2011年度 成果報告

【人道支援における仮設建築のシステム構築とその可能性に関する研究】

 

慶応義塾大学大学院 政策・メディア研究科 修士1年

土井亘

 

T.研究概要

 本研究は、災害後や難民、飢饉等の支援を必要としている地域・人々に対して、仮設建築物を用いて援助をすることの可能性を考察するものである。また、既存の支援としての仮設建築物を調査・分類し、その結果をもとに、パターンを導き出し参照可能なシステムを構築するものである。そして、これらの結果から新たに改善策として提案を行うまでを見据えたものである。

 仮設建築物とは、日本の建築基準法85条で定義されているような限定的なものとはせずに、本研究では[簡易な構法を用いて構成される建築物で、組立・管理・解体までを容易に行えるもの]と広義に捉えたものとする。

また、人道支援とは[戦争・紛争や、地震・干ばつなどの自然災害、その他さまざまな要因による難民・国内避難民・被災者を対象とする救援活動であり、予防・復興までをも含めた支援活動]とし、雨・風を防ぐためだけの建築を目指すのではなく、その他の活動との相乗効果までを考慮する。

 

U.本年度の成果

2011311 日に発生した東日本大震災。この惨事における仮設建築物の現況を調査するべく、3つの具体例をフィールドワークとして取り組んだ。

以下がその成果である。

 

@.PPS4(紙管間仕切りシステム)によるプライバシー確保

仮設住宅へ移ることができるまで、被災者の方々は体育館などの大きな空間の中で家族ごとに数ヶ月間、プライバシーのない生活を余儀なくされる。そのため全くプライバシーのない状態の中、人々は徐々に精神的にダメージを受け始め、肉体的な問題も併発する恐れがある。そこで、ボランタリー・アーキテクツ・ネットワークにおいて、紙管と布という簡単に手に入る材料で、プライバシーの確保を行った。

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A.仮設住宅内の収納不足解消の為の棚制作

ボランタリー・アーキテクツ・ネットワークにおいて仮設住宅の収納不足を補うために、仮設住宅の各戸に壁付き、床置きの収納棚を設置した。棚の製作と取り付けは全国から集まった約200人のボランティア達によって行った。

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B.南三陸町での集会所の設計・施工

素人施工でも簡易性を担保するため、通常手に入る合板をカットし、それらを組み合わせることにより出来上がる集会所を設計し、また施工を行っている(現在進行中)

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