研究成果報告書

透過三原色を用いた知育玩具のデザインとその効果の検証

政策・メディア研究科修士課程2年[XD] 讃井悠子



1.研究概要
 子供は遊びを通して成長する。遊びの中でさまざまなことを自ら発見し、体感することで世界に対する認識を広げていく。現代の子供は画面上で色を見る機会が増え、現象としての色のしくみに触れる機会が少なくなったのではないだろうか。子供たちが色という概念と出会い、その認識を深めていくためには、実際に自分の手を動かして体験することが重要であると考える。
 本研究では、自分の手を動かすことで楽しみながら色のしくみを発見できる遊び道具 “colormy” を製作した。透過三原色を用いたこの遊び道具で色を重ねて絵や模様を描き出すことを通して、色に対する認識を深め、描画での色彩表現も楽しむことができるようになることを目指す。

2.colormy
colormy
 本研究では、子供が自分の手を動かして遊ぶ中で色という概念と出会い、その認識を深めていくことを目的として、透過三原色を用いた遊び道具colormyを製作した。 colormyは、色の三原色として知られている、C=シアン、M=マゼンダ、Y=イエローの三色からなるブロックで、これらを積み重ねることで様々な色を作り、絵や模様を描き出すものである。こうした遊び方を通して子供が体験の中から色のしくみを発見し、色に対する認識を深めることができる。また、自分の好きな「色」を考えながら「形」を作るとい2つの動作を同時に行うことで豊かな創造力を育むことを目指している。

3.研究経過
◇ガイド製作
 子供がよりcolormyで色と触れ合いさらに表現しやすくなるようインスピレーションを与えるものとして “ガイド” を製作した。
 ・サンプル作品集
 ・ガイドライン
 ・下絵シート


◇第一回田貫湖ふれあい自然塾ワークショップ
 ガイドの効果を確かめるために次のようなプログラムでワークショップを行った。
tanukiws1.jpg
 1.ウォーミングアップ「葉っぱをつけよう」
 2.自由制作
 3.サンプル作品紹介
 4.自由制作





  ウォーミングアップの「葉っぱをつけよう」では、colormyのピースに慣れてもらうため、木の幹と枝の下絵を与え、そこにcolormyで葉をつけてもらうということをした。ガイドラインで形を指定してしまうより自由度があり、子供たちがのびのびと色づくりを楽しんでいる様子が観察できた。サンプル作品を見ることでイメージが沸きやすくなったのか、作品作りに勢いがつき、作る作品も抽象的な作品から具体的な作品へと変化した。


◇第二回田貫湖ふれあい自然塾ワークショップ
 今回のワークショップでは新しく製作した下絵シートの効果を検証するために、次のようなプログラムで行った。また、サンプル作品の効果を確認するために今回は敢えてサンプル作品集は見せないで自由制作を行った。
tanukiws2.jpg
 1.ウォーミングアップ「クリスマスツリーを作ろう」
 2.下絵シートを使った制作
 3.自由制作






 下絵シートを使うことで、子供たちに色で遊ぶことへ上手く導くことできたと考えられる。また、今回サンプル作品を見せなかったことで、自由制作になると何を作ればいいのか分からないと苦戦している子供が多く見られた。 前回、第一回田貫湖ふれあい自然塾ワークショップではサンプル作品があることが子供たちの発想の手助けとなっていたことが確認でき、これによってサンプル作品の有効性が認められた。
 

◇モニター調査
 9歳と5歳の姉妹、5歳と2歳の兄妹、4人の子供に2週間colormyを貸し出し、それぞれの母親の協力の下、遊びの様子を観察した。展示やワークショップなどで一度きりの限られた時間遊んでもらうのとは違い、継続して遊んでもらうことで遊びの変化を見ることができた。monitor








4.今後の課題と展望
 本研究では、子供たちに実際に遊んでもらいその都度フィードバックを得ることでcolormyのピースとガイドの改良を進めてきた。その結果、十分に子供たちが色と触れ合い認識を深められるような遊び道具になってきたと考られる。より多くの子供たちにcolormyで遊ぶことで色の豊かさや不思議さ、色作りの楽しさを知ってもらうため、今後は商品化を目指していきたいと考える。そのために大量生産に適した製造方法の検討、プレイボードとパッケージ製作、ロゴ製作を行っていく。