「自分づくり」の場のデザインに関する研究

〜身体的メタ認知による「自分らしく生きる」を支援するダンスカリキュラムの開発〜




政策・メディア研究科 修士2年

社会イノベーターコース

川ア聡美



 身体的メタ認知による「自分らしく生きる」を支援するダンスカリキュラムの開発を行った結果、本研究で得られた知見は7点である。 

・ダンススキル向上のための練習により、自分らしさが開拓されること 

・ダンスの4大基礎とその関係性 

・ダンスと自分らしさの関係性 

・ダンスと日常における言語の類似性 

・身体性のモデル(身体性にもとづく暗黙知と形式知の関係図) 

・ダンス経験の有無に関係なく、ダンスカリキュラム「ひとつなぎの舞法」の受講により、自分らしさ 

 の開拓が可能であること 

・ダンスカリキュラム開発において身体的メタ認知が効果的であるという点 

以上の知見が得られた。 


 近年、ダンス教育への期待が高まっている。2008年に公示された学習指導要領の改訂により、中学校のダンスが必修化されたことからも、その期待が伺える。しかし、その指導法や具体的な効果については、まだ研究が始まったばかりであり、十分な知見が得られていない。 

 加えて、筆者の20年に渡るダンス経験から、ダンススキル向上により、日常生活を豊かにすることが暗黙的に感じられていた。この暗黙知を探求することにより、今後のダンス教育への足がかりにできるのではないかと考えたことが、本研究の始まりである。 

 本研究の目的は、身体的メタ認知による「自分らしく生きる」を支援するダンスカリキュラムの開発を行うことである。そのための手法として、本研究は「身体的メタ認知」を用い構成論的なアプローチを試みた。身体的メタ認知とは、身体と環境との間で生起する現象を外的表象化することにより、 

身体と環境とのインタラクションを進化させる行為である。本研究においては、記述による外的表象化を行い、カリキュラムの開発に活かした。開発したカリキュラムは、計12回実施し、のべ56名に受講頂き、改良を重ねた。 

 一方で本研究は、 

・全カリキュラムを定期的に受講した結果がない点 

・参加者のバイアス 

・筆者の変数の限界 

・継続的なモニタリングの仕組み 

という、以上4点の限界を含んでおり、今後の継続的な研究が必要である。これらの課題と向き合うことで、ダンス教育だけではなく、キャリア支援など社会的な課題への応用が期待できる。