2011年度 森泰吉郎記念研究振興基金「研究育成費」研究成果報告書

研究課題名:「DP を用いた設計手法の開発と建築環境指数の検証

水嶋輝元

慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 修士課程1年 

学籍番号:81125282 ログイン名:terumoto1

1.研究概要

本研究では、2008 年度から松原研究室を中心に毎年行っているコンゴ民主共和国での小学校校舎建設プロジェクトにおいてこのDP 手法を適用し、デジタル上及び竣工後の空間の環境アセスメントを行う。 DP による設計案のデジタル環境シュミレーションと、施工後の室内環境の実測の差を確かめ、この手法の有効性を検証する。

2.活動報告

 本年度は、研究をより深化させることを目標にしながらも、研究計画書の改定や微調整を必要に応じて行い、2011年夏には約2週間のフィールド調査をコンゴ民主共和国において実施した。


具体的な活動スケジュールは以下の通りであった。

20118月20日-94日 

コンゴ民主共和国での小学校校舎建設プロジェクトの設計施工を行う







3.研究成果概要

(1)研究室で設計した小学校を建設する、屋内・屋外の環境指数を実測する。

    場所:コンゴ民主共和国

期間:20118月〜9月

調査目的:サハラ以南のアフリカにおける、パッシブな建築環境をつくる為の空間環境ガイドラインづくり

調査手法:建築環境性能に大きく影響する気象データがコンゴ民主共和国の郊外地には無いので、小学校建設後に屋内・屋外の環境指数を実測をして、施工前に想定していた値との差異を確かめる

(2)SFCに測定データを持ち帰り、実測とコンピューターシュミレーション上の数値との差異を確かめる。

(3)調査結果のまとめから、考察を加える。

4.今後の展望


 実験の結果では、コンゴ民主共和国の気候が日本で得られる気象データと一致している事がわかった。しかし、それは空港付近で計測されたマクロな範囲の情報であり、実際は施工現場付近の風向きや天候などが室内環境に大きく影響していることがわかった。

具体的には雨季の風向きは気象データと異なり、木造建物躯体の外壁の腐食が進行していた。また、現地では砂埃が多く、建物に開口を設けても室内に砂が入る事等から窓を長時間解放できないという事実も判明した。

結論として、日射や室内気温の推移等のマクロな環境情報はある程度シュミレーションできるが、現地には季節ごとに変わる風向きや地域のミクロ的な特性等があるため、コンピューターシュミレーションの結果がそのまま反映され無いことがわかった。

この結果を受けて、コンピューターシュミレーションは現地での地域環境を調査した後に利用する事によってのみ、建築環境指数の向上に繋がる新たな可能性を期待できるという知見を得ることが出来た。