2011年度森基金 研究成果報告書

雑談情報解析のための携帯端末によるユーザグルーピング

慶應義塾大学
政策・メディア研究科
前期博士課程2年
81024489, karasu
唐津豊

研究概要

センサデバイスの高機能化によって,実世界上の出来事や人々の周囲の状況に関するコンテキストをセンサ情報に基づいて解析する技術の研究開発が盛んに行われている.コンテキストの中でも,人々がFace-to-Face で行う会話に関するコンテキストはコンテキストアウェアシステムの分野において様々なサービスの実現を促進させることが期待される.

Face-to-Face の会話において,人々が生活する過程で自然に発生する懇談や相談といった会話は人々の日常生活内における会話の大部分を占める.このような会話についてコンテキスト抽出を行う場合,人々の日常生活内で突発的に発生する会話を検知し,その会話の参加者を特定する必要がある.これに関して,大きく2 つの課題を解決しながらコンテキスト解析を行う必要がある.

まず,これらの会話は発生場所や発生時間を事前に予測することができないため,環境に敷設されたセンサネットワークのような情報収集設備による基礎データの収集は効果が期待できない.そのため,ユーザがセンシング端末を携帯し,周囲の情報に関して常時センシングを行う必要がある.また,日常生活内で自然発生する会話は,会話を行なっている人々のすぐ近傍に会話への非参加者が存在する場合が度々発生する.この近傍の非参加者を会話の参加者と誤検知しないように会話参加者を特定しなくてはならない.そのため,位置情報や人々の相互近接情報といった空間的な会話参加者検知は効果が期待できない.

本論文では自然発生する会話のコンテキスト解析のため,“誰が誰の発言に何度応答したか” という会話応答頻度に基づいて会話参加者の特定を行う機構Milvus を提案する.Milvus はこれらの会話が参加者間で双方的に発話と応答を繰り返すことに着目し,頻繁に会話応答を行う人々を互いに同じ会話へ参加していると判断して,会話毎に参加者のグルーピングを行う.これにより,“いつ,どこで,誰と会話を行ったか” という会話コンテキストの抽出が可能となる.Milvus はセンシング端末としてスマートフォンを想定することで,ユーザが日常生活には本来余分なセンシング端末を携帯する負担の軽減を図る.また,会話応答頻度に基づいた抽出処理を行うことで,会話参加者に近傍する非参加者を区別することに効果が期待できる.

本研究において,Milvus の会話参加者グルーピングの精度評価実験を実施したところ,会話グループが同時並行的に発生するセミパブリックな空間内で想定するアプリケーションでの利用に十分な精度でグルーピングを行う事ができた.さらに,本実験環境以外において会話コンテキストの抽出を行うためには,システムの利用可能環境の拡大と精度向上は不可欠である.今後の改良案としては音声情報と共に複数のセンサ情報を利用した精度補完,ソーシャルネットワークサービスから得られる友人関係情報といった定性的な情報に基づくグルーピング処理の柔軟性向上といった改良索が挙げられる.

本年度の成果

修士論文

対外論文

講演