慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科
2011年度 森基金研究成果報告書
政策・メディア研究科 修士課程1年
氏名 : 清水将矢 / 学籍番号 : 81124773
/ ログイン名 : mshimizu
研究課題名:
「BIM環境解析とサステナブル建築デザイン手法の研究」
研究課題:
3.11東日本大震災において、人々のエネルギーに対する無関心さの露呈と同時に、持続可能なエネルギーの重要性が再認識された。
今後の建築デザインにおいても、環境性、経済性、安全性、社会性などのあらゆるファクターにおいて解析を行い、地球環境の持続に寄与する建築設計は不可欠である。
BIM(Building Information
Modeling)を使用した3次元モデルでの環境性能シミュレーションでは、これまで困難だった環境解析をスピーディーに低コストで実現することができる。
これにより、その結果を設計提案へ繰り返しフィードバックすることができ、エネルギー使用最小限化などのサステナブルデザインが可能となる。
本研究では、BIM環境解析によって可能となり得るサスナブルデザインの新しい可能性を、具体的なケーススタディーを通して証明する。
研究手法
3-1.分析と調査
本研究を進めるにあたり、BIMを用い設計された事例、もしくは改修事例を挙げる。
環境条件を積極的に利用している事例の効果を確認し、問題点・改善点に注視し、BIMの利用によって改善・修正ができることを示す。
次に、ケーススタディーを行う敷地の調査を行う。文献やインターネットで、土地や歴史、自然環境など多くの情報を入手すると同時に、
地図データを基にBIMによる敷地の3次元モデリングも行う。まずは、簡単なマスモデルを作成し、大まかな空間構成を把握する。
現地調査が必要な箇所は、後に実測を行うことで情報を補っていく。
また、それらのデータをGoogle Earthを使って周辺環境と合成をすることで、建物のボリューム感や景観との調和なども容易にイメージをすることができる。
AutodeskのBIM専用ソフトウェアAutodesk Revit ArchitectureでBIMを導入することにより、分析やリサーチを可視化して検証することができる。
また、Rhinocerosで制作した3次元モデルを.stlデータで書き出すことで、FlowDesignerの解析ソフトに移行することができる。
環境解析ソフトAutodesk Ecotect AnalysisとFlowDesignerの両方を使い分けながら、日陰、風、日射量、温熱環境の解析を行う。
初期段階から環境解析を行うことで、その土地や建築の環境面での問題点が早くから明らかになり、その結果をフィードバックすることで、
結果的に質の高いサステナブルデザインにつながる。
3-2.設計と提案
3次元モデルによる、大まかな空間構成が明らかになった後、BIMを継続して使用し設計を行う。
環境シミュレーションによって明らかになった問題点等を考慮しながら、アイデアを具体化していく。
その際、BIMの3次元モデルを利用する事で、様々な解析やウォークスルーなどのシミュレーション、デザイン等を可視化することができるため、
建築の専門でない人や他分野の専門家、学生等ともイメージの共有がしやすく、容易にコミュニケーションを取りながら、案をブラッシュアップすることが出来る。
他研究室メンバーとも情報共有し、意見を積極的に取り入れていく。また、BIMを学ぶ学生同士でも、同じファイルを共有することで、
共同で設計を進めることも可能であり、効率化が図れる。この作業を繰り返すことで、効率よく質の高いサステナブル設計が可能となる。
様々な種類と量の、見えない環境要因をシミュレーションによって可視化し、繰り返し設計提案にフィードバックすることで、
今まで勘や経験に頼っていた部分が、根拠に裏付けされた設計に変わる。
資源の消費を抑えながらも、デザインにおける新しい発見や広がり、また社会に対して新たな価値をも見いだせることが期待される。
3-3.BIMツール
本研究を実践する際、以下のBIMツールを扱っている。
・Flow
Designer (アドバンスドナレッジ研究所)
・Ecotect Analysis 2011 (Autodesk社)
・Revit
Architecture 2011 (Autodesk社)
・Rhinoceros
(Robert McNeel & Associates)
・Grasshopper
(Robert McNeel & Associates)
Flow Designerでは、流体・温熱・環境の3次元シミュレーションを行っている。
Autodesk Ecotect Analysisでは、3次元CAD単体では評価する事の出来ない、環境解析・評価を行い、日射量等のパラメーターを抽出することが可能である。
Grasshopperは、Rhinocerosにプラグインして起動するサーフェイスモデリングソフトである。
Autodesk Ecotect Analysisで抽出したパラメーターをRhinoceros上のモデルに反映が可能である。
研究成果:
現在、Rhinocerosで製作した名建築を単純化した形態を使って、FlowDesignerにて風、温熱の解析を行っている。
解析結果の分析を通して、風の基本的な原理を理解すると同時に、実際の建築の形態が及ぼす環境への影響を分析している。
単純なボックスから窓の位置や大きさなどのパラメーターを変化させながら、風や温熱環境の変化を確認する作業を通して、
データサンプルの蓄積を行っている。
来年度の課題:
解析結果をどう分析し、どのように設計へフィードバックするかを考察する。
最終的には、解析結果を分析、設計へフィードバック、改善する流れを作品提案によって提示する。