コンゴ民主共和国における建築の現地仕様の適正化
―首都キンシャサ近郊の学校を対象として―
(旧題:先進国から後発開発途上国への建築技術移転に関する研究 −コンゴ民主共和国での小学校建設協力において−)

政策・メディア研究科 修士過程2年 金子絵美 
松原弘典研究室所属 学籍番号8092590

 

修士論文概要

初等教育の普遍化を達成するための学校建設が急務である中、コンゴ民主共和国では地元住民や国際機関、NGOなど様々な担い手により学校建設が行われている。しかし、これまで建設主体間で共有出来る明文化された学校建築の品質基準は存在しなく、各自バラバラの仕様を採用していた。こうした背景から、2011年にコンゴ政府は今後建設を行う学校が満たすべき最低限の目標として、学校建築の現地仕様を提示した。そこで本研究では、既存学校の仕様とコンゴ政府の現地仕様の比較を通じて、学校整備の状況と政府の現地仕様の立ち位置を明らかにすると共に、現地の実状に合わせて仕様を適正化するための提言を行うことを目的としている。

本修士論文は序論(第1章)、本論4章(第2章、3章、4章、5章)、結論(第6章)から成る。序論では、コンゴ民主共和国における学校建築整備の状況と現地仕様の提示が行われた背景を概観する。また、先行研究として途上国における学校建築の望ましい仕様に関する議論の変遷を追い、本研究の位置付けを明確にする。

続く本論では、政府の現地仕様を首都キンシャサ近郊の5つの学校事例の調査結果との比較によって、「建築計画」「建築環境」「建築構法」の3つの視点から分析を行う。分析ではまず事例間の共通要素と相違の幅の抽出し、調査結果の把握を行う。次に、抽出した要素と政府の現地仕様を比較し適合・不適合を判断する。そして最後に、現地調査から得られた背景をもとに、比較結果の理由と政府の現地仕様が現地の実状に即しているかを考察する。分析からは、「広がり」「衛生設備」「採光」に関する仕様で品質の底上げが必要な学校があり、「慣習が品質向上のボトルネックになり得る」こと、そして政府の現地仕様は「道路・水インフラ整備と学校整備を切り離して考えている」、「傾斜、日照りといった環境条件を避けることで一定品質を確保しようとしている」という傾向があることを見出した。

結論では、分析結果を統合し、既存教室の品質向上への視座の提示と、コンゴ民主共和国における学校建築の現地仕様を適正化するための3つの提言「インフラ整備と学校整備の連携」「環境適応型の仕様の拡充」「慣習の明文化」を行う。

キーワード: 1.建築の現地仕様 2.学校建築 3.コンゴ民主共和国 4.初等教育の普遍化 5.品質基準