震災復興プラットフォームに見る集合知形成メカニズム

政策・メディア研究科 修士課程2年 清水たくみ

学籍番号:81024814

メールアドレス:takumis@sfc.keio.ac.jp



研究概要

 社会における問題解決を志向する上で、個人の力を超えた協働の重要性は古くから指摘されている。特に近年では、インターネットを初めとしたICTプラットフォームの発展により、組織の枠を超えた不特定多数の人々による協働が注目されている。それらは集合知の活用とも呼称され、通常の企業活動などに加え、広範囲かつ柔軟な協働が必要とされた東日本大震災の復興局面においても大きな成果を発揮した。そのような集合知活用の効果を強調する研究が蓄積される一方、その基盤となるプラットフォームの具体的設計指針に関する実証的考察は、未だ十分な蓄積がなされていない。

 そこで本研究では、東日本大震災の復興情報を扱った集合知プラットフォームを分析対象とし、「不特定多数の参加を促進するプラットフォームの設計指針および設計者の役割」に関する知見抽出を行った。具体的には、Person Finder(安否確認サービス)、sinsai.info(復興情報マップ)、Toksy(支援物資マッチングシステム)の3事例を対象に、半構造化インタビューを中心としたケース・スタディによる仮説構築型研究を実施した。本調査結果から、各プラットフォームは情報生産過程を「収集/入力/検証/発信/二次利用」という五段階にタスクをモジュール化し、不特定多数の参加を促進していることを明らかにした。モジュール化によって、ユーザーの限られた時間/スキルでも貢献可能となる小規模・低難度のタスクが整備され、五つのモジュールそれぞれに対する参加可能性が開かれた。加えて、プラットフォーム上で扱う情報の「複雑性」と「流通方向性」に応じて、「採用可能なモジュール構造」および「設計者とユーザーの役割分業」が変化することを指摘した。さらに、モジュール設計によってプラットフォームが実現された背景に「オープン」「ソーシャル」「アジャイル」の設計思想が根付いている点を指摘し、集合知活用とモジュール設計の親和性に関しても議論の俎上にのせた。

 本研究は震災復興における集合知プラットフォームの研究であるが、展開された考察は効果的な協働をいかに設計するかという伝統的な問題設定の一部といえる。今後さらなる拡大が予想される新たな協働形態/不特定多数の協働を支援するプラットフォームの研究発展に向けて、本研究が一つの土台となることを企図する。


キーワード

プラットフォーム、モジュール化、集合知、協働、震災復興



学外における成果発表

Takumi Shimizu, “Designing Collaboration Platform with Modularity and Openness: Analysis of Earthquake Disaster Reconstruction Platform after 3.11”, The 17th International Business Information Management Conference, Italy, November 2011.

清水たくみ, 「震災復興にみる不特定多数の協働を支援するプラットフォームの設計」, 『経営情報学会 2011年秋季全国研究発表大会』, 愛媛, 2011年10月.