森基金成果報告書



研究テーマ「新聞販売店網を活用した地域プラットフォームの可能性」


研究代表者氏名 青山一郎
所属・学年 政策・メディア研究科・ 修士課程 2年



 本研究の目的は、新聞販売店のインフラを活用して、都市型地域プラットフォームの創造の可能性を探る事である。計画段階では以下の3つのフェーズに分けて進める事を考えていた。

@新聞販売業界が都市型地域プラットフォームになりうるかについて制約条件の調査を行う。
A本研究のモデルとなりうる地方都市における地域の取り組みを検証する。
B「新聞を読む会」参加者へのインタビューを行うことによって可能性を探る。⇒実際には遠方避難者へのアンケートに変更
以下、それぞれのフェーズについて報告する。


@新聞販売業界が都市型地域プラットフォームになりうるかについて制約条件の調査
新聞発行本社と、新聞販売店の取引の歴史を以下の文献から考察を行った。
・新聞販売100年史
・東奥日報
・山梨県

また、日本ABC協会が保有するABC報告部数をもとに現在の新聞販売店の競争状態を、ハーフィンダール・ハーシュマン・インデックスで比較分析を行った。
以上から、新聞販売店が地域プラットフォームとなりうるかの制約条件について、下記の通り仮説を構築した。
仮説:新聞販売店は、競争条件によって異なる読者開拓手法を取るのではないか。


A地方都市における地域の取り組み
以下の地域でフィールドワークを行った。
・佐賀県唐津市
・長野県辰野市
・静岡県浜松市
・山梨県南アルプス市
上記のフィールドワークの結果、以下の知見を得た。
新聞読者は新聞代金の対価に、提供される「新聞紙」のみに期待をするのではなく、新聞発行本社や新聞販売店が行う地域貢献事業やイベントなどにも期待をしている。


B遠方避難者へのアンケート
東日本大震災後に、関東地区などに避難して来て尚且つ出身地の新聞を郵送で購読している遠方避難者に対して、地域新聞からどの様な情報を得ているかを調査した。その結果、非常時ではあるが地域情報を紙から得ている事に以下の目的がある事が明らかになった。
すなわち、インターネットやテレビなどの映像情報は常に流動しており、紙のように〆切時間に確定した情報を得る事によって、離れていても被災地との共感が生まれる事である。


結論
上記の考察から、
・一定の競争条件によっては、新聞を販売する為のツールとして地域貢献事業を行う事が有効である。
地域貢献事業を告知する手段としてミニコミ紙を活用する事が効率的である。
という知見を得た。

今後は、各種の変数を制御し、より強い理論にして行きたい。