
<柔らかい構造化分析の手順>
@約25000人について、その人が良く聴いているアーティストランキングの上位50を調査。
Aデータクリーニングを実施。有効アーティストとして対象者の1%にあたる250人のランキングに入っていた615アーティストを抽出。
B有効アーティストについてレイヤー分割を行い、系1〜8までを作成。
C相関関係に基づきツリー図を作成。これによりリスナーの嗜好の分岐を視覚化する。
*ツリー図
そして、この「柔らかい構造化分析」によって導き出されたツリー図について詳細検証を行う。
<ツリー図詳細検証の手順>
@レイヤー3,4のみを対象としたネットワーク図を作成し、各系を比較分析する。(※上位レイヤーを含めるとネットワークが複雑化する為)
Aつながりを厳しくしていくことでネットワークの強さと核を求め、各系を比較分析する。
*レイヤー3,4のみを対象としたネットワーク図
*ネットワークの強さと核
成果
アーティスト間のネットワークは各系によって複雑性が大きく異なることを可視化することができた。
これは即ち、ユーザーの音楽との付き合い方の違いそのものを表していると言うことができる。
Twitterにおける情報伝播の分析
概要
Twitter上で流行現象と各ユーザーの趣向の関係性を、独自に開発したTwitter関連サービス『Dowitter』のデータを使用し解析する。
*『Dowitter』とは、ユーザーがフォローしている有名人の傾向を分析し、結果をハッシュタグ(#Dowitter)つきのツイートで共有できるサービスである。
*利用ユーザー数
解析の対象データは以下の通り。
データ名 |
数量 |
期間 |
ユニークユーザーの数 |
7960人 |
2010年11月18日〜2010年11月23日
|
結果をつぶやいた人数 |
1895人 |
Dowitter利用者Aについて、Aがフォローしているtwitterユーザーの中で直前に「#Dowitter」を含むツイートをしたユーザー最大2人がAに影響を与えたとして有効グラフを作成し、Dowitterのユーザーネットワークが拡大していく過程を可視化する。
*ユーザーネットワーク
このユーザーネットワークについて、フォロー傾向からわかるユーザーの趣向を重ね合わせる。
結果、今回のユーザー数の伸びは「はてな」に関係する有名人を多くフォローしているユーザーから、「ニコニコ動画」に関係する有名人を多くフォローしているユーザーへと拡散したことによることが可視化された。
*中央が赤は「はてなの有名人を多くフォローしているユーザーを赤くしたもの」
周辺が赤は「ニコニコ動画の有名人を多くフォローしているユーザーを赤くしたもの」
成果
ユーザーの趣向に注目することでtwitterにおける情報伝播にパターンが存在する可能性を示すことができた。
今後の課題
さらに多くの事例についてネットワーク図への落とし込みを試みることでネットワークの特徴を精査し、その特徴によってどのような可視化の手段が有効であるのかを纏めたい。