2011年度森泰吉郎記念研究振興基金 研究成果報告書
研究課題名「都市・建築分野における記号消費に関する研究」
所属:政策・メディア研究科 修士課程1年 学籍番号:81124394
氏名:尾崎 渉 Email:m510023@sfc.keio.ac.jp

本年度の成果報告を行う。研究を進めるにつれ、当初予定していた研究課題を改善する必要性があることが判明した。本年度はこの主題の改善に多くの時間を費やしたため、まず主題がどのように変わったかを述べ、その後新しく設定した目的と研究内容に言及していく。

1.主題の再検討

当初は都市・建築分野を記号消費という社会学的観点から捉えることで新しい秩序を生み出すことができると仮説を立てたのだが、研究を進めるにつれて「消費者が都市・建築をどのように記号消費しているのか」を分析するだけでは秩序を生み出す仕組みの提案まで至らないという結論を得た。そこで研究内容を変更し、「交換可能な記号消費」という点に着目し、消費者に疑似的な「家づくり」を行ってもらうことで、記号消費の実態を明らかにすると同時に「記号の交換」による新しい秩序の形成を目指す。

2.目的

以上の再検討を踏まえ、本研究は記号消費を活用した都市デザイン手法に関する研究を行う。消費者によって建築物に付加された二次的な情報とその消費=「記号消費」が、都市・建築分野に新しい秩序を形成し得るのではないかと考え、その実態の把握と活用を目指す。まず住宅を主題にし、消費者による都市・建築の記号消費の実態を明らかにする。つぎに、記号消費を活用した都市デザイン手法を実験的調査を通して提案する。

3.活動内容

当初の予定では本年度中に調査を実施するはずであったが、主題の再検討を行ったため来年度へ繰り越すこととなった。本格的な調査分析は来年度実施するため、本年度は調査方法と実験対象の選定が主となった。
①文献調査
都市・建築分野と社会学分野を横断した研究を進めるに当たり、ボードリヤール著「消費社会の神話と構造」を読み解いた。また研究の進展に伴い、都市・建築を消費者がどのように記号的に認識しているかという重要性と同様に、その記号的認識が消費者同士の関係性によってどのように変容するのかが重要であることが明らかになった。
②清泉女子大学「都市論」の授業補佐
清泉女子大学「都市論」の授業補佐を行った。主な実験対象がこの「都市論」を受講する学生となるため、現在授業で実施している課題『りそうのいえ』という、学生に理想の家を描いてもらう課題を分析した。また実際に授業を補佐することで、事前調査として一般の消費者がどのように都市・建築を認識しているのかを実際にヒアリングすることができた。今後は調査項目を選定したのち、本調査を実施していく。