2011年度 森泰吉郎記念研究振興基金 研究成果報告書

研究課題名:酢酸イオン添加による緑藻の貯蔵脂質組成の比較解析

政策・メディア研究科 修士課程1年 先端生命科学(BI)

新川はるか(moruka@sfc.keio.ac.jp)


【研究成果】

本研究は国際学術論文誌に投稿予定のため,詳細については省略させていただきます

緑藻のモデル生物であるChlamydomonas reinhardtii は窒素栄養欠乏に伴いバイオ燃料の原料として期待されているトリアシルグリセロール (TAG) を蓄積することから,藻類の脂質代謝研究においてよく利用される.この緑藻は一般的に酢酸イオンを含む培地で培養され,酢酸イオンを炭素源の一つとして脂質を合成する.そのため酢酸イオン添加条件 (混合栄養条件) の脂質代謝はよく研究されているが,独立栄養条件でのTAG 合成の制御機構はあまり研究されていない.本研究では培地中の窒素栄養・酢酸イオンの有無,そして光量の変化 に応じたC. reinhardtii の脂質組成の変化を液体クロマトグラフィー−飛行時間型質量分析計を用いて調査した.その結果,窒素栄養欠乏条件において 光量に関わらず混合栄養条件の方が TAG 蓄積量が多かった.しかし, 混合栄養条件においては光量の増加に伴って TAG が減少し,独立栄養条件においては光量の増加に伴って TAG が増加した. TAG の分子種ごとの変化では,脂肪酸鎖の不飽和度が低い分子種の量は,混合栄養条件下の TAG の方が独立条件の TAGよりも多いが,不飽和度が高い分子種ではその差が縮小した.今回の結果から培地中の有機物の有無によって光量の変化に伴う TAG 蓄積応答が変化すること,酢酸イオンの有無による TAG 蓄積量の差は不飽和度の低い TAGの増減によって左右されるということが示唆された.


【研究発表】

ポスター発表:新川はるか,仲田崇志,伊藤卓朗,曽我朋義,冨田勝.独立栄養条件と混合栄養条件におけるChlamydomonas reinhardtii の脂質組成の変化.日本植物学会第75回大会・東京都