2011年度森泰吉郎記念研究振興基金
「研究育成費」成果報告書

政策・メディア研究科2年
本釜雅和

■研究課題名
「キャリア・コンサルタントの運用モデルの構築」


■研究計画
○問題意識・リサーチクエッション
バブル崩壊後、物・サービスの価格が下がり91−09年度の経済成長率平均は、0.8%と低迷している。中には、業績悪化の影響を受け、リストラや新卒採用を減らす組織もある。しかし、人員が減っても仕事は減らず、個々人の負担は増えメンタルヘルスを発症する人も出ている。又、組織は、創発期→推進期→拡大期→創造的破壊→再創造を繰り返し成長する。1980年代までは、前記のサイクルが現在に比べると遅く、プレーヤーが管理職に判断を仰ぎ、管理職が決断、指示を下して、行動を起こしても時間的余裕があった。しかし、世界がグローバル化し、個々人のライフスタイルが変化している現代、個々人が求める商品・サービスなどは多様化しており、短期間で様々な事について意思決定する必要があり、柔軟に対応する事が求められている。そして、自分一人で解決できない場合は、利害関係者と調整を行いスムーズに働くよう努力する事が求められている。
米国においては、前記のプレッシャーに強く、自律した人間を育成すべくキャリア・カウンセリングの考え方が組織に適用されているが、日本においては、このキャリア自律を推進するアプローチはマイノリティの域を出ず、人事、人材開発の本流からは必ずしも認められていないのが現実であろう。しかし、花田ら(一橋ビジネスレビュー)や渡辺はキャリア自律とその支援の重要性を唱え、具体的な企業における支援のメカニズムなどを提唱し、厚生労働省もキャリア・コンサルタントの国家資格に向けた動きが具現化し、平成14年度から4年間で5万人の養成計画の目標を掲げ努力した。
しかしながら、スキルを身につけさせても、戦略、風土の違う組織に適応できていないケースや、運用面で問題が発生しており、適応させる手法や基準が確立されていないのが現状である。そこで、ボトルネックの抽出、運用モデルの構築に向け、各社にアンケート、キャリア支援の事例のインタビュー調査を行い、必要な要素を抽出、メカニズムを明らかにして、他組織でも実現できるような妥当性のある一般化可能性の高い具体的方策を探求する。

○研究の意義・特徴
キャリア・コンサルタントを組織が取り入れることにより、組織員は、自律・成長し、個々人の力がひいては組織の力になり、組織が成長をする為に大切であると国内外の学者や組織の人事担当者らが提言されている。そして、時代の流れに乗って、キャリア・コンサルタント資格保持者を導入しても、組織風土、人事部の組織・社員に対する影響力の強さなどによって来談者が現れないケースもあり、どの様な状況・組織において機能するのかを調査したい。
上手く導入する事が出来なければ、日本企業が米国発の成果主義を導入した時と同様、制度だけが形骸化し崩壊することも考えられる。年功序列主義から成果主義に移行する際、導入するにあたり考えられる障害を一つ一つ潰さずにモデルケースを導入したがゆえに失敗した企業も多数存在する。その後、一部組織では、日本は年功序列に戻るべきだとの議論もでているのが現状である。しかし、組織が年功序列主義に戻ってしまうと、成長に膨大な時間がかかってしまう。又、日本のある大手製薬会社の米国法人が成果主義を上手く取り入れ、社員も自律しているがゆえに、世界での売上げ比率も高く貢献しており、日本本社が何も口出しできないケースもある。そうならない為にも、日本の組織は、キャリア・コンサルタントを上手く活用し、組織員全員を自律するよう育成を行う必要があると思う。
 将来的には、次の時代に向けて行動している世界のリーディングカンパニーに引けをとらない強固な成長する組織のフレームワークの開発を行い、自律した人材を採用・繋ぎ止めるための新しい人事制度・施策の構築を提案したい。


■研究報告
先ず始めに、上記研究を行うにあたり研究育成費のご支援を頂きました森泰吉郎記念研究振興基金に心から感謝申し上げます。
研究育成費は、上記テーマを研究するにあたり大変有意義に使わせて頂きました。
当初は、研究費全額をアンケート調査・インタビューを行う際の通信費・交通費を想定していましたが、プレ調査の結果、事象ごとに問題・解決策が異なる点等の複雑性、単純化が困難であることに気づき、研究を進めるにあたり、私の更なる研究テーマの抽象化、思考の幅の拡大をめざし、文献の購入やシンポジウムへの参加費に充当させて頂きました。よって、上記研究につきまして、1年間で結論を出す事ができなかったのが実情でございます。
残り、1セメスターを使い、上記の中の一つの領域に関して、何かしらの調査・検証を行い研究育成費を無駄にさせぬよう、全力を尽くして参りたいと思います。
よって、今後も継続して研究を行い、成果物は修士論文に執筆させて頂きます。

以上